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「事業仕分け」の掛け声のもと、わが国の科学技術予算が大幅に削られようとしています。無残にも、そして、愚かにも。ノーベル賞受賞者をはじめとする学者・研究者たちは大変な危機感をいだき、こぞって反対の意見を表明しています。
不況を反映してか、「無駄な予算を削減する」という掛け声は、その内容をじゅうぶん検討されることもなく、かんたんに人々の支持を集めてしまうようです。
このような大衆の支持に媚びるつもりなのでしょうか。先日、さる大新聞で、予算削減反対を訴える学者・研究者を揶揄する、イヤミたっぷりのコラムが掲載されました。論旨をやや強引に要約すると、次のような内容です。
――ノーベル賞はスゴいとは思うけど、「対称性の破れ」とか言われてもお手上げなんだよね。こちとら科学は大の苦手だし。科学研究に、ほんとにそんなお金が要るのかねぇ?よく分からないことに税金が使われようとしてるんだから、文句をつける権利くらいあるでしょ――
一読し、あまりに不愉快だったので、「よく分からないなら文句のつけようもないだろう。モノを言うなら少しは勉強してからにしろ!」と抗議の手紙を送りました(怒)。
さて、民主党の議員さん、「事業仕分け人」と呼ばれる人たち、そして新聞・マスコミの記者たち。科学技術予算のことを論じるならば、最低限、この本くらい読んでください。「科学が大の苦手」でも大丈夫。自他ともに認める超文系人間の私でも理解できる内容です。
科学技術になんの前提知識も持たず、ただ「予算削減ありき」の現在の議論は、あまりに乱暴です。
民主党議員、曰く「スーパーコンピューターは世界一を目指すなんて言ってますけど、どうしても1位なんですか?2位じゃダメなんですか?」
科学とは、もともと未知の分野を解明しようとする人間の営みです。その営みが「1位」を目指すものであることは、論理的に必然でしょう。だって、「まだ誰も知らない、分からない」ことを「私こそが解明してやろう」と頑張るのが科学なのですから。そもそも「一番乗り」を目指すことが本質なのです。
科学で解明された分野を応用し、製品化する際などには、コストとのかね合いで「2位でもいい」ということもあるでしょう。でも、それは産業の分野の話です。科学とは別次元のことです。
あの議員さん、科学と産業を混同しているのではないでしょうか。もっと具体的に言えば、スーパーコンピューターの開発を、会社や役所にパソコンを導入するようなもんだと思っているのではないでしょうか。そうでなければ、「2位じゃダメなんですか?」なんて発想自体が出てこないように思います。
最近、忙しくてブログ更新できませんが、この件はどうしても言っておく必要があると思って、急ぎ書き記しました。