CINE21の記事「韓国映画産業パワー50」(link to)が面白い。
これは、毎年恒例のCINE21による「誰が韓国映画を率いているのか」というアンケート結果に基づく記事で、結果の概要とトレンドはだいたい以下に集約されるようだ。
1. 劇場施設を持ち、豊かな資本を確保している投資・配給会社の興行は堅調。
2. 利益率が落ち込んだ制作会社は、新興の投資会社と提携、市場をにぎわす。
3. 韓流ブームも健在で、俳優も監督も強気。
4. スクリーンクォータ縮小反対運動が、産業界で発言権を持つ。
5. 韓国映画界の視線は海外市場へ向けられている。
韓国映画界に影響力を持つパワー50にランキングされたのは、配給会社・制作会社の代表や監督、俳優。以下、監督/俳優/制作・配給会社別にTOP10をピックアップ。
Director ([] 内は総合順位)
1. [2] カン・ウソク
『韓半島』が7月封切り予定。常に映画界に影響力を持つ監督。
2. [5] パク・チャヌク
「商業的コードを失わない国内唯一のワールドクラス監督」
「彼の存在自体が一つのブランド」
3. [11] イ・ジュニク
2006年上半期は『王の男』で成功。
「韓国ブロックバスターの公式を覆した」
現在アン・ソンギ、パク・チュンフン主演の『ラジオスター』を撮影中。
4. [13] カン・ジェギュ
「韓国映画の危機の毎にホームランを放ってくれた人物。
「一度出れば核爆弾級威力であるが、寡作」
SF映画『X-プロジェクト』進行中。
5. [17] ボン・ジュンホ
『化け物』は今年のカンヌ映画祭へ。
6. [25] チャン・ジン
「映画的才能にビジネス感覚まで取り揃えている」
『ウェルカム・トゥ・トーンマッコル』では原作・脚本担当。
7. [26] イム・グォンテク
企画会社の事情で暗礁に乗り上げていた『千年鶴』を製作中。
8. [37] キム・ギドク
「世界に向けた韓国映画に均衡感覚を与える」
『時間』封切り待ち。
9. [38] チョン・ジヨン
スクリンクォータ監視団共同委員長
10. [44] キム・ジウン
「多作ではないが韓国映画のジャンル開拓に一番信頼がおける」
「スタイリッシュな映像美を持つ」
SF長編映画撮影に入る予定。
カン・ウソク監督は、監督業のみならず、自身の制作会社を所有・経営。その後大手制作会社と提携。映画界の一大勢力を握っているらしい。このCINE21の「韓国映画産業を率いるパワー50人」で1997年から2004年まで8年連続で総合第1位だったが、昨年第2位に。
この監督TOP10は、国際的に評価の高い監督が多いのが特徴。そして当面は、やはり監督の国際的な知名度でマーケティングが進められるのだろう。
Actor ([] 内は総合順位: 9人のみ)
1. [12] チャン・ドンゴン
「最もグローバルな俳優」
2. [18] アン・ソンギ
スクリーンクオーター死守映画人対策委共同委員長。
「彼が動けば、他の俳優たちも走る」
3. [19] ぺ・ヨンジュン
「国内エンターテイメント業界市場の規模を塗り替えた俳優」
「俳優としてキャリア管理が一番徹底的で、事業手腕にも優れる」
4. [29] イ・ヨンエ
「女優として最高順位に入ったイ・ヨンエのパワーも韓流に依存」
5. [30] ムン・グニョン
昨年『ダンサーの純情』で国民の妹シンドロームを引き起こした。
今回のアンケートでも「全国民が愛する国民俳優」
6. [31] ファン・ジョンミン
昨年5作品 に出演。興行でも認知度を一気に引き上げた。
7. [33] ソン・ガンホ
「長い間、精力的に活動する俳優」
「演技と興行を論じようとすれば除くことができない俳優」
『化け物』が今後の彼の地位を決める重要な作品になるはず。
8. [40] イ・ビョンホン
「日本・東南アジア市場を拡大するのに重要な俳優」
9. [41] チェ・ミンシク
ギャラが高いと批判したカン・ウソク監督発言に対して謝罪要求。
海外市場を視野に制作する傾向が高いらしいが、少なくとも日本では、ここにあがった俳優の中でかろうじて知名度で売れるのは四天王の3人とイ・ヨンエだけだろう。もちろん、必ずしも、俳優の認知度だけでは、映画は売れない。売れそうなはずのこの4人の映画の興行実績はいまひとつ。中~小粒クラスの良い演技者はゴロゴロいるけど、絶対的に興行を保証する俳優はいないということか。
Producer&Distributor ([] 内は総合順位)
1. [1] チャ・スンジェ / サイダスFNH 代表
2. [3] キム・ウテク / ショーバックス・メガボックス代表
3. [4] キム・ジュソン / CJエンターテイメント代表
4. [6] チョン・フンタク / IHQ 代表
5. [7] シン・チェミョン / MKピクチャーズ映画製作部門総括社長
6. [8] キム・ドンホ / 釜山国際映画祭執行委員長
7. [10] キム・グァンソブ / ロッテシネマ代表
8. [14] イ・ウン / MKピクチャーズ代表
9. [15] イ・スンゼ / LJフィルム代表
プライムエンターテイメントコンテンツ事業総括代表
10. [16] オ・チョンワン / 映画社春代表
そうそうたる面々なのだろうけど、よくわからない。サイダスはマネジメント事業はもちろんのこと、制作事業部門も抱え、それこそ今もっとも力のある勢力なのだろう。さらに、配給会社と劇場所有会社の力関係でたいていの興行成績が決まるようだ。
韓国映画界は、国内マーケットが小さいわりには、勢力構造が複雑で、競争も激しい。しかし、最近は投資も活発で、人材も豊富で層が厚いことがよくわかる。やはり、底力を感じるなぁ。
K-Movieファンとしては、さて、どうやって、海を越えていくのかが楽しみ・・・