クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

星川で古代ロマンを釣る? ―星川―

2016年08月08日 | 利根川・荒川の部屋
小学生の頃、父と朝釣りに出かけたことがある。
場所は星川。
行田市を流れる星川で父と並んで釣り糸を垂らした。

星川は熊谷市を起点としている。
父とぼくが使っていたのはへら竿で、
ほかにも釣り人がいたがみんなへら師だった。
バス釣りは一人もおらず、
あの頃はへら師の方を多く見かけたものだ。

コンビニで買ったおにぎりを朝食にして、
昼近くまで釣り糸を垂らした。
最初は不調だったが、時間を追うごとに魚が食いついてきて、
結果的には大漁だったのを覚えている。

いまその場所へ足を運ぶと、
雰囲気が異なっていることに気付く。
橋が新しく架け替えられたのだろうか。
当時とは違ってだいぶ人工的な匂いがする。

釣り人の姿もない。
行田で講演をする前に何とはなしに足を運んだのだが、
川面に映るネクタイ姿の自分に時の流れを感じた。

星川は古代荒川の流路の可能性がある。
父と釣りに行ったときはそんな視点で見るはずもなかった。
星川を下るとやがて見沼代用水路と合流する。
ここまでの流れを上星川という。

見沼代用水路を下っていくと、
菖蒲図書館(久喜市)の近くで分水される。
そこから元荒川に合流するまでの流れを下星川という。

古代、この星川と会の川がつながっていた可能性がある。
さきたま古墳群をはじめとする流域に造成された古墳は、
川で結ばれていたと言える。
いわば点は線で結ばれる。

釣り糸を垂らしていた頃は魚に夢中だった。
でも、視点を変えて川を眺めれば古代ロマンが底流にあった。
川はいわば歴史につながる道。
遠い昔に遡ることのできる一本道。

同時にそれは未来にもつながっている。
星川に架かる橋に立ったとき、
そのことを感じずにはいられない。

星川の流れは、父と釣りをしたときと同じように思える。
しかし、実際は異なっているのかもしれない。
川の顔は時代によって異なる。
流路も変わるし、その影響もそれぞれ違う。
川は難しくて懐の深い存在だが、
我々を歴史と未来にいざなってくれる。


星川(埼玉県行田市)

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