beatitude

好きなことだらけさ…

『テ ヅカ TeZukA』

2012年02月25日 | 舞台(演劇・音楽)

2012年2月24日(金) 開演19:00 Bunkamuraオーチャードホール

ジャンル分けが不可能なというか無意味な変わった舞台でしたが、
振付家シディ・ラルビ・シェルカウイの並々ならぬ手塚治虫への思い入れは
よ~く伝わってきました。

イギリス×日本×ベルギー国際共同制作というだけあって
“手塚治虫”という日本のサブカル原点ともいえるモノを表現しながら
まさに多国籍、いや無国籍な作品になっていたような気がします。
シェルカウイ自身がモロッコ系ベルギー人で真のヨーロッパ人ではないといい、
音楽をインド系ニティン・ソーニー、韓国のパク・ウージェー、日本の堀つばさ、
ポーランドのオルガ・ヴォイチェホヴスカと多様なミュージシャンを使い、
違和感のない音楽空間を演出してました。
パフォーマーも国籍も様々なら、経歴も様々。
振付助手のアリ・タベはサーカスアーティストだし、
コンテンポラリーダンサー、俳優、バレエ、武術家、書道家と
知っていると言えるのは森山未來だけw
シェルカウイは以前、首藤さんと「アポクリフ」やってますが観てないです。

舞台上で多様されている映像は劇団☆新感線の劇中映像も手掛けている上田大樹。
映像とパフォーマーをシンクロさせて魅せる舞台としては
パリ・シャトレ座の「レ・パラダン」を思い出しましたが、



こちらはバロック×ヒップホップの原色溢れるポップオペラ。
お経のような歌や子守唄、琴や和太鼓の音、マンガであるからこその墨色の世界。
ある意味真逆かもw

倒れては起ち上がるコマ割り画面、パフォーマーの動きで現れる書き文字や動線、墨文字。
 上から吊り下げられた紙の上に展開する手塚マンガ。
あ~ダメだ。自分はどうしてもダンサー達の動きを追うよりも、
見せられるマンガの方に意識が集中してしまう。

プログラムの奥野卓司氏寄稿文の中に
「このダンスを見に来られる日本人の方々が、僕には想像がつかない。
マンガ、アニメ好きな若者、コミケに進んで集うマニアなら話が早いが、
そういう方は少ないだろう。なかには、ダンスは好きだが、
「萌」なんていわれているものは見たくもないという方もおられるだろう。」(一部分)とありました。
確かに何に惹かれてここまで足を運んだか。
手塚治虫と森山未來で来たわけだけど、
大人になってからせっせと見るようになったバレエやダンスの世界より、
子どもの頃からどっぷり浸っていたマンガやアニメの世界の方にどうしても傾いてしまう。
つまり、いろんな要素が詰まりすぎてる舞台で全てを観ることができないのです。
フランス語のナレーションに字幕が浮き上がり、不思議な旋律が流れダンスが繰り広げられ、
マンガ映像がバックに起ちあがる…降参、どこを観ればいいの!?
 観たものを消化しきれてません。

ダンスで印象的だったのはダニエル・プロイエット(たぶん)か。
MWや人間昆虫記を題材にした時の女装でのパフォーマンスは異様な雰囲気で目が釘付け!
森山未來は他のパフォーマーとも遜色なく、ナレーションの声も聞き取りやすく、良かったです。

まんま手塚マンガで育った世代としては、
「神」と祭り上げられる手塚治虫には多少違和感もあります。
3.11について言及した時、大友克洋の名前も出ましたが、
テーマや精神世界の話とは別に、大友が世に出た時に
手塚は古い、手塚は終わったと言われたものです。
そうあの時、自分も含め若い奴らは大友に走ったのです。
――この話は長くなるので止めますw
 
シェルカウイの手塚哲学に深く心酔している舞台。
アトムを軸に百鬼丸、ブラック・ジャック、ブッダ、火の鳥、美知夫、十枝子、奇子…
輪廻転生、色即是空…
観に行った方々はどれくらい心酔できましたか?
(まとまりがつかない文章になっちゃいましたぁ。)