クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

荒川の大水で熊谷に現れた“救世主”は?

2012年07月10日 | 奇談・昔語りの部屋
夏の風物詩とも言える“土用丑の日”。
スーパーへ行くと、
うなぎの蒲焼きが前面に出されているのを目にするようになった。

ところが、このうなぎを食べない地域がある。
例えば、埼玉県熊谷市新川。
いまはどうかわからないが、
かつて村の人々はうなぎを口にするのを禁じていたという。

村人がうなぎ嫌いだったからか?
いや、うなぎを神聖視していたのである。
いつの頃かわからないが、
降り続く雨によって“荒川”の水は日増しに多くなっていった。

荒川はその名のとおり暴れ川だったのだろう。
村人たちは大水が出ることに慣れていた。
ところが、その年の大水は規模が違う。
雨は一向に降り止まず、川は荒れ狂い始めた。

そんなときだった。
下流から川の流れに逆らって上ってくるものがある。
村人は一瞬目を疑った。

龍神? いや、大蛇か?
荒れ狂う川をうねって上ってきたもの。
それはなんと“大うなぎ”だったのである。

大うなぎは瞬く間に川を遡り上流へと姿を消していってしまう。
上流の神さまにお願い事にでも行ったのだろうか。
大うなぎが消えてからは、不思議と荒川の水は引いたという。
新川村は大きな被害を出すことなく救われた。

全ては大うなぎのおかげ。
それで村の人たちは、その年からうなぎを食べなくなったそうだ。
いまでのそのタブーを守っている人は、
土用の丑の日などどこ吹く風なのだろう。
新川村から移ってうなぎを食べ始めた人もいたに違いない。
嘘か本当かわからない昔話だが、
大水に悩まされていた歴史をいまに伝えている。

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