セレッソ大阪△1-1▲京都サンガF.C.
13'柿谷曜一朗
(↑こぼれ)
90'有田光希
(↑菅沼駿哉)
[警告・退場]
・C大阪
なし
・京都
42'アンドレイ(C1反スポーツ的行為)
77'吉野恭平(C2ラフプレー)
スカパー!ハイライト
【全体の印象】
雨中の決戦、慎重に入ろうとした京都に対し、セレッソは出だしから猛然とハイプレス。セレッソに両サイドで基点を作られると京都の両サイドも守備に追われるうちにラインはズルズルと下がり、中盤が空いてきたところでソウザがミドルズドン!こぼれ球を抜け目なく狙っていた柿谷に押し込まれて失点。後半から堀米を投入し、サイドも積極的に前に出るとセレッソをじわりじわりと追い詰めたが、守勢モードに入った桜の壁を崩しきれず、返す刀の鋭いカウンターにも肝を冷やす。勝ち上がるために2点が必要な残り15分強でキロス大空中作戦に出るとセレッソがバタついたことありチャンスを作れたが、むしろ最大の決定機は地上戦からのエスクデロの一撃。しかしこれもキムジンヒョンに阻まれた。最終盤のスクランブル状態で放り込みから菅沼が落としたところから有田が決めて同点に追いつき、なおも放り込みラッシュに出たが、同点のままタイムアップ。様々な要因でプランが崩れ、一時持ち直したものの最終的には大味なサッカーで、2016シーズンの幕切れを迎えた。
【雑感】
■地の利
勝負を左右する天の時、地の利、人の和。両者に大きく差が付いたのは地の利だった。前半、京都のDFがつなごうとしたグラウンダーのパスが雨含みにピッチで減速し、柿谷曜一朗や杉本健勇にカットされてそのままカウンターを浴びるというシーンは一度や二度ではなかった。一方で使い慣れたホームの芝状態を熟知するセレッソは、雨でも正確にボールを繋いでゆく。柿谷などはヒールでしっかり味方に落とす。もちろん、選手個々の技術の差でもあった。
慣れないアウェイで雨という状況は、不確定要素の塊。石丸監督は雨の21節岐阜戦がそうだったように、不確定要素がある状況では手堅く行くタイプ。慎重にゲームに入ろうとしたのは誤った判断ではなかったが、大熊監督が今までみたことのないような積極プレスを浴びせて機先を制したのは正直驚いた。セレッソは本当にイレギュラーなチームで、当たるたびにやってるサッカーの質が違う。それが悪い方に転ぶ場合もあるが、この日の大熊采配は見事だった。特に清原翔平と澤上竜二の前線からの追い込みは猛烈で、京都の両CBはまともにビルドアップすらできない状態に。それはまさしく、石丸監督が常々言っていた「相手の判断を奪うサッカー」だった。
■戦術と魂
後半から投入した堀米勇輝は効いていた。果敢なドリブルで陣地を奪いはじめると最終ラインも押し上がり、本来やりたかった前へと能動的なサッカーを展開。日本代表・山口蛍に行く手を阻まれた堀米を吉野恭平が援護し、2人のパス交換で左サイドを突破した場面などは、今まで重ねてきた連携の良さが垣間見れたシーンだった。一方で時間の経過とともに「どうしても点が必要」という思いが個での打開優先になってゆき、最終的な勝負のカードは、巨人兵キロスを立てるパワープレー。投入直後はセレッソが慌ててくれたため、いい形にもなりかけたが、この日もキロスの落としから得点というパターンは成就せず(セレッソ守備陣もしばらくするとキロスとの間合いに慣れた)。シーズン中に一度も成功してない作戦がここ一番で都合良く発動するほど現実は甘くはない。
もちろん、勝てれば何でもいい試合だった。だけど個人的な思いとしては、堀米、ダニエルロビーニョが両サイドから突破を仕掛けて押し込んでいた形を、もう少し長く見たかった。堀米の突破に対応するためソウザが釣り出され、バイタルエリアが空いている場面もたくさんあった。まったく別のサッカーに切り替えるのは、もったいない状況だった。石丸監督は、残念ながら勝負師ではない。ならば手塩をかけて構築してきた一番自信のある戦術でセレッソを追い詰め続けてほしかった。得点を奪いたい、2失点目は死守したいという選手たちの闘志は伝わった。“魂”でサッカーをしていた。いや、“魂=気持ち”だけでサッカーをしてしまった。最後の最後で今まで積み上げてきた戦術をなげうって、“魂”勝負に出たことは、今年の“石丸サンガ”が好きだっただけに、やはり残念なのである。