『京義線<경의선>』 (2007年)
監督:パク・フンシク
出演:キム・ガンウ、ソン・テヨン
NHKアジアフィルムフェスティバルで見てきた『京義線』。邦題は『キョンイセン』となっていたけれど、これ、ハングル読みなんだか、日本語読みなんだか(笑)。
この作品については、昨年の PIFF で初めて知った。キム・ガンウとソン・テヨンがたまたま海雲台の野外舞台挨拶に出ていたのを見かけ、そのときは作品のことも知らなかったし、何を話していたのかよくわからなかったけれど、その後にチェックしてみてずっと見たいと思っていた作品。あれから1年以上も経つのか・・・
地下鉄の運転士マンス (キム・ガンウ) と大学講師のハンナ(ソン・テヨン) は、それぞれ心に重荷を抱えている。2人とも京義線に乗りあわせ、国境の駅に降り立つことに。
現在と過去を行き来する手法で話が進む。列車という乗り物にはまさしく時間を走っているような錯覚が起きるし、駅の風景はどこかノスタルジックでもあり、いろいろな想いが駆り立てられる。
この作品では前半はややテンポが遅すぎるけれど、後半はぐっと盛り上がっていくので、前半は助走だと思えばそれはそれでいいのかもしれない。
地下鉄のトンネルが延々と続くシーンは、やはりどんと重苦しい感じがしたけれど、却ってキム・ガンウの好青年ぶりや爽やかさが一段と引き立っていた。
地下で働く男と地上で働く女。男は地下鉄の運転手という労働階級で、女は博士号を持ち大学の非常勤講師というインテリ階級という、こんな社会格差もここでは現しているそうだ。
全く接点のない男と女が偶然に京義線で出会うという設定に、南北間で途切れてしまった京義線と重ね合わせて、途切れたものを再びつなぎ合わすという意味合いがこめられているそうだ。この男女が出会うまでと、その偶発的な出会いが丁寧に描かれている。
やはり南北統一の甘いユメが含まれているところは、太陽政策下で作られた作品だなぁという感じがするが、こめられた想いが人間的で気取りがなく、厭味もない。それに比べて、同じく分断された京義線をストーリーに盛り込んだ『韓半島』が、京義線をいかに薄っぺらく扱っているかがよくわかったりする(毒吐)。
当日サプライズで登場したソン・テヨン。細~い。手足が長~い。オフはキャピキャピしたキャラなのに、作品の中ではしっとり感のある女性を演じていたので、このギャップはなかなかステキだと感心した。
『京義線』は確かに地味でしたね。でも、観終わって後味がよかったですよね。
そうそう、あの女の子はどういう存在なのでしょうかね。誰か監督に質問してくれないかしらと思っていたのですが(他力本願)。思い返すと不思議な存在です。
帰り道、あの足の悪い女の子の事など色々考えてしまいました...