なにから
などと言わなくても
なにかは始まっているのですが
あなたは
何処を見ていますか
家の中ですか
あそこの樹ですか
あそこの樹は同じ樹でも
とくべつな処に生えている
樹ですか
そうであればあの樹は
とくべつな樹
ということになるのでしょうか
そのようなことを
はるか以前にも
問うたことがあるように思いませんか
あなたの
白いアタマの中の
白いウサギが問うたのでは
ありませんか
そうしてそんな樹など
どこにもない
どこにも見えない
あるのは一本の水平線
鉛筆書きの水平線
それが空と平原を二つに分けていると
言ったのではありませんか
見えるのは
ただそれだけ
それだけであると
言ったのではありませんか
from Six Poems No.7 2003