京都サンガF.C.○2-1●横浜FC
10'宮吉拓実
61'中村充孝
74'武岡優斗
■最大の防御は攻撃
74分まで、完璧な試合運びだった。前回苦杯を舐めさせられた横浜FCだが、この日は満足にボールを持つことすらできなかったのではなかろうか?横浜FCがボールを持てば、とにかく京都がプレッシャーをかける。いや、かけるなんて生易しいものではない。プレスを間断なくかけ続ける。ボールホルダーに最短距離にいる人間がボールにアプローチし、横浜FCが自由にボールを扱える時間なんて、一切なかったのである。五輪で関塚JAPANが見せ、J1でも仙台が見せ、J2では好調チームの代名詞ともいえる「ハイプレス」。ハイプレスにも様々なやり方があるが、京都の場合はプレスをかけて、そこで奪えなくても次の展開を読んで2次的に奪う守り方がハマった。守備は攻撃の第一段階であることを証明したのが2得点目。染谷悠太が前に出ながら奪ったボールを即宮吉拓実に繋ぎ、宮吉は「全速力で曲がりながら走る」という妙技を披露した上で、パス一本でベテランDF堀之内聖を転ばせてしまう絶妙なスルー。絶好調・中村充孝はシュナイダー潤之介との競走に勝ち、試合を決めた。
ただし、問題は京都出身の“赤帽チルドレン”武岡優斗に74分に反撃のビューティフルゴールを許してから。その時間帯まで前から前からかけていたプレスがズルズルと下がってしまうと防戦一方に。結局、ハーフウェーラインあたりでチェックに行けなければ、受け身の展開のならざるを得ないのだ。もしくは、攻撃的な守備がハマっている時間に試合を決定づける3点目を取れるならば、こんなにハラハラすることもなかったのかもしれない。完璧な試合運びが90分は続かないことも、サッカーの面白さだけれど。
■家貧しくして孝子出ず
夏の移籍ウインドゥが閉じてしまったが、京都はついに誰一人補強をしなかった。今後カードが累積していくことを勘案すると、終盤に層の薄さが仇になってしまうかもしれない…なんて危惧しないでもない。そんななか、ある意味絶対的なレギュラーだった福村貴幸が出場停止。代役のチョイスは黄大城でなく、前節いいパフォーマンスを披露した酒井隆介だった。
酒井隆介。シーズン前に東城陽の練習場でTMを見た時、彼がボールを持つと失笑すら起きていた選手。フィジカルは優れているのに、戦術理解度が低く、一生懸命なプレーが思わず笑いを誘ってしまうという愛すべき選手。そんな彼だからこそ、本職の右とは逆の左サイドに入って、なぜか面目を躍如したというのも面白い。この試合の酒井に、スタジアムに観戦に訪れた1万400人のうち、8000人くらいは心を鷲づかみにされたのではなかろうか?長髪をなびかせて爆発的なスピードで駆け上がり、不器用に切り返して壮絶(!)なボールを放り込む様は、まるで野人…いや、アルゼンチンのSBのようだった。もちろん、福村ほどスマートでなく、雑な部分も多かったが、その荒削りさに人々は心を奪われるのだ。特に練習場で「失笑」されていた彼だからこそ、そのギャップが応援したくなる何かを漂わせている。レギュラー離脱→大ピンチ…ではなく、レギュラー離脱→大チャンスになるのは、チームとしていい流れができている証拠。確かに各ポジション層は薄いんだけれども、家貧しくして孝子出ず、災い転じて福となす
〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …終始気迫溢れるプレー。失点は相手を褒めるしかない。
安藤 6.5 …攻守に活躍。苦しい時間帯でも安定して上下動できるのは、大きい。
染谷 6.5 …大久保には手を焼いたが、臨機応変に対応。2点目に繋がったカットは見事。
バヤリッツァ 6.5 …シジクレイを思い出すような積極的な守備で跳ね返し続ける。
酒井 6.5 …繊細さはなかったが、アグレッシブな上がり、クロスが1得点目を生む。
秋本 6.5 …フォアリベロのように中盤で跳ね返し、パスカット。フィードミスだけ残念。
工藤 7.0 …出色の出来の守備だけでなく、反転攻撃の基点に。連勝の立役者。
中山 7.0 …ハイプレスの申し子のように相手との間合いを詰め続け、相手の自由を奪った。
中村 7.0 …軽いプレーもあったが、機を見てボールを追い、技術の高さを見せ続けた。
駒井 6.5 …高い機動力で相手を悩ませた。クロスやシュートがやや不正確なのは勿体ない。
宮吉 7.5 …相手DFラインとの駆け引き+献身的な守備+得点+アシストの大活躍。文句なし。
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内藤 6.0 …ボールを上手く引き出し、悪くない出来。ただ、3点目のチャンスはあった。
倉貫 6.0 …終盤バタバタしていたゲームを落ち着かせる役目は果たした。
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大木監督 6.5 …酒井の抜擢が当たり、チームの共通意識も一貫していた。ただ、交代は遅い?