
↑高金利引き下げを求める全国クレジット・サラ金問題対策協議会のHP
金融庁は、消費者金融の貸し出し金利について、現在、年29.2%まで(罰則がないという意味で)認められている上限金利を、年20%までとする規制強化案を打ち出しました。
いわゆる「グレーゾーン金利」は解消に向かい、まことに喜ばしい…はずなのですが、おかしな附帯条項があります。この金利引き下げが実施されるのは、新法施行から3年後、その後5年間は、少額・短期の貸付(50万円以下1年以内、または、30万円半年以内)に、年28%の高金利を認める特例付きです。つまり、新法が施行されてから8年間は、年28%の高金利に「お墨付き」を与えるというのです。
8年間も?何のために?
もっともらしい屁理屈がゴタゴタと並べられています。
屁理屈1 ― システム等の変更に時間がかかる
消費者金融業者のコンピュータ・システム等を変更するため、金利規制の実施については3年間の猶予期間を置くのだそうです。
…って、金利変えるだけでしょう!?どんなコンピュータ使ってんでしょうか(怒)。
契約書等の記載についても、上限金利を超える部分につき無効とする「みなし規定」を置けば、いちいち変更しなくても事足りるはずです。
金利規制を遅らせるための露骨な時間稼ぎとしか思えません。
屁理屈2 ― 金利規制を厳しくするとヤミ金が増える
ヤミ金が増えても、それを取り締まろうという発想は、この国の政府にはないようです。
それにしても、ヤミ金の増加と金利規制との間に、本当に相関関係があるのでしょうか?
ヤミ金が猛威をふるったのは2002年(平成14年)前後ですが、このころ金利規制が厳しくなったということはありません。現在、ヤミ金の活動は低調となりましたが、金利規制を緩和したという事実もありません。
このことからすると、ヤミ金と金利規制との間に相関関係はないと見るのが自然だと思います。
そのそもヤミ金の本質は、「金融」ではなく「恐喝」。貸付行為は、債務者を脅すための口実に過ぎません。たとえ上限金利が1000%になろうとも、ヤミ金の活動は成立し得るのです。
屁理屈3 ― 消費者金融利用者の8割は問題なく返済している
この屁理屈は、二つの意味において間違っています。
第一に、「8割は問題ない」ということは、「2割も問題がある」ということ。5人に1人は正常な返済が不可能になってしまう貸付は、どう考えても正常な取引ではありません。それを「問題がない」と見てしまう思考自体に、根本的な病巣があるように思います。
第二に、「8割は問題ない」のは、「いまのところ」であるということ。「消費者金融が新規顧客を拡大しつつある中、いまだ問題を起こしたことのない債務者は、全体の8割である」というのが正しい表現であると思います。「問題ある2割」の債務者も、借り始めの頃は「問題ない8割」にカウントされていたのです。
こんな屁理屈を振りかざし、金融庁はいったい何をしたいのでしょうか?消費者金融業界のプレッシャーのかかる政治家がこのようなことを言い出すのは、(望ましいこととは思いませんが)分からないでもありません。しかし、金融庁のお役人が、消費者金融業者の「権益保護」に汲々とするとは、実に不可解です。「裏のつながり」のようなものを想像せずにはいられません。