報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

ティモール海の石油とガスの価値

2006年07月21日 17時39分51秒 | ■東ティモール暴動
まず、おさらいをしておきたい。
東ティモールとオーストラリアの海上境界はどこかという問題だ。

国連海洋法条約(UNCLOS)
第57条  排他的経済水域の幅
 排他的経済水域は、領海の幅を測定するための基線から200海里を超えて拡張してはならない。

第83条  向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における大陸棚の境界画定
 1   向かい合つているか又は隣接している海岸を有する国の間における大陸棚の境界画定は、衡平な解決を達成するために、国際司法裁判所規程第38条に規定する国際法に基づいて合意により行う。

国連海洋法条約は、両国間の距離が400海里以内の場合の明確な境界画定の基準を定めていない。判定は国際司法裁判所に委ねているが、こうした場合、判例は両国間の中間線を境界と示しているようだ。それを恐れてオーストラリア政府は、2002年4月に領海問題に関する国際司法裁判所の管轄権から離脱してしまった。


オーストラリアの共謀について、海洋法の権威ロジャー・クラーク教授はこう書いている。
「それは、泥棒から手に入れた盗品のようなものだ。彼らは歴史的にも、法的にも、道義的にも、東ティモールにその資源を要求する権利はない、それはまぎれもない真実だ」
http://blog.goo.ne.jp/leonlobo/e/380071a383cba22fe0ba2c7dc00b0421


http://www.laohamutuk.org/Bulletin/2003/Aug/bulletinv4n34.html#g-boe

図の青い点線が、両国の中間線であり、本来ここが境界でなければならない。しかし、オーストラリア政府は、赤い実線を主張している。これは1972年にオーストラリアとインドネシアとの間で結ばれた協定だ。それを独立国に対して主張するのは横暴としか言いようがない。中間線から東ティモールの間の資源に対して、オーストラリアは一切の権利を持っていないことは明白である。

ちなみに、図中のLaminaria-Corallina油田はすでにほとんどがオーストラリアによって「盗掘」され、枯渇間近である。約2兆円分が「盗掘」された。

しかし、小国東ティモールは、これまでかなりの譲歩をしている。オーストラリアの援助なしには資源を早期開発できないからだ。しかし、オーストラリアはそれで満足する気はなく、アルカティリ前首相もそれ以上、譲歩する気はなかった。その間に、原油価格が急上昇してきた。

東ティモール独立当時は、原油1バレルが10米ドル前後だった。しかし、いまや70米ドルを越えている。7倍に跳ね上がった。これまでは採算ベースに合わなかった北極圏の油田さえ開発がはじまっている。オーストラリアにとっては、目の前の大陸棚の石油が日増しに価値を増しているのだ。

では、ティモール海にはどれくらいの資源があり、それはどのくらいの価値を持つのか。単純計算してみた。中間線から東ティモールよりにある石油とガス資源の埋蔵総量は33億BOE。BOE(barrels of oil equivalent)は「石油等価物」という意味であり、天然ガスを原油の価値に換算して合算したものだ。

33億バレル×70米ドル=2310億ドル(約26兆8000億円)

本来、これだけの資源がすべて東ティモールのものなのだ。
しかし、現時点ではどうなっているかと言えば、東ティモールの取り分が、約11兆円分(13.46億BOE)。オーストラリアは本来は何の権利もない15兆8000億円分(19.54億BOE)の資源を強引に押さえている。しかも、ティモール海のオーストラリア側の海域には、これら総量の4倍の資源を持っているのだ。

オーストラリアはエネルギー自給率が200%を越えるエネルギー大国だ。
1バレル100米ドルを越える日もそう遠くはなさそうだ。
すでにピークオイルが来たと観察されているいま、それは現実的だ。
石油とガス資源は、いまや放っておいても価値を増している。
そして問題は、いまのうちに誰がいかに多く持つか、だ。


<参考サイト>
The La'o Hamutuk Bulletin Vol. 4, No. 3-4: August 2003
http://www.laohamutuk.org/Bulletin/2003/Aug/bulletinv4n34.html#g-boe
海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/7009/m0008330.htm
【オーストラリア】「エネルギー超大国になる」首相が主張
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060719-00000001-nna-int
手つかず北極圏石油大手が狙う 埋蔵量サウジの4割 原油高騰でコスト吸収
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200607150010a.nwc
原油価格は1バレル100ドル超に上昇へ=米著名投資家
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060706-00000103-reu-bus_all


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