報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

東ティモールとはイラクだ

2006年06月09日 17時12分43秒 | ■東ティモール暴動
「大量破壊兵器」が、いまだイラクに存在するかもしれないと考える人がいるだろうか。
おそらくそんな人はいないだろう。
「大量破壊兵器」は流行語のように現れ、そして消えていった。
おそらく何の教訓も残さずに。

南海の島で、いま起こっていることなど世界の人々にとってほとんど興味の対象外だろう。しかし、東ティモールで起こっていることは些細なことではない。東ティモールはミニミニ・イラクなのだ。同じことが過去にも起こっているし、これからも起こる。いま、東ティモールで起こっていることが理解できなければ、今後、世界で発生する事件や出来事も理解することはできないだろう。

事件や出来事を正確に把握するためには、何が必要だろうか。ニュースや情報を仔細漏らさず集めることだろうか。それだけではほとんど無意味だ。情報とは質でも量でもない。たいていの人はそこを勘違いしている。いつも言っているように、メディアが垂れ流す情報はカラクリだらけなのだ。はっきり言えば、イラクやアフガニスタン、そして今回の東ティモールにおいて、本当は何が起こっているかをメディアはちゃんと知っている。知っていてメディアは本質を報じないのだ。したがって、メディアが垂れ流す情報をいくら集めても何も見えてこない。

価値ある情報など、どこにもない。価値は情報そのものにあるのではなく、情報との接し方にあるのだ。メディア情報を鵜呑みにしている限り、まったく何も見えない。まず、あらゆるメディア情報を疑うことだ。

今回の東ティモールで言えば、まずメディア情報を遮断して、”オーストラリアは何をしてきたのか?”を調べ、そして”オーストラリアに何のメリットがあるのか?”を考えてみればいい。

オーストラリアは、インドネシアによる不当な東ティモール武力支配を、24年間公式に支援し続けてきた。そして、インドネシアと一緒に東ティモールの天然資源を奪ってきた。東ティモール「独立」後は、国際法を無視して、資源のほとんどを手に入れようと画策し、かつ資源を盗掘してきた。また、オーストラリアはアメリカによるイラク占領に率先して賛同し、実戦部隊を派遣した。

このようなオーストラリアが、親切心で東ティモールに治安維持部隊を派遣するだろうか?東ティモールの資源を奪い続けているオーストラリアが、今回に限っては東ティモールを助けるのだろうか?普通に考えればいいのだ。答えはNOだ。

では、何のためにオーストラリアは来たのか?もちろん、いままで通り東ティモールの資源を奪うためだ。もはや、オーストラリア軍がいなければ、東ティモールは治安が維持できない。ということは、今後オーストラリア政府に逆らえば、すぐに同じような反乱や暴動が勃発するということだ。すでに現時点で、オーストラリアは東ティモールの資源を押さえたようなものだ。

とても単純だ。特殊な情報などまったく必要ない。しかし、メディア情報を鵜呑みにしている限り、この単純すぎる事実も見えない。

誰もが勘違いしているが、情報の量や質を問うなど、ほとんど意味がないのだ。たいせつなのは、情報との接し方だ。ちょっと疑ってみるだけで、世界はまったく違って見える。無価値だと思っていた情報が意味を持ち、価値があると思っていた情報が意味を失う。

疑問を持つというのは、人間なら誰にでもできる。しかし、単純な行為ほど難しい。「疑問のすすめ」的な書物がたくさん出版されているのはそのためだろう。


イラクには「大量破壊兵器」など存在しなかった。
しかし、われわれの周りには、無数の「大量破壊兵器」が存在する。
メディアの垂れ流す情報だ。



オーストラリア軍
1999年12月 ディリ 東ティモール


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2 コメント

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Unknown (ココなつ)
2006-06-10 03:05:54
信じるコトと、疑うコト。

疑うコト、真実を見極めるためには必要で大事なコト。

どちらも大切なコト。その時々で使い分けるべきコト。

私は正しい情報を見極められるようになりたいです。でも今はすごくすごく未熟で、真実もわからず、ただ疑う癖だけがついてしまいそうな自分がとても怖くなる時があります。

私もいつか二つをちゃんと使い分ける強さを持った人間になりたい。
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ここなつさんへ (中司)
2006-06-10 13:37:03
「疑う」という行為や言葉に、罪悪感、嫌悪感を持つ人はけっこう多いと思います。



でも、ないものを”ある”と主張して、子供の頭の上に平気で爆弾を降り注ぐ人もこの世の中にはいます。そんな時代に、疑うことを躊躇していては、さらに多くの子供の頭の上に爆弾が降り注ぐことになるかもしれません。



大いに、疑うべき時代だと僕は考えています。
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