10月1日から東京都と沖縄県で暴力団排除条例が施行されました。
これで日本全国、すべての都道府県で同条例が施行されたことになります。
法律(国会で制定)ではなく、条例(自治体で制定)とされたのは、
暴力団の状勢が地域によって異なっていることに対応するためで、
条例だからといって法的な縛りがユルイというわけではありません。
たとえば多くの自治体の暴排条例では、
暴力団への利益供与者(条例違反者)は再発防止の「勧告」を受け、
一定期間内に改善されない場合に「公表」されることになりますが、
岡山県の条例では、「勧告」と「公表」は同時にできるそうです。
また、東京都の暴排条例では、
同条例に違反した者が公安委員会に自主申告し、
再び違反行為をしないという誓約書を提出することによって、
勧告の適用除外になる条項が特徴となっています。
これは、できるだけ適用除外を受けやすくして、
自主的な暴力団との関係遮断を促すことを目的としているためだそうです。
そこで一番気になるのは、
「どんなことをしたら暴力団への利益供与者(条例違反者)となるのか」
ではないでしょうか。
今月初め、東京都の暴排条例が施行されるにあたって、
暴力団と交際のある松山千春が、コンサートツアーで暴排条例を過激に批判しました。
また、山口組組長が産経新聞の取材に応じ、
暴排条例を「異様な時代が来た」と批判しています。
出典:2011年10月1日産経ニュース「山口組組長一問一答(上)」(リンク)
批判の言い分は、概ねこうです。
「暴力団も同じ日本国民である。
それを国家権力で一部の国民とは付き合うなというのはおかしい。
何でもかんでも、腐ったものは排除しろでは問題は解決しない」
「暴力団にも親がいれば妻や子ども、親戚や幼なじみもいる。
こうした人たちとお茶を飲んだり歓談したりするだけで、
暴力団の周辺者とみなされ、暴力団と同じ枠組みで処罰されるのは異常である」
本当に暴排条例では、親族に暴力団がいたら、
親戚一同みな暴力団との密接交際者とみなされてしまうのでしょうか。
同級生が暴力団員になったら、同窓会で一緒に酒を飲むことも違反となるのでしょうか。
東京都暴力団排除条例の施行から半月たって、
ようやく弁護士による詳細な研修を受けてきました。
結論から言えば、暴力団排除条例は、
松山千春や山口組組長が言うような、お粗末な条例ではありませんでした。
彼らの批判は、明らかに条文を一度も読んでいないことがわかります。
どんな行為が「暴力団との密接交際者」となり、「条例違反者」となるのか。
次回、紹介します。