報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

トンネル国家、アメリカ

2006年04月08日 23時35分24秒 | ■時事・評論
ここのところ、さんざんアメリカ、アメリカと書き散らしているが、、「アメリカ」と表記するたびに、一種の居心地悪さを感じる。

「ブッシュ大統領」と表記するときも似たようなものを感じる。というのもブッシュ氏がアメリカをコントロールしているわけではないからだ。あくまで彼は利益代表にすぎない。当然アメリカの最高司令官などでもない。彼は所詮パペットにすぎない。

いまアメリカの政治経済軍事の影響力から自由な国家は存在しない。しかし、そのアメリカという国家も、さまざまな勢力から成立っており、一口に「アメリカ」という言葉では括れない側面がある。

アメリカの政治経済を実際に動かしているのは、複雑に入り組んだ多数の勢力だ。「ネオ・コンサーバティブ:新保守主義」もそのうちのひとつだし、軍需産業や石油業界もそうだろう。そしてウォール街に代表される金融界。それから宗教界も巨大な勢力だ。しかし、こうしたさまざまな勢力の総体や駆け引きだけで、アメリカの政治経済が動いているわけでもない。他にも役者がいる。

「多国籍企業」と「国際金融資本」だ。

この両者は、従属する国家を持たない。書類上はどこかの国家に属しているが、実際には国家から独立した存在だ。多国籍企業は必要なら本社機能を出身国から他国へいつでも移転させるだろう。国際金融資本のほとんどは、タックス・ヘイブン(租税回避地)のバージン諸島やバハマにペーパー本社を置いて、国家の影響力から離脱している。つまり、多国籍企業や国際金融資本は「無国籍」であり、自己の利益だけを追求する存在なのだ。

多国籍企業は世界に6万社以上あるが、上位500社(アメリカ、ヨーロッパ、日本の企業)で世界の貿易の三分の一を占めている。こうした多国籍企業はWTOによりその利益を保証されている。WTO(世界貿易機関)は途上国の関税障壁を取り除き、途上国の産業と市場を多国籍企業に差し出した。WTOの前身であるGATTはアメリカによって設立された。

国際金融資本は、グローバリゼーションというマヤカシを提唱し、世界の金融市場の規制を撤廃させ、まんまと世界の金融市場を手中に収めた。その尖兵となったのがIMFと世界銀行だ。IMFと世界銀行もアメリカによって設立された。国際金融資本には、日本やヨーロッパ、産油国の資本が多数参加している。

世界の多国籍企業や国際金融資本は、アメリカの利益共同体と言って間違いない。つまりアメリカ国内の勢力や産業だけがアメリカを動かしているのではない、ということだ。世界の企業や資本も直接間接にアメリカに影響を与え利用しているのだ。

アメリカというのは巨大なトンネル国家と言えるかもしれない。ドルや軍事力を利用してアメリカが吸い上げた世界の富は、多国籍企業や国際金融資本の懐にも流れているのだ。もちろん、その中には日本の企業や資本が数多く含まれている。

僕が「アメリカ」と表記するとき、一抹の居心地悪さを感じるのはそのためだ。アメリカだけを諸悪の根源のように書くのは決してフェアではない。ただ便宜上どうしてもそう表記することになってしまうのだ。

アメリカというトンネルを利用して多国籍企業や国際金融資本が、世界の富を貪っているということも念頭においていただきたいと思う。