『ラブソング』(原題:『甜蜜蜜』)
1996年 香港
監督:ピーター・チャン
出演:マギー・チャン、レオン・ライ、エリック・ツァン
レンタルショップをうろうろしていたら、某 J 氏がメロならこれが好きだとどこかで言っていたのを思い出した。マギー・チャンとレオン・ライという、この美男美女カップルは見るだけでも目の保養になるだろうと思って・・・
驚いたのは、どこかで見たことのあるガイジンさんが・・・。撮影監督で有名なクリストファー・ドイルが俳優として出演。
この作品は、中国大陸から夢を抱いて香港に出てきた広州出身のレイキウ (マギー・チャン) と天津出身のシウクワン (レオン・ライ) が出会い、何度もすれ違いを繰り返す恋の物語。この作品が公開されたのが香港返還直前だったそうで、当時の香港の人々が、本土との統合に不安を抱き、海外へ移住していく姿なども織り込まれている。原題「甜蜜蜜」はテレサ・テンの代表曲名で、2 人ともテレサ・テン好きという設定になっている。
10 年愛などという手法は、それほど珍しくもないメロの王道だけれど、メロなら最後はこうなって欲しいと思う通りのエンディングが待っている。
マクドナルドのアルバイト店員から、やくざの愛人になり女社長にのしあがるかと思いきや、放浪の果ての不法入国者だったり、マギー・チャンの役どころもめまぐるしく変化していく。しかし、やはりマギー・チャンはステキだ。同性から見ても惹かれるものがある。
話している言葉 (広東語 or 北京語) が、とても無愛想なサウンドに聞こえるせいもあるのだけど、ベタな愛のささやきだとか、ここで泣いてくれーというような、涙のおとしどころや、あざとさがない。本来ならベタで落ち着くのに、ドキュメンタリーにもなりそうなぐらい(笑)、作品全体が観客に対して媚を売らないところがいい。
もちろん、切なさや包み込むような力があちらこちらに落ちていて、涙は要求されないのに、情感豊かに描かれている。たとえば、レイキウを愛人にしたやくざのパオ (エリック・ツァン) がレイキウに投げかける言葉が、ぶっきらぼうなのに何とも胸打たれる。
最後の最後で、10 年前にフラッシュバック。冒頭に流れたものと同じ香港の風景を写すモノクロフィルムが流れてくる。そこまで涙いらずだったのに、突然号泣してしまった 号泣の訳はそれを見れば分かるけれど、こ、こんなところに落としどころが転がっていたとは・・・(笑)。