クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

妻沼の“聖天様”にも嫌いなものがある? ―妻沼聖天山―

2010年01月12日 | 神社とお寺の部屋
大蛇退治によって正月に餅をつかない家があれば、
門松を立てないところもある。

妻沼の聖天様は松嫌いで知られている。
その昔、聖天様は松の葉で目をつつかれたとか、
松葉の燻しにあったという理由で、
とても毛嫌いしている。

ゆえに、妻沼十二郷の人たちは松を忌んでいるという。
正月に門松を立てることはないし、
松の木を植えない家もある。
また、「松」の名のある人と結婚するとき、
わざわざ改名するという徹底ぶりである。

 妻沼聖天様松まき嫌い
  みんなかたぎで辛抱する

そんな民謡も伝わっている。
現在はそれほどの徹底ぶりではないようだが、
聖天様の松嫌いは、その集落に住むほとんどの人が知っているだろう。

ところで、人々から厚く信仰される神仏でも、
不思議と人間くさい。
聖天様の松嫌いの理由の一つに、
太田の呑龍様との喧嘩が伝えられている。
すなわち、呑龍様との喧嘩中に、
聖天様は松葉で目をつつかれたという。

慈悲深い仏とはいえ、喧嘩をするらしい。
したがって、呑龍様を詣でたあとに聖天様へ行っても、
ご利益はないとまことしやかに信じられている。
そんな人間くささは、
それだけ人々の信仰を古くから集めているからだろう。

このように聖天様にアプローチするときは、
松と呑龍様はタブーである。
うっかりやってしまいそうだが、
事前に知っていれば何てことはない。
恋と同じく、仏にアプローチするときも、
情報収集が必要ということだろうか……



妻沼聖天山(埼玉県熊谷市妻沼)の貴惣門



齋藤実盛銅像

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2 コメント

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伝説 (忍っこ)
2010-01-13 21:42:11
妻沼聖天山は今年、初詣にいきました。
ふと見たら参道わきに行列ができていて
なにかと思ったら、いなり寿司の行列でした。
ここのおいなりさんおいしいですよね
さて松ですが、
たしかにそう言われてみれば、
門松も松の木も見なかったですね
私の母親の実家がある行田市谷郷では今でも
里芋をつくりません
実際に里芋をつくっている農家も見当たりません
これは昔、奈良の春日大社の使者として
鹿がやってきて、谷郷春日神社に到着するはずが
道に迷って畑をうろうろしているうちに里芋の葉が目に当たったそうです。
まもなく、嵐や洪水が起こったりして
これは鹿の祟りだとして以来里芋は作らないそうです。
こういう伝説は信じてしまいます。
返信する
忍っこさんへ (クニ)
2010-01-14 01:00:35
聖天様のいなり寿司、おいしいですよね。
実はこの記事にもいなり寿司のことを盛り込もうとしたのですが、
その隙がなかったので触れませんでした(笑)

里芋を作らない行田の谷郷……
忍っこさんの聞いた話だと“鹿”なのですね?
かつて谷郷鎮守の春日様が幼少の頃、芋畑で遊んでいたときに、
芋の葉先で片目を傷つけてしまったから里芋は作らないとぼくは認識していました。
どちらも“春日神社”がキーワードのようですね。

こういう話は好きです。
特にタブー系は引き込まれます。
特定の民家に伝わっているのではなく、
集落全体で守られているタブーには、
言い伝えや歴史、信仰の大きな影響力を感じさせます。
返信する

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