「ビジネスマンにとって、一番大切なものはなんですか?」
そう聞かれた時は、私は「健康」と答えるようにしています。
肉体的な健康だけではありません。
「心」も含めた、すべての健康です。
「この20年間で 仕事は一層厳しく、より困難になったのか」
と問われれば、決してそんなことはありません。
今も昔も、仕事に求められる厳しさはさほど変わっていません。
それにもかかわらず、病人だけがどんどん増えています。
これは何を意味するのでしょう。
昔は「ストレス性○○」や「新型うつ」といった病はありませんでした。
そういう症状がなかったのではなく、そういう診断(分類)がなかったのです。
医学の研究が進み、症状が細分化され、病名がつけられると、
患者の訴えには、何らかの病名がつけられるようになります。
すなわち、立場が人を作るように、病名が病人をつくるのです。
病名がつけば、会社もそれを理由に異動させやすくなります。
最悪の場合、解雇(退職勧奨)されることもないわけではありません。
「精神や身体の状態が業務に耐えられないと認められるとき」
というのは、法的にも問題のない解雇理由となりうるのです。
幹部候補と言われていた社員が、復職後は出向だったり、
療養の長引いていた社員が、いつの間にか退職していたり。
そんな人たちを見てきたのは、きっと私だけではないはずです。
医学の進歩が、逆にビジネスマンを不幸にしている。
そういう皮肉な一面もあるのです。
だからこそ、「大切なものは何か?」と問われれば、
その答えはたった一つしかないのです。