空飛ぶ自由人・2

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日本映画興行ランキング・その1

2023年08月07日 23時00分00秒 | 様々な話題

その昔、映画が「娯楽の王様」と言われた時代があった。
私は、まさにその時代に生きた人間で、
休みの過ごし方は、映画館に行くのが当たり前だった。

昭和35年(1960年)頃、
私は渋谷から少し離れた住宅街に住んでいたが、
夕食後、家族揃ってバスで渋谷に出て、映画を観た記憶がある。
まだ家にテレビがない時代だったのだ。

映画人口(年間総入場者数)がピークに達したのは昭和33年(1958年)で、
日本全国に7067の映画館があり、
年間11億2745万人が映画館へ行った。
当時の人口は9177万人だから、
単純計算でひとり1年に12回映画館へ行っていたことになる。
つまり、全ての日本人が毎月1回、映画を観に行っていたのだ。

当時、日本映画は系列館方式で、
全国主要都市に東宝、松竹、東映、日活、大映の系列の映画館があった。
番組は毎週代わり、2本立てが当たり前。
つまり、映画会社は年間100本の映画を映画館に供給していたことになる。
今のように、1本立てで、何カ月も同じ映画を上映したりはしなかったのだ。

全席指定席などではないから、
映画館は入れるだけ入れた。
満員でドアが閉まらなかったというのは本当で、
その状態も目撃した。

洋画は特定の映画館でロードショーされ、
その後、2本立ての洋画チェーンで上映され、
2番館、3番館、そして名画座へと流れていく。

1960年代に入ると映画人口は激減していく。
最大の要因はテレビである。
昭和34(1959年)の皇太子ご成婚から
昭和39(1964年)の東京オリンピックまでの5年間に、
すさまじい勢いでテレビが普及した。
それに反比例して映画館へ行く人の数は激減し、
昭和39年には4億3145万人と、
ピークの昭和33年の約3分の1になってしまった。
たった5年で3分の2の顧客を失ったのである。

昭和46年(1971年)には、
映画館は2974館、映画人口は2億1675万人にまで減少。
ピーク時対して19.2パーセントに落ち込んでいた。
13年間で8割の顧客を失ったのだ。

その後、日本映画の系列館方式は瓦解し、
大作はものすごい数の映画館で占有されるようになった。
シネマコンプレックスが広がり、
単館の映画館は少なくなり、
映画館数ではなく、スクリーン数で数えるようになった。
2022年の映画館スクリーン数は3634スクリーンだ。

そして、映画は配信で観られるようになった。
というか、映画館を飛び越えて、
最初から配信で公開されるようになったのだ。
誰が想像しただろう、
家のテレビで新作映画が観られる時代が来ることなど。

2022年昨年1年間の全国の映画館入場者数の合計は1億5252万5千人。
しかし、興行収入は2131億1100万円。
入場料が比較にならないほど上がったためだ。
「タワーリング・インフェルノ」が公開された昭和50年(1975年)に
1000円を突破した入場料は、
徐々に上がり続け、
ついに今年は2000円となった。
久しぶりに映画を観た人が、つまらない映画だったら、
2度と観にいかなくなる水準だ。
平均客単価は今、1402円だという。

一方配信は、月額1000円以下で、
いくらでも映画が観られる。
新作が配信にまわる期間も短くなった。
交通費もかからない。

私のように、年間100本以上映画館で観る人は、
希少な存在かもしれない。

前書きが長くなったが、
その映画の黄金時代の
日本映画の配給収入のデータを紹介する。
入場料が今と比べて比較にならないくらい安いので、
総配給収入の少なさに驚く方もいるだろう。
また、オールド読者には、なつかしい映画の題名に
頬が緩むかもしれない。

1950年(昭和25年)

1位  宗方姉妹(新東宝)・・ 0.8 億円
2位  自由学校(大映)・・・ 0.8 億円
3位  佐々木小次郎(東宝)・ 0.7 億円
4位  続・佐々木小次郎(東宝)0.6 億円
5位  帰郷(松竹)・・・・・ 0.6 億円
6位  紅蝙蝠(大映)・・・・    0.5 億円
7位  月の渡り鳥(大映)・・    0.5 億円
8位  自由学校(松竹)・・・・ 0.5 億円
9位  銭形平次(大映)・・・・ 0.5 億円
10位  おぼろ駕篭(松竹)・・・ 0.5 億円

1951年(昭和26年)

1位  源氏物語(大映)・・1.4 億円
2位  大江戸五人男(松竹)1.2 億円
3位  馬喰一代(大映)・・0.9 億円
4位  陽気な渡り鳥(松竹)0.8 億円
5位  銭形平次・恋文道中(大映) 0.7億円
6位  麦秋(松竹)・・・・ 0.7 億円
7位  呼子星(大映)・・・ 0.7 億円
8位  続佐々木小次郎(東宝)0.7 億円
9位  完結 佐々木小次郎(東宝) 0.7億円
10位  本日休診(松竹)・・・・・ 0.6 億円

1952年(昭和27年)

1位  ひめゆりの塔(東映)・・  1.7 億円
2位  お茶漬の味(松竹)・・・  1.0 億円
3位  ひばり姫初夢道中(松竹)・1.0 億円
4位  夏子の冒険(松竹)・・・ 1.0 億円
5位  (松竹)・・・・・・・ 1.0 億円
6位  学生社長(松竹)・・・・ 0.9 億円
7位  銭形平次捕物控 からくり屋敷(大映)0.9 億円
8位  ハワイの夜(新東宝)・  0.8 億円
9位  現代人(松竹)・・・・・0.8 億円
10位  千羽鶴(大映)・・・・・0.7 億円

1953年(昭和28年)

1位  君の名は・第二部(松竹)3.0 億円
2位  君の名は・第一部(松竹)2.5 億円
3位  太平洋の鷲(東宝)・・・1.6 億円
4位  地獄門(大映)・・・・・1.5 億円
5位  金色夜叉(大映)・・・・1.4 億円
6位  花の生涯(松竹)・・・・1.3 億円
7位  戦艦大和(新東宝)・・・1.3 億円
8位  東京物語(松竹)・・・・1.3 億円
9位  叛乱(新東宝)・・・・・1.2 億円
10位  家族会議(松竹)・・・・1.2 億円

1954年(昭和29年)

1位  君の名は・第三部(松竹)・・・・3.3 億円
2位  忠臣蔵 花の巻・雪の巻(松竹)・2.9 億円
3位  七人の侍(東宝)・・・・・・・・2.6 億円
4位  新諸国物語 紅孔雀(東映)・・・2.4 億円
5位  二十四の瞳(松竹)・・・・・・・2.3 億円
6位  月よりの使者(大映)・・・・・・1.6 億円
7位  宮本武蔵(東宝)・・・・・・・・1.6 億円
8位  ゴジラ(東宝)・・・・・・・・・1.5 億円
9位  ハワイ珍道中(新東宝)・・・・・1.5 億円
10位  哀愁日記(松竹)・・・・・・・・1.4 億円

1955年(昭和30年)

1位  赤穂浪士 天の巻・地の巻(東映)  3.1 億円
2位  修禅寺物語(松竹)・・・・・・・  1.8 億円
3位  ひばりチエミいづみのジャンケン娘(東宝)1.7 億円
4位  新・平家物語(大映)・・・・・・・1.7 億円
5位  亡命記(松竹)・・・・・・・・・・1.7 億円
6位  続・宮本武蔵 一乗寺の決闘(東宝)1.6 億円
7位  楊貴妃(大映)・・・・・・・・・・1.5 億円
8位  宮本武蔵 決闘巌流島(東宝)・・・1.5 億円
9位  力道山物語 怒涛の男(日活)・・・1.5 億円
10位  夫婦善哉(東宝)・・・・・・・・・1.4 億円

1956年(昭和31年)

1位  任侠清水港(東映)・・・・・・・・3.5 億円
2位  蜘蛛巣城(東宝)・・・・・・・・・1.9 億円
3位  恐怖の空中殺人(東映)・・・・・・1.9 億円
4位  曽我兄弟 富士の夜襲(東映)・・・1.9 億円
5位  旗本退屈男 謎の幽霊船(東映)・・1.8 億円
6位  銭形平次捕物控 まだら蛇(大映)・1.8 億円
7位  太陽の季節(日活)・・・・・・・・1.8 億円
8位  月形半平太(大映)・・・・・・・・1.8 億円
9位  (東映)・・・・・・・・・・・・1.7 億円
10位  歌う弥次喜多 黄金道中(松竹)・・1.7 億円

1957年(昭和32年)

1位  明治天皇と日露大戦争(新東宝)・  5.4 億円
2位  喜びも悲しみも幾歳月(松竹)・・  3.9 億円
3位  水戸黄門(東映)・・・・・・・・  3.5 億円
4位  嵐を呼ぶ男(日活)・・・・・・・  3.4 億円
5位  任侠東海道(東映)・・・・・・・  3.4 億円
6位  大忠臣蔵(松竹)・・・・・・・・  2.6 億円
7位  錆びたナイフ(日活)・・・・・・  2.4 億円
8位  夜の牙(日活)・・・・・・・・・  2.3 億円
9位  挽歌(松竹)・・・・・・・・・・  2.3 億円
10位  大当り三色娘(東宝)・・・・・・  2.2 億円

1958年(昭和33年)

1位  忠臣蔵(大映)・・・・・・・・・    4.1 億円
2位  陽のあたる坂道(日活)・・・・・    4.0 億円
3位  紅の翼(日活)・・・・・・・・・    3.6 億円
4位  忠臣蔵 櫻花の巻・ 菊花の巻(東映) 3.6 億円
5位  隠し砦の三悪人(東宝)・・・・・ 3.4 億円
6位  明日は明日の風が吹く(日活)・・    3.2 億円
7位  風速40米(日活)・・・・・・・ 3.1 億円
8位  日蓮と蒙古大襲来(大映)・・・・    3.0 億円
9位  人間の条件 第1・2部(松竹)・・3.0 億円
10位  彼岸花(松竹)・・・・・・・・・・2.9 億円

1959年(昭和34年)

1位  任侠中仙道(東映)・・・・・・・ 3.5 億円
2位  日本誕生(東宝)・・・・・・・・ 3.4 億円
3位  血斗水滸伝 怒涛の対決(東映)・ 3.1 億円
4位  世界を賭ける恋(日活)・・・・・ 2.7 億円
5位  男が命を賭ける時(日活)・・・・ 2.6 億円
6位  鉄火場の風(日活)・・・・・・・ 2.4 億円
7位  人間の条件 第3・4部(松竹)・ 2.3 億円
8位  水戸黄門 天下の副将軍(東映)・ 2.2 億円
9位  男なら夢を見ろ(日活)・・・・・ 2.0 億円
10位  天と地を駈ける男(日活)・・・・ 1.9 億円
[裕次郎映画が5本ランクイン。]

1960年(昭和35年)

1位  天下を取る(日活)・・・・・ 3.2 億円
2位  波濤を越える渡り鳥(日活)・ 3.0 億円
3位  闘牛に賭ける男(日活)・・・ 2.9 億円
4位  喧嘩太郎(日活)・・・・・・ 2.7 億円
5位  娘・妻・母(東宝)・・・・・ 2.7 億円
6位  あじさいの歌(日活)・・・・ 2.7 億円
7位  水戸黄門(東映)・・・・・・ 2.6 億円
8位  名もなく貧しく美しく(東宝)・2.5 億円
9位  ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐(東宝)  2.5 億円
10位  新吾二十番勝負(東映)・・・・2.0 億円

続きは、また今度。