歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

与論島の航空・宇宙関連メーカー

2008-05-20 00:07:00 | ものづくり・素形材
 航空産業について調べている中で、ちょっとびっくりするような企業を知りました。新横浜に本社を置く、航空機や人工衛星に使うコネクタを生産している日本マルコという会社なのですが、実に意外なところに新工場を建設したのです。

日本マルコ 与論工場が完成/14日操業 地元50人を採用(南日本新聞2008 04/09 07:33)
(以下引用)
 人工衛星や航空機の部品製造を手がける日本マルコ(本社横浜市、小板橋〔こいたばし〕博行社長)の与論工場(与論町茶花)が完成し8日、同工場で約50人が出席して落成式が行われた。地元から社員30人、パート20人を採用、14日から操業を始める。
 同社は資本金1億2000万円。1978年に創立し、従業員200人、年商30億円。航空、防衛、宇宙分野のコネクタを製造販売する業界トップ級企業で、与論のほかに横浜市、愛知県小牧市に工場がある。
 与論工場は鉄筋平屋建て約660平方メートル(敷地約5000平方メートル)。コネクタの設計、開発、製造を行う。小板橋社長は「鹿児島の最南端が技術の最先端となる。世界にここにしかない新しい物を造りたい」と話した。
 同工場では2010年度までに計100人の地元採用を計画しており、人口6000人弱の同町では町役場の職員114人に次ぐ大規模な雇用先となる。南政吾町長は落成式後の祝賀会で「待ちに待った工場がようやく完成した。与論町に夢と希望を与えてもらったことに感謝したい」と述べた。
 祝賀会では地元採用社員の紹介もあり、供利栄作さん(28)は「研修で培った知識と技術で、1日でも早く工場が軌道に乗るよう頑張りたい。それが与論の活性化にもつながると思う」と語った
(引用終わり)


 首都圏や中部圏、近畿圏ではメーカーはどこも深刻な人手不足に直面しています。このため、北海道や九州などへ人を求めて新工場を設立するメーカーが少なくありません。しかし、鹿児島県最南端の与論島のような離島を進出先に選ぶメーカーを私はこれまで聞いたことがありません。それも航空・宇宙という最先端の技術分野で、となるとちょっと考えにくいものがあります。雇用の場の確保に悩む島ですから人手の確保には事欠かないものと思われますが、それでも物流コストはバカにならないでしょうし、夏は台風というリスクも伴うにもかかわらず、敢えて進出したというのは驚きです。
 与論島ほどではないにせよ、「何でこんな不便なところに?」と首をひねるような企業立地は、他にもたとえば秋田県にかほ市におけるTDKのような事例があります(現在では同地への進出はさほど違和感はないが、TDKのにかほ進出は戦前のこと)。こうしたちょっとおかしな(失礼!)企業の進出の理由としては、創業者の故郷だから、というものが多いのです。しかし、鹿児島の司法書士の方のブログ(こちら)によると、日本マルコの創業者は横浜生まれの鎌倉育ちであり、「こんな青い海が窓から見えるなんてステキじゃないですか」と与論島進出の理由を語ったのだそうです。うーん。

 日本マルコのホームページには「与論島便り」というコーナーがあるのですが、美しい青い海と白い砂、ビーチリゾートそのものの与論島の写真が紹介されています。こんな美しい島で働けるなんて確かに素敵です。効率を考えると企業立地は東京か名古屋なのでしょうけれども、同社のように敢えて僻地を目指す企業があることに興味を覚えました。