beatitude

好きなことだらけさ…

『縞模様のパジャマの少年』

2009年08月13日 | 映画 洋画

ネタばれですので、観たいと思ってる方は読まない方がよろしいかと・・・

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「アウシュビッツ物」と「火垂るの墓」は観れない!という下の娘と
昨日、無理やり観て来ました。



ナチス系の映画は『シンドラーのリスト』『戦場のピアニスト』『白バラの祈り』・・・と
時々観てきましたが、直接的な戦闘シーンや残虐シーンのない
最後まで将校側の子供の目線で描かれた作品でした。



ラストが想像を超えると聞いていたので覚悟してましたが
母親が息子のブルーノの姿が見えないと気づいてから絶叫までが壮絶でした。
誰が観ても衝撃的なラストですが、子供を持つ親は堪りませんよ。
居るはずの場所に子供の姿がない、探しても探しても見つからない
どんどん悪い状況が脳裏を駆け巡り、最後は最悪の事態だとわかる・・・
勘弁してくださいと思ってしまった。

話の流れから「農場」の中に入ってしまうのかなと思いながら観ていましたが、
ブルーノの運命をはっきりさせずにそこで終わりかと思ってました。
甘かった・・・そんな生ぬるい映画ではありませんでした。

全編を流れる美しいピアノの調べ、
父親は立派な軍人さん、それに絶対の信頼を寄せている母親、
息子を誇りに思っている祖父、父親の部下の影響で時代に傾倒していく姉、
唯一社会にその現在の状況に疑問を持っている祖母。
その中で何も知らず、何も知らされず、疑問を持つ事も許されず、
ただ父親を信じろと、家族の言う事に間違いはないと言い聞かされるブルーノ少年。
8歳にとっての親は世界のすべてです。
自分の親が間違っているはずがないと思い込める年齢です。
そこが悲しく苦しい。4歳年上の姉にしたって、
自分の夫がやっている事が何なのか気づき、
その事への嫌悪から荒んでいく母親に同意するという形でしか
己の倫理観を保持できないのです。

父親は子供に対して、自分で自分の身を守るために自分たちの立場、
「農場」とは何なのか、近づいてはならないのはなぜか、
はっきりとは言えない(言ってはいけない)までも、教える事はできたであろう。
その時、正義の所在を尋ねられたら、何ら恥じることのなく説明できるのか。
できないが故の親のエゴで息子を亡くすことになってしまう。

ブルーノと友情を交わすシュムエル。
彼も自分の置かれた立場に順応していくしかすべがない8歳。
でも彼に下心はなかったのか。
ブルーノよりは嫌でも周りが見えてしまう立場ではなかったのか。
すべてをあきらめているような表情が切ない。



先日NHK-BSで「手塚治虫戦争館」という番組をやってました。
“手塚作品の中における戦争”というテーマでした。
ゲストの里中満智子さん(漫画家)が
「戦争は悲惨なんだ。けしてやってはいけないことなんだ、といくら言っても
戦争はなくなりません。大事なのは次代の子供たちに対して
人間としての倫理観をしっかり伝えていかなければならない。」というような事を
言っていたと思います。


それが一番難しい・・・




『第12回世界バレエフェスティバル』 Bプロ

2009年08月13日 | バレエ

2009年8月11日(火) 【プログラムB】 18:00開演 東京文化会館



Bプロの最終日に行ってきました。


【第1部】

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」 マリアネラ・ヌニュス&ティアゴ・ソアレス
Aプロでシムキンとコチェトコワが踊ったのと同じ演目とは思えないほど
雰囲気が違いました。地味目でしたが大人っぽいです。
幸か不幸か日曜日の「バレエ・アステラス」を
観たあとだけにバレエフェスに出るダンサーはスゴイなぁと思えました。

「コッペリア」 ヤーナ・サレンコ&ズデネク・コンヴァリーナ

「アレクサンダー大王」 ポリーナ・セミオノワ&フリーデマン・フォーゲル
「トランスパレンテ」から変更
フォーゲルのアレクサンダーはイメージじゃないなぁと期待薄でしたが
違いました。カッコイイです!
上半身裸で黒パンツとロングの腰巻のみ、セミオノワも同じ衣装で黒のブラ付き。
照明を殆ど落とした舞台の中央にうずくまったフォーゲルで始まります。
アレクサンダーとロクサネの官能的なパ・ド・ドゥ。
セミオノワの力強い動きも心惹かれます。
白タイツ王子のフォーゲルのイメージが払拭されました。
2008年にこのパ・ド・ドゥのみが初演され、全幕バレエとして発表予定ということなので、
是非日本でもやっていただきたい。

「海賊」より“寝室のパ・ド・ドゥ” シオラマ・レイエス&ホセ・カレーニョ
「ロミオとジュリエット」より“バルコニーのパ・ド・ドゥ”から変更

「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ” 上野水香&デヴィッド・マッカテリ
Aプロでザハロワの黒鳥を観ちゃった事を差し引いても
もうちょっと何とかならなかったものかと・・・

「パリの炎」 マリア・コチェトコワ&ダニール・シムキン
話題のシムキン、余裕たっぷりに品よく連続技をバリバリ決めてました。
全幕「ドンキ」の時から見るとガッチリ自信ついてきたというか雰囲気変わりました。
これだけ会場を湧かせているんですから、そうですよね。
後は作品の解釈、演技力、サポート力を鍛えて
また全幕バレエで来てほしいです。


【第2部】

「ナイト・アンド・エコー」 エレーヌ・ブシェ&ティアゴ・ボァディン
内容まったくわからず、エレーヌの身体力高いなぁと。

「スリンガーランド・パ・ド・ドゥ」 アニエス・ルテステュ&ジョゼ・マルティネス
ノイマイヤー、フォーサイスと気鋭の振付家作品が続くと
なんだかようわからんです。
さすがにこの二人は衣装は妙ですが流れるように踊ってました。

「白鳥の湖」第3幕より ルシンダ・ダン&レイチェル・ローリンズ&ロバート・カラン
2007年に観た全幕を思い出してドキドキしながら観てました。
ドラマチック・バレエいいですねぇ。
ルシンダ・ダンは「くるみ」よりこっちの方がカッコイイです。
グレアム・マーフィーは3人で踊る振付が得意なんですかね。
Aプロの「くるみ」もピクニック・パ・ド・ドゥの前に
仲間3人で踊るシーンがあるんですよ。ズラしたり、重ねたり、
流れるように動くのが見応えあります。
来年また観れるのがうれしいです。

「マノン」より第1幕のパ・ド・ドゥ アリーナ・コジョカル&ヨハン・コボー
「マノン」より“沼地のパ・ド・ドゥ”から変更
Aプロの時も感じたんですけどコジョカル上手くなってますね。
何年か前に新国の「シンデレラ」で全幕観てるんですが
その時はカワイイけどあまり印象に残ってないんですよ。
今回は動きにキレもあっていい感じでした。

「アパルトマン」より“ドア・パ・ド・ドゥ” シルヴィ・ギエム&ニコラ・ル・リッシュ
この二人には言うことないです。ヘンテコな動きをここまで魅せるんですから。
マッツ・エックの振付なので例のドラッグ体験「眠り」を思い出しました。

「ベラ・フィギュラ」 オレリー・デュポン&マニュエル・ルグリ
こちらも言うことなし!衣装冴えないのにルグリの年齢を思うとスゴイです。
この先日本にはもうあまり来ないのかな。


【第3部】

「海賊」 ナターリヤ・オシポワ&レオニード・サラファーノフ
シムキンに注目が集まる中、いつもより目立たない感じですが
キッチリ踊ってました。

「ル・パルク」 ディアナ・ヴィシニョーワ&ウラジミール・マラーホフ
去年パリ・オペ来日の時ル・リッシュで全幕観ていますが
マラーホフが踊るとまた違ったものに感じます。
「おほほほ~」と倒れるところ観たいなぁ。
マラーホフの椅子取りゲーム観たいなぁ。

「ブレルとバルバラ」 エリザベット・ロス&ジル・ロマン

「エスメラルダ」 タマラ・ロホ&フェデリコ・ボネッリ
ロホ、気合い入ってました!あれは何という技なんでしょうか!
連続で回転しながら1と1/4回って常に正面位置に戻るはずのフェッテが
右回りに回転しているという文章にするとわけわからん状態。スゴ過ぎです。

「オネーギン」より第3幕のパ・ド・ドゥ 
マリア・アイシュヴァルト&フィリップ・バランキエヴィッチ
自分としてはキターーッです。
バランキエヴィッチのオネーギンは何度観てもカッコイイ!
(ふられてるシーンなんですが・・・)また全幕観たい。
シュツットガルトはなぜDVDを出してくれないんですかねぇ。

「ドン・キホーテ」 スヴェトラーナ・ザハロワ&アンドレイ・ウヴァーロフ
大トリはザハロワ。長身の二人でダイナミックでした。
Aプロでは感じなかった調子の悪さが少し見えたかな。
ちょっと不安定だったと思います。
それでもやはりザハロワ、会場を湧かせてました。
ウヴァーロフも満面の笑みでした。


指揮:デヴィッド・ガーフォース
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:高岸浩子


フィナーレの後に吉例手ぬぐい投げがありました。
舞台のギリギリまでダンサーが出てきてたくさん投げてました。
観客は前の方に走り出ていて、
サイド側から行くと目の前にダンサーという形になります。
手持ちの手ぬぐいを投げ切ったバランキエヴィッチが
アイシュバルトを投げるフリをしていました。





バレエフェスはこのあとガラ公演、全幕プロ「眠り」「ベジャール」とありますが
自分はここまでです。また3年後です。