東京ヴェルディ●0-1○京都サンガF.C.
66'中村充孝
■緑の個人技なチーム
ロンドン五輪を制したのは、緑のユニをまとった個人技に卓越したメキシコだった。個々にテクニックのある選手が多く、それでいてハードワークするサッカーでカナリア色の反則戦力チームを撃沈した。ハードワークは、もう今年のサッカーのキーワードじゃないか?と思うくらいにJでも世界でも席巻している気がする。しかしこの日、ピッチ荒れ放題・芋掘りピッチだった味スタに登場した緑のチームは、個人技には卓越していたが、ハードワークは若干足りなかったのだろうか?対する紫のチームはハードワークが身上。どっちに軍配が上がったのかといえば、個人技の方で、紫のチームは阿部拓馬などはどうしても止められず、特に福村貴幸に至ってはまるで勝負にもなっていなかった。ただ、サッカーの神様は不思議だ。思えばこれがこのゲーム全体の伏線だったのだろうか…。
バヤリッツァが前からチェックに行ったところ、奪いきれずに転がったボール。それが猛然と福村を追い越した小池純輝に渡り、福村はペナルティエリア寸前で背後からチャージして止めた。福村が阿部の対応含め、終始後手に回ってしまっていたのがここで「退場宣告」になった形。ただ、緑の個人技なチームはそのFKから策を弄してフイにしてしまう。流れを失った。
■耐えて一撃
得てしてあることだが、10人になった紫のチームは、もう為すべきことは明確だった。専守防衛。今まで散々攻めに出ることにより穴を作っていた京都だが、覚悟を決めれば意外にも堅かった。途中から個人技やパスワークが身上の緑が「縦ポン・放り込み」に終始してくれたのも助かった。バヤリッツァと秋本倫孝はハイボールにやたらと強く、染谷悠太も酒井隆介も緑色を凌駕する高さがあった。
一方攻撃は、リスクを負わずに攻めるとなると有効なカードは中村充孝ただ一人。その中村が注文通りにワンチャンスを得点に繋げてしまうんだから恐れ入った。数的不利の中ゴールを決めてみせた中村のテクニックは素晴らしいが、もちろん中村一人で奪った点ではない。右斜め前で駒井善成が逃げて走ってパスコースを作り、背後から中山博貴がオーバーラップして左のパスコースを作った。そういう献身的な動きがあってこそ、中村の首の動きだけで「パス出そうかな?」と相手DFを翻弄して中から打ち抜いたプレーに繋がった。
結果的にシュート数は 緑3-7紫 。数字だけ見れば一人退場したと思えない出来。不利になった状況でプランが全て崩れ去った中では、最高の選択を積み重ねて勝ち点3奪取を完遂できたのではなかろうか?
〈京右衛門的採点〉
水谷 5.5 …終始パンチングが不安定。福村退場の場面は飛び出しのタイミング早くヒヤヒヤ。
安藤 6.0 …数的不利になっても前に出ることを恐れず、ピンチにはしっかり戻って対応。
染谷 6.0 …バヤリツァ黄紙のシーンは責任大。その後は落ち着いて拾い、奪い、はね返した。
バヤリッツァ 6.5 …福村退場の場面を除き、前で奪いきるプレーは見事。高さも完勝だった。
福村 5.0 …阿部に抜かれまくり、小池に置いていかれて退場。攻撃にもまったく参加できず。
秋本 6.5 …相手ボールを奪い続け、CBの空けた穴も適切にフォロー。ハイボールも無双。
中山 7.0 …ハードワークの権化のようにボールの有無に関わらず走る。
工藤 6.5 …常にインターセプトを狙い、走り、ショートカウンターの起点に。
中村 7.5 …圧倒的なキープ力と超絶技巧は数的不利で躍動。ゴール以外も素晴らしい出来。
駒井 6.5 …無駄走りが多かったが、それが生きる場面も多かった。まさに全力を尽くした。
宮吉 5.5 …滅私的1トップの役目は果たしていたが、数的不利になり交代。
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酒井 6.5 …慣れない左SBも素早いアプローチと高さで守備の駒としては十分な働き。
内藤 5.5 …いい意味で目立たなかった。中山の動きをそのまま再現とはいかず。
倉貫 6.0 …こちらも工藤よりはスケールダウンしたが、最終盤でミドル一発。
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大木監督 6.5 …数的不利に宮吉を下げるリアリストぶり。残した中村が当たった。