おもしろき ー熊本、鹿児島、宮崎で過ごした日々🌟🌟🌟

おもしろきことのなき世をおもしろく!Carpe Diem. 人間万事塞翁が馬。人生いろいろあるから、おもしろい!

Something 最終話

2013年02月10日 19時20分21秒 | 僕が書いた小説

ジョンとポールは新たな旅に心が躍り、東へ東へと向かった。
途中、いろんな事件に巻き込まれながらも、毎日が楽しくてしょうがなかった。
様々な国を通り抜け、一年が過ぎたところで、やっと別の世界に行けるという情報を得ることができた。
生命の泉なるものが存在し、そこに浸かれば、もう一つの世界の自分たちに融合できるという。
二人は深く考えず、やってみることしか考えなかった。人生一回きり、何でもやってみないことには始まらない。
二人は野宿しながら、一年ぶりに、somethingのことを思い出していた。
ポールがジョンに話しかける。
「あの時、天女がsomethingを僕達が見つけたって言ってたけど、結局somethingは多分、生きている価値とか充足感みたいなものではないのかなと思うのです。
あの山での出来事以来、生きる素晴らしさとか何か不可能と思えることに挑戦したい気持ちが心の底から湧いてくるのです。
毎日がそういう気持ちで満たされています。
天女が人間のために創造したもの、人間を堕落させるのが目的である悪魔にとって都合が悪いもの、しかも僕達があの旅を通して得たものですから、そんなものじゃないかなって気がするのです。」

ジョンが微笑みながら言う。
「大体そんなところです。実は僕は、あの後、夢の中で天女に会って、somethingが何であるのか聞いたのです。
実際、僕達は毎日が満ち足りていて、ポールは興味ないだろうと思い、話しませんでした。
実は、夢の中で天女に聞いたことを書き留めているのです。
せっかくだから見てみますか?もうあんまり興味はないでしょうけど…」
そう言いながら、ジョンは一枚の紙をポールに手渡すと、眠ってしまった。
ポールはその紙を見ることなく、ポケットにしまい、明日からの冒険に心踊らせながら、目を閉じた。

終わり


SOMETHING

9文字に隠された意味を知らずに実行できた人間が、本当の幸せ、人生の意味、生きる価値をどんな人よりも見いだすことができる。
S、自らが犠牲sacrifceとなり他人のために最善を尽くすこと。

O、どんな状況でも前向きoptimismであること。

M、苦しんでいる人に慈悲の心mercyを持つこと。

E、夢中になるものenthusiasmを持つこと。

T、誘惑に負けず、真実truthを見抜く力を身につけること。

H、苦難hardshipの道を選択し、それに立ち向かうこと。

I、自分を信じ、迷った時は、直感inspirationに従うこと。

N、精神の質の上昇nobilityがあること。

G、他人や自分の人生に心から感謝の気持ちgratitudeを持つこと。


読んでくれた人、ありがとうございました。
あなたにもsomethingが見つかることを願っています。
Be brave to everything.

生きがいについて (神谷美恵子コレクション)
クリエーター情報なし
みすず書房

Something 九話

2013年02月09日 01時02分56秒 | 僕が書いた小説

羽衣を4000年ぶりにまとった天女は、死んでしまったジョンとポールのもとへ向かった。
そして涙を流すと、その涙が湖となり、二人は湖の底に沈んでいった。
天女の涙は奇跡の水で、その水は全ての病を治すと言われている。
でも死人を生き返らせることはできない。
ただし、somethingを手に入れたものの魂は呼び寄せることができる。
天女は二人がsomethingを手に入れたことを信じ、二人の復活を祈った。

二人の体からまばゆく輝き始めると、湖の水は全て蒸発してしまった。

二人は目を覚まし、いい夢を見たようで満足そうだった。

二人は一度死んでしまったことを忘れてしまっているらしい。

目の前の美しい天女がいる。ここは天国に違いない。
二人は死ぬ間際のことを思い出したようで、自分たちがあきらめず努力したことに満足していた。

ジョンがポールに言う。「あの時、究極呪文をありがとうございます。僕はおかげで、あの女を頂上まで運べたような気がします。彼女は頂上まで連れていけば助かるって言ってましたから、きっと生きてると信じましょう。それにしてもこんな清々しい気持ちになれたのは初めてです。」

ポールも満足げにジョンに言う。
「私も人のために死ねて、こんなに嬉しいことはないですよ。悪魔もやっつけましたから、地上の人達にも平和が訪れるでしょう。本当にいい人生でしたね。実際、天国は存在したのですね。」
天女は二人の話を幸せそうに聞くと、ようやく口を開いた。
「ジョン、ポール、あなた方は生き返ったのです。そして私はあなた方が助けてくれたあの病気で醜かった女なのです。本当にありがとう。そしてあなた方はすでにsomethingを手にいれたようですね。」

二人はsomethingなるものを探していたことを思い出したが、すっかりsomethingに興味を失っていた。

ポールが笑って言う。
「ジョンも同じだと思いますが、somethingは生きている時、僕達が探していたものです。僕達は死んだことに悔いはありません。あなたを助けることができなかったのは残念です。でもこうして天国で、美しい天女の姿のあなたと再会できて嬉しいばかりです。
もう地上のことは忘れましょう。そして天国でまた三人で何かを探しませんか?」
ジョンはポールの提案があまりに嬉しかったようで、雄叫びをあげた。

どうも二人は地上でまた生き返ったことを信じてないらしい。

天女は二人に祠のこと、羽衣のこと、天女の涙のことを一から説明すると、二人は生きていることに感謝し、二人は雄叫びをあげた。
天女が創造したsomethingとは一体何だったのか?

天女が二人に語ろうとすると二人は興味がないと言って、天女と別れた。
天女は幸せそうに4000年ぶりに天へと戻っていった。
ジョンがポールに尋ねた。「今からどこに旅しますか?」
ポールが答える。
「夢で見た天草に魚を食べに行きませんか。でもどうやったら向こうの世界へ行けると思いますか?」
ジョンが大笑いして言った。「何とでもなるでしょう。不可能なんてないですから、とりあえず東に行きますかね。」

二人のまた新しい冒険が始まる。
終わり

と思いきや、次回はsomethingの正体が明らかになる。続く…

 

 

天女のはごろも (子どもとよむ日本の昔ばなし)
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Something 八話

2013年02月08日 11時34分33秒 | 僕が書いた小説

女が手にしたものは天女の羽衣であった。
女が羽衣をまとうと瞬く間に病気が回復し、美しい天女になった。

天女は4000年前、人間たちが悪魔の囁きで堕落してゆく姿を見かね、天から降りてきた。
そして、Somethingを創造し、幸せになれるSomethingが世に存在する噂を流した。
Somethingを手に入れることのできる人間だけが悪魔を倒すことができる。

そしてこの山に住むことにした。
悪魔は天女の存在に気づき、天女の存在を恐れた。

悪魔は天女の様子をずっとうかがいながら、天女に永遠の命をもたらす羽衣を奪うチャンスを待っていた。天女が水浴びをしている隙に悪魔はそっと羽衣を盗んだ。
天女は悲しみのあまり涙を7日の間流し続け、ある決心をした。
悪魔に存在が見つからないように輪廻を繰り返し、Somethingを手に入れることのできる人間を探そう。
4000の後、元の姿に戻るが、その時に羽衣が手元に戻らなければ、天の裁きを受けおぞましい病気にかかるだろう。その時、本当の死を迎えるだろう。
それでも、人間を信じ、いつか悪魔を滅ぼし、羽衣が自分の手に戻ると信じることにしよう。
そう思うと、天女は消えてしまった。
いろんな人物に生まれた。ある時はキリストで、ある時はガンジーであったり、マザーテレサでもあった。いつも人々の善い心の支えとなるべき存在であった。
悪魔は羽衣を奪うと地獄の炎で焼き払おうとした。
天の糸で編まれた羽衣は傷一つ作ることができなかった。
悪魔は祠をつくり、箱の中に羽衣を入れた。そして自分が生きている限り箱が開かないように封印した。

そしてこの山に人々が近づけぬように、大蛇を飼い、道を険しいものにした。
この山に近づくものなどいなくなり、羽衣のことも遠い昔の話になった。

百年に一度くらいの割合で、山に登ろうとする人々がいたが、全て、悪魔が誘惑し、頂上にたどり着くものはいなかった。

ところが最近になり、Somethingが山の頂上にあるという噂が流れ始め、たくさんの人々が山の頂上を目指し始めた。
悪魔は天女が本来の姿に戻り、羽衣をとりかえすためにこの噂を流したことに気づき、策を練った。
そして天女が山の頂上を目指すのを待った。
険しい道以外に、大きく誰もが登れる道を作り、関所を作った。関所を天女は通るまい。
そしてお金を払って平坦な道を選ぶ人間は恐ろしくはないと思い、険しい道をいつも見張っていた。
特に一目につかない洞窟から天女は上を目指すことは明らかだった。
そして、洞窟の中で、捕まるべくして天女は捕まって、鎖に繋がれた。
天の裁きが彼女を待っていた。日に日に病気は進行し、天女とはほど遠い、見た目は悪魔のような醜い姿になってしまったのである。
続く…

 

天使と悪魔(上中下合本版) (角川文庫)
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Something 七話

2013年02月07日 20時56分06秒 | 僕が書いた小説

二人は交互に女を背負っていくことにした。
二人の体はすでに限界を超えていた。
一時間歩いては一時間休みながら、洞窟を登っていく
半日、登っただろうか?
ついに二人の体に異変が見え始めた。
高熱の上に体に黒い斑点が見え始めた。
病魔が二人の気力と体力を奪ってゆく。
ついに倒れて、動けなくなった。
二人の死が近づいているのを感じる。
女は自分のせいで二人がこうなってしまい、ただ涙を流している。
もうなすすべはないのだろうか?

ポールが死を覚悟したまさにその時、頭の中にある呪文が浮かんだ。
そしてジョンに向かってその呪文を唱えた。「SELFYSACRIFITUS」
ジョンの気力がみるみる回復してゆく。
ポールはジョンに最後の言葉を告げた。
「先にあの世に行っときます。究極呪文を唱えたから、もうだめみたいです。ジョン、きみはあと10日間は体がもちます。でもちょうど今から10日後に完全に死ぬことになるでしょう。あとはよろしくお願いします。いい人生でした。」
そう言うと、微笑み、そのまま動かなくなった。天に召されたのだ。
ジョンは涙を流さず、自分の使命を果たすことを決意した。
そして女を左肩にポールを右肩に背負い、一心不乱に歩き始めた。
足は血だらけで、心臓はもはや動いていなかった。
痛みも感じず、目もほとんど見えなくなってしまった。それでも、気力だけで登っていく。
もうここまでくれば理由なんかいらない。
何も考えずともよい。ただ上にたどり着けばよい。
そして10日の間、休まず、何も食べず、ただ歩き続けた。
女が生きているかもわからない。
ジョンの五感は全て失われてしまった。
ただ光だけを感じることができたのだ。
頂上に着いたのだ。無情の喜びがジョンの心の中で込み上げるのと同時にジョンは天に召されていった。

女は虫の息で祠の方へ這っていく。
本来彼女が持っているものが祠に封印されていた。

祠は悪魔がその女の所有物を封印するために建てたものであった。
悪魔が消滅した今、その封印も解けようとしていた。
祠の近くにいた人々は女の物凄い姿に、悲鳴をあげ、一目散に逃げてゆく。

彼らと悪魔にどれほどの差があるだろうか。

それに比べ、ジョンとポールは…

そんなことを考えながら、女はやっとのことで祠にたどり着いた。

そして祠の中に箱を見つけた。
悪魔のシールは燃え尽きていた。
箱は簡単に開いた。
久方ぶりに彼女が本来持っているものが彼女の元に戻るのだ。

彼女は箱の中のものにそっと手を伸ばした。

続く…

 

贖罪
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Something 六話

2013年02月06日 01時07分36秒 | 僕が書いた小説

二人は大きく深呼吸し、勇気を持って、うめき声のほうへ歩く決心をした。
恐ろしいけれど、一歩ずつ一歩ずつ、地面を踏みしめながら進んでいく。
しばらく進むと、うっすらと人影が見える。
懐中電灯で照らすと二人は想像以上の女の姿に体が動けなくなった。
髪の毛は半分ほど抜け落ち、顔は原形をとどめず、目は見えないようで、皮膚は紫がかっていた。
左足首を鉄の鎖で繋がれていて、この世の地獄を見るようであった。
二人は勇気をふりしぼり女に近づいた。
何か話かけようとするが、この地獄の有り様に声がでない。
するとその時、女はうめくのを止め、見えない目でこっちを見て、微笑んだ。
二人の目から涙がこぼれた。こんな苦しみを背負いながら、微笑むことができる人などいるだろうか?
そして、女はか細いかすれた声で語り始めた。
二人は何も言わず、女に耳を傾けた。
「ジョンとポールですね。悪魔を倒してくれたようですね。わたしはそれだけでもう救われました。わたしの命はもうすぐ尽きます。このままこの洞窟を下れば三時間ほどで下の道に繋がります。ここに長いこといると、このとんでもない病気がうつり、とりかえしのつかないことになるでしょう。さあ、行ってください。わたしはあなたたちのおかげで救われたのです。それと、お腹がすいてるでしょう。
そこにあるパンと葡萄酒を飲んでいってください。永遠に腐らないものですから、大丈夫ですよ。ほんとありがとう。」
そう言うと、女は気を失ってしまった。
二人の気持ちは決まっていた。どうしてこんな心の持ち主をこんなとこに置いていけようか。
たとえ女が助からなくとも、自分たちが途中で息絶えようとも、この人を助けねばならない。
二人はパンを手にとり、葡萄酒で自分たちの運命に乾杯した。
パンを食べ、葡萄酒を飲みほすと、久々に腹が満たされたせいか、そのまま眠りに落ちてしまった。

二人はまた同じ夢を見ている。
そう二人は12使徒としてまさに最後の晩餐に参加している。
キリストがいう。
「12のうちの1人が私を裏切るだろう。私はそして明日処刑されるだろう。
ユダ、なすべきことをやりなさい。」
ジョン(ヨハネ)とポール(パウロ)はキリストの発言に驚き、どうしてよいかわからない。
二人を見て、キリストがいう。
「Somethingは見つかったかね。その表情ではまだみたいだね。ユダは悪魔の誘惑に負けてしまって、私は明日死ぬことになるけど、心配はない。2000年くらいして、お前たちの生まれ変わりが悪魔を滅ぼし、Somethingを見つけるだろう。その時も私の生まれ変わりも死に瀕しているだろう。」
そういうと何ともいえない微笑みをキリストは見せたのである。
二人はその微笑みに涙し、パンと葡萄酒を口に入れた。
とてつもない眠気に襲われ、眠ってしまった。
目が覚めると、洞窟の中にいる。夢と現実が交差する。
目の前に女が倒れている。ジョンとポールは現実に戻り、まずは女の足の鎖をはずすことから始めることにした。
リュックからカナズチをとりだし、二人で交互に叩くもびくともしない。
鎖の根元から壊すしかない。そう思い、鎖の根元の岩を二人で交互に叩いた。手のひらから血が滴り落ちた。そして4444回目でついに岩を砕き、女は自由の身となった。
喜びが込み上げ、二人で雄叫びをあげると女は目を覚ました。
「あなたたちのことを軽く見ていました。
これも運命かもしれません。あなたたちには3つの選択肢があります。
1つ目はこのまま山を降りることです。ここまでやったのです。十分です。
2つ目は私を連れて山を降りることです。あなたたちに病が伝染し、生涯治らないでしょう。
3つ目は私を祠まで連れていくことです。私はそこで元気を取り戻すでしょう。でも…あなた方は死にます。」
ジョンはポールに言った。「死ぬのも悪くはないですな。」ポールが笑って言った。「それもまた粋ですな。」二人は大きく笑った。
続く…

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Something 五話

2013年02月05日 00時16分28秒 | 僕が書いた小説

洞窟は真っ暗で、二人は懐中電灯を持って前に進もうとするがなかなか進まない。何度も足をとられ転倒した。
7日の旅で体は限界がきていた。
ジョンがポールに少し休まないかと提案した。座るやいなや、二人は眠りに落ちた。
悪魔を退けたことにほっとしたせいか、十時間眠り続けた。

二人はその間同じ夢を見た。
ジョンもポールも塾で働いている。
何故か二人は日本人で、英語と国語の講師をしている。天草、萩、長崎、下関…いろいろな地に旅をする。
旅をしながら、いつも何かを探しているが、それが何であるのかわからない。
熊本という地で、同じ会社の別々の校舎で働いていて、どうやら二人ともそこの責任者のようだ。
夜、仕事が終わると毎日のよいに、どこかのレストランで二人は何か大切な話をする。
Somethingについての重要な何かを語っているようだ。
ある夜、二人は答えを見つけ出す。
Somethingとは…!二人が同時に叫んだ。
二人がそれを口に出そうとした瞬間、目が覚めた。

ジョンとポールは不思議な夢に戸惑いながら、夢に出てきた彼らが自分たちの前世、もしくはもう1つの世界の自分達であるに違いないという結論に達し、先へ急ぐことにした。
いつの時代、または別の世界にせよ、彼らが何かを探すために生きていることが嬉しかった。

それから、転倒すること47回、体中に傷をおいながら3日ほど歩いただろうか?永遠にこの闇が続くのか、もうここから出れないのではないだろうかと考えていた時…

うっすらと光が見えたのだ。やっと探し続けていたものに出合える。
自然と二人の足どりは軽くなった。
喜びが込み上げてきたのもつかの間だった。
卵が腐ったような異臭と女のうめき声が聞こえてきた。
二人の足が止まった。
これからどんな苦しみを二人が経験することになるか知るよしもなかった。

続く…

図解 悪魔学 (F-Files No.027)
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Something 四話

2013年02月04日 01時13分17秒 | 僕が書いた小説

ジョンとポールは突然老人が現れ、少し狼狽したが、すぐに、この老人が一体何者であるのかを推理することに夢中になった。
しばらく沈黙が続いたが、老人が先に口を開いた。
「わしはこの山に住む仙人じゃ。よくここまでたどり着いたな。お前たちはわしがつくった幻覚を二度も見破り、あの険しい道をも諦めなかった。
そういう勇気あるものを何十年、いや何百年と探しておった。お前たちが探しているもの、Somethingはここにあるぞ。ほら、何でも願い事が叶う水晶じゃ。持っていって、幸せを掴め!さあ、もうここに用はあるまい。引き返すのじゃ。この先は病気の女がおるだけじゃ。」

ジョンとポールはこの旅でいろんなことを学んだ。平凡な道よりも険しい道を。苦しいほど、やりがいがあることを。困難であるほど心が踊ることを。
そして彼らが求めているもの、Somethingが、この水晶でないことは明らかであった。
また彼らはこの旅を通して、いつの間にか物事の真実を見極める能力が身についていた。
老人が微笑みながら、水晶をジョンに手渡すと、ジョンも微笑み、それを受けとるやいなや、地面に叩きつけ水晶を砕いた。
老人の顔が歪んだと思った瞬間、ポールが叫んだ。「正体をあらわせ」「REVEALAS YOURSELENDE」
ポールは自分が発した呪文に驚いた。この旅で先祖から流れる祈祷師としての血が現れたのだ。
老人は苦しみながら、体中から光を発し、この7日7晩現れた悪魔の姿になった。
なぜわかったか悪魔が二人に問いかけるとジョンが静かに語り始めた。
「僕たちは常に険しい道を選択しようとしてきた。悪魔よ、お前はいつも人間を楽なほうへ、導く。険しい道を選ぶ人間はお前の生涯の敵になるだろう。
お前にとって恐ろしいのは平凡な道を選ぶものではなく、険しい道を選択する人間だ。
お前はこの山でSomethingを手に入れるかもしれない人間を恐れ、険しい道の途中に小屋を作り、険しい道に挑もうとした危険性のある人々を平凡な道に導いた。
僕らが屈しなかったので、お前は欲望の象徴でもある水晶を僕たちに渡し、堕落させようとした。
お前が水晶を渡そうとしたときのその笑みに悪魔が見えたぞ。残念だったな。」
悪魔が反論する。
「ではお前たちが、最初から洞窟の道を選択していたら…
あそこに病人がいることは知らなかっただろう。」
ポールが笑って言った。
「今の僕たちには簡単な問題だ。洞窟はお前の幻覚で行き止まりだ。最初からそれが幻覚と見抜けるやつはいないだろう。半分は引き返し、半分はお前の小屋に来るだろう。そしてみんな平凡な道に戻される。お前にとってそんな人間は危険ではないからな。
危険なのは行き止まりを恐れず、前に進むものだ。」
悪魔は怒り狂い、二人に襲いかかろうとした時、ポールが呪文を唱えた。
「IREISARU DAMONTOUS」
悪魔は燃えながら、この世から消えていった。

二人はその余韻に浸ることもしないで、洞窟を下っていった。
病気に侵された女が彼らが求めるものの鍵を握っているのは明らかだった。
続く…

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Something 三話

2013年02月03日 00時09分15秒 | 僕が書いた小説

その先は想像以上の険しい道だった。大蛇に襲われたり、崖崩れに遭遇したり、強風に飛ばされそうになったこともあった。
夜になると毎日のように、悪魔が彼らのところにやってきて、何のために苦しんでるのか、あきらめてゆっくりしたらいいと囁く。
それでも探しているもの「Something」を手に入れるために、頂上を目指した。きついけれど、苦しいけれど何故か心は踊っていた。
出発から7日目、毎日2、3時間の仮眠しかとらず、保存食も尽きようとしていた時、とうとう頂上が彼らの前に現れた。
最後の力をふりしぼり、頂上へたどり着くと、大きな道から来たに違いない多くの人がいた。
関所で十万円を支払った人々が祠に向かって列をつくっていた。
祠に願い事をして帰る人々の様子は様々であった。
騙されたという顔をして、不平不満をこぼしているもの。十万円を通行料として払ったことで願いが叶うと信じているもの。
信心深く、祠を崇めたという事実に満足しているもの。
ジョンとポールは彼らの姿を見ながら、自分たちが彼らに比べ、何と幸せであるか実感した。
苦しい道を歩んできた二人にとって山頂にたどり着けたのが何よりの幸せだった。
はたしてSomethingとはこの祠であったのだろうか?もしくはここで願い事をして叶えられるものであるのか?
二人は確信していた。探しているものはこの祠ではない。祠の後ろに見える洞窟にあるに違いない。
そしてその洞窟とは、今まで歩いてきたあの険しい道のふもとにある洞窟に繋がるに違いない。そう、伝染病の女が住む洞窟に…
二人はそう思い、人々の列に加わった。
二時間ほど待っただろうか。やっと二人の番がまわってくると、祠に願い事をすることもなく、祠の後ろにまわった。
恐ろしくもあったが、勇気をふりしぼり、洞窟の中に入った。
ところが、洞窟の中は数メートルで行き止まりであった。
それでも二人が諦めなかったのは、この洞窟が必ず下へ繋がっている予感がしたからだ。
そう信じ、目を閉じると、目の前の壁がないような気がする。
二人は大きくうなずき、壁へ向かって歩いた。
やはり何者かによって作られた幻覚であった。
もともと壁など存在しないのだ。
いざ進まんとしたまさにその時、何者かが二人の前に現れた。
見覚えのある顔だった。
そう、あの小屋にいた老人が現れたのだ。

続く…

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Something 二話

2013年02月02日 07時16分52秒 | 僕が書いた小説

老人がいうには、この先はあまりも危険なので、数年前に通行禁止になり、道に大きな岩が置かれたということだった。
しかし、高さ数十メートルあるであろうこの岩をいったいどうやって運んできたのか?
ジョンとポールは不思議に思いながらも、老人に耳を傾けた。
とにかくまっすぐは通行禁止になり、代わりに小屋の裏に大きな道へつながる近道が作られたようだ。
ただし、通行料が一万円かかるらしい。
わざわざこの険しい道を選択したのに、一万円とられることに二人は納得できない。
料金がいくらかというのは関係ない。自分たちが選択した道がお金を払っていく道であるということに納得がいかないのだ。
洞窟まで戻り、洞窟を通って山頂を目指す旨を老人に伝えると、やめたほうがよいという。
洞窟には不治の伝染病にかかった二十歳くらいの女が住みついていて、今は誰も通らないということだった。
危険な道ならまだしも、さすがに病気にはなりたくないということで意見が一致し、一万円づつ老人へ支払い、小屋の裏の道から大きな道を目指すことにした。ジョンとポールは「野暮と粋」の話が好きで、よくその話で盛り上がったが、今もまたその話に花を咲かせながら大きな道を目指している。
この道は、危険とは程遠い何とも平凡な道であった。大きな道との交差点までもう少しというところで、彼らは足を止めた。
やはりここにきて納得がいかないのだ。
このままこの大きな平凡な道に進んでも、探しているもの「Something they are looking for」は見つからない気がする。
二人とも同じことを考えていたようで、小屋まで引き返すことにした。
小屋の老人は二人が戻ってきたことに驚き、お金を返すという。
でも二人ともそれは野暮だということで、お金を受け取らなかった。
その後どう進むべきか二人の心は一致していた。

二人は目を合わせると、笑いながら、同じ方向を目指した。
小屋の前から老人が何かを叫んでいたが、彼らは無視をして、行き止まりに立ち塞がる大きな岩の前に立った。
さあこの岩を何年かかっても乗り越えよう!もう後には退かないぞと二人が思った瞬間、目の前の岩は視界から消え、険しく細い道が彼らの目の前に現れたのである。
続く…

野暮な人 イキな人―江戸の美意識「イキ」で現代を読み解く (パンドラ新書)
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Something 一話

2013年02月01日 23時44分45秒 | 僕が書いた小説

夢をアレンジして今年も短編小説に挑戦してみる。
これはジョンとポールの冒険の物語である。


向こうにそびえたつ山の頂上に彼らの探しているものがある。
彼らの名前はジョンとポール。二人は旅が好きな40代である。
山頂に行くにはいくつかの道がある。一つは大きく立派な道。一つは細くて険しい道。さらにその細く険しい道の途中には洞窟があり、そこを通っても頂上へ行ける。
ほとんどの人は大きく立派な道から頂上を目指す。

ただしそこには関所があり、一人あたり十万円を支払わねばならない。
彼らの場合、お金の問題よりも、おもしろみのない道からは行きたくないという理由から、細く険しい道から頂上を目指すことにした。
途中で右側に洞窟を見つけた。どうも山の頂上につながっているようだ。
まっすぐ行くか、洞窟に入るか、珍しくジョンとポールの意見が割れた。
話し合いの末、洞窟は避け、まっすぐ進むことにした。上に行くほど、道は悪くなり、両手を使いながら、上を目指した。
しばらく行くと、道が大きな岩で塞がれていた。
そしてその近くに柵で覆われた小さな小屋が立っていた。
柵の後ろに道が見える。
小屋の戸を叩くと、気難しそうな老人が現れた。
続く…


ジョンとポール
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生命の泉 10 話

2012年02月06日 16時31分49秒 | 僕が書いた小説
年末から短編小説なるものにトライしている。これはその続きである。

オークの物語

AD207年、2月6日、悪魔達と神々との戦いは終わった。
最後の戦いの日、悪魔の王ケイタと対峙していたのは火の神オークと雷神シマルであった。
ヒミコは悪魔と化したコウトクをくい止めるのに必死であった。
風神CHIKARAはケイタの右腕であるタクマと、水の神である龍神はケイタの左腕であるタクミを瀕死の状態まで追い込んでいた。

ケイタを完全に葬るのが無理と悟ったオークとシマルは全ての力を解き放ち、ケイタの力と記憶を666666日間封じ込めることに成功した。

オークはその時、永遠の命以外の力を失ってしまった。
そもそもオークとケイタは、ケイタが陰の神であった時、親友であった。
ケイタは記憶が消えていくなかで、涙ながらにオークへ小箱を手渡した。
そして最後にオークの耳元でささやいた。
「俺は輪廻を繰り返す。虫として生まれる時もあれば、人間として生まれる時もあるだろう。どこで何として生まれるか解るまい。それでも、いつか俺の生まれ変わりを見つけた時、これを彼に渡してくれ。この釣り針を使えば、彼が俺の生まれ変わりだと思い出すかもしれない。
コウトクもおそらく俺のようにヒミコに封じられるはずだ。俺を見つけきれない場合はコウトクにこれを…」
そう言いながら、ケイタの体はどこかへと消えて行った。
オークは小箱を持って、人のいない山奥へ行き、一人で何百年と暮らした。何度も釣り針を破壊しようとしたが、力を失ったオークではどうすることもできなかった。力もないまま永遠の命があることが彼の心を蝕んでいった。
ある日、一度だけ、釣り針で魚を釣ってみたくなり、使ってしまった。
一度だけ、一度だけと言いながら、釣り針を毎日使うようになった。
魚を釣ることに飽きた彼は釣り針で動物の魂を釣るようになった。
簡単に狩りができることに喜びを覚え、昔、神だった時の力が欲しくなった。
あとは想像どおりである。人間の魂を奪い続け、地獄の使者オークと呼ばれるようになった。
そしていつの間にか、ケイタとコウトクを復活させ、いまだに2つの世界で神として君臨している龍神とCHIKARAを倒すことが生きがいとなってしまった。

続く…

生命の泉 九話

2012年01月30日 01時09分50秒 | 僕が書いた小説
見た夢をもとに短編小説なるものに挑戦している。
これはその続きである。

2000年ほど前、ケイタとヒミコの間に生まれたコウトクは陰と光の能力を使いこなせずにいた。
悪魔の化身となったケイタからコウトクは引き離され、ヒミコに育てられた。

ケイタは自らの王国を築くため、命を削り、悪魔の釣り針を生み出した。
人の魂さえも奪えるその釣り針を悩めるものに渡せばどうなるか?
人の欲望は際限がない。数人の魂を奪った人間は欲望の塊と化し、悪魔となる。
そもそも陰を操る神であったケイタは人の心の弱さや悩みといったものに敏感であった。
人間の中で悪のエリートとなりうる二人を見つけたのはケイタにとって大きかった。
タクマとタクミである。彼らは悪魔になると、ケイタの両腕となって働き、次々に悪魔の勢力を増やしていった。

五人の神はケイタを封じ、悪魔を殲滅する方法を話しあったが、犠牲を払わずに済むやり方はなかった。

五人が最も恐れていたのはケイタの血が流れているコウトクが悪の心に支配されることだった。
ヒミコの力をも備えているコウトクが悪魔と化してしまえば、他の神でも太刀打ちできないのは明白だった。

そしてAD200年、悪魔と神逹との全面戦争が幕を開けた。
善き心をもった人々は五人の神と共に戦った。
コウトクは成人になっていたが、ケイタとの接触を恐れ、ヒミコによって牢に監禁された。
それが裏目に出た。母から信じられていないことや牢に入れられてしまったことで心が荒み始めた。
コウトクが悪魔の化身となるのは時間の問題だった。

戦いは7年続いた。もうひとつの世界が生まれ、それぞれの世界に同じ人物が存在し、異なった生活を営むことになったのはこの戦いの産物である。
そして…
五人の神とコウトク、ケイタはどうなったのだろう。
それはまた後に語ることにして、とりあえず現在の話に戻ることにする。

湖に魂が溶け始め、光を発しながら湖は生命の泉となった。
そして、今から信じられない光景を僕は目にすることになる。

リョウの肌の色が緑になり、向こうの世界の神様である龍神へと姿を変えた。

ヤスが騒ぐ。「リ…リョウが化け物になった。」

CHIKARAが言う。
「これで、二つの世界の神がそろったのう。」

湖の向けうから地鳴りがしている。すごい数の敵が近づいてきてるのは誰にでも明白だった。

龍神様が静かに言った。「ヤス、ダイキ、お前達にも実は力を授けてある。力を貸してくれ。そしてもう1人すごい助っ人が来るぞ。」

その時、雷が光った。同時に人影が現れた。
僕は目を疑った。「オーナー…。」

龍神が笑いながら言った。「生命の泉でぼろもうけしたやつが助っ人だよ。すっかり人間になりきってたね。ハハハ。」

CHIKARAが手を振った。「久々じゃの。雷神さん。名前で呼んだほうがいいかな?シマルさん。」

続く…

生命の泉 八話

2012年01月24日 00時53分31秒 | 僕が書いた小説
見た夢をもとに短編小説なるものに挑戦している。
これはその続きである。

物語をもう一度整理してみる。
僕、コウトクは生命の泉のある工場で働いていた。
二度の仕組まれた遅刻のせいで落ち込んでいた。
そこを狙いすましたオークが僕に伝説の釣り針を渡した。
僕がそれを使い続ければ悪魔になるというオークの意図に反して、釣り針を持ったまま生命の泉に飛び込むという変わった行動にでた。
もうひとつの世界の自分と魂が融合し、二つの世界の存在や生命の泉の正体を聞かされた。

今日は、2000年前に、何が起きたのか語ることにする。

まだこの国は狩りや漁の生活から農耕中心の生活に変わろうとしている時だった。
当時人々は4人の神と1人の女神を崇めていた。
火を司る神をオーク、水を司る神を龍神、風を司る神をCHIKARA、雷を司る神をシマル、光を司る神をヒミコと人々は呼んでいた。

反面、この時期は人々に恐怖を与えていた悪魔が多く存在していた。悪魔達は人々から魂を次々に奪っていき、毎日、人々は死と隣り合わせだった。
悪魔の王をケイタといった。ケイタにはタクマとタクミという側近がいて、何千という悪魔を従えていた。

そもそもケイタは陰を司る神であった。ところが、人々は陰を嫌い、ケイタは崇められず、日に日に心が荒んでいった。人々に恨みさえ覚え始めた。気づいた時にはケイタは悪の化身と化してしまった。
まだケイタが神だった時、ヒミコと恋に落ち、二人の間に子供が生まれた。
名をコウトクといった。

続く…

生命の泉 七話

2012年01月17日 02時04分27秒 | 僕が書いた小説
年末から短編小説なるものにトライしている。

これはその続きである。

湖が光り始めると同時に、いろんなうめき声が聞こえ始めた。

リョウがゆっくりと語り始めた。
「釣り針を湖に投げ込む時、釣り針に閉じ込められた魂を解放する呪文を唱えたんだ。
今、光ってるのは釣り針から数えきれないほどの魂が解放されている証だよ。

向こうの世界で2000年前に一度、魂を解放したんだけど、ほんと昨日のことのようだよ。」

僕は呟く。
「生命の泉…、物に生命と意志を与える水…」

CHIKARAが静かに言った。「そう。この湖は今、たくさんの魂が溶け込んで、向こうの世界で生命の泉とお前達が呼ぶものへと変わったところじゃ。

向こうの世界では物に命を与える水など言って喜んでいるが、魂が成仏できずに、泉の中で生きておるだけじゃ。

それが生命の泉の実体だ。泉の水を物とうまく融合させると、物があたかも命を得たかのように意志を持ち動きだすんじゃ。

もうわかっただろうが、一度抜かれた魂は過去の記憶が薄れてしまっている。

机なんかと融合すると、すっかり昔の記憶は消え、自分は机として生まれたと思い込むんじゃ。
もともと人間だったというのに…
悲しい話じゃ。

そのことを知って、巨額の富を手に入れたのが、向こうでお前が勤めていた会社のオーナーのじゃよ。

そしてコウトク、お前は何もかもが仕組まれたのじゃ。

わしも龍神もそのことを知りながら、お前を利用してしまう結果になってしもうた。
ゆっくり説明したいが、そろそろ湖の光を感知したやつらがやってくるぞい。
手強いぞ。」

僕はオーナーの顔を思い出していた。まさか彼が…

そして坂本健さんや林和貴くんがオークの手先で、僕の心に隙間を作るため、わざと僕を遅刻させたという事実をこの時は知るよしもなかった。

続く…

生命の泉 六話

2012年01月10日 00時01分55秒 | 僕が書いた小説
年末から短編小説なるものにトライしている。
これはその続きである。


みんなが湖の前に集まった。ケイタがまず口を開いた。
「箱の中身を教えろよ。」
僕はどうしてよいかわからないまま黙っていると、リョウが再び語り始めた。

「どうやら全てを語る時がきたようだ。

実は…、世界は2つあるんだ。今いる世界とお前たちの知らない世界がもう1つある。
そして向こうの世界でもお前たちは存在している。
無論、お前たちが向こうで何をしているかはお前たちは知るよしもない。

コウトクは別だがね。」

ヤスが笑う。「リョウ、お前、何言ってるんだ。わけわかめなやつだ。」

ダイキは何かを感じたらしく語り始める。
「俺、よく夢を見て、いつも塾で勉強してるんだ。何か変な夢で、コウトクが俺たちに英語教えてて、何故か神様のCHIKARAも生徒なんだ。でもリョウはいないよな。」

ケイタが笑い出す。
「ハーハ、ハーハ、ダイキも意味分からん。ハーハ、CHIKARAが生徒って。ハーハ。」

リョウが再び口を開いた。
「いいか、騙されたと思って黙って聞け。
実は俺はこっちの世界ではただのリョウだが、向こうの世界では龍神だ。
こっちの世界の神様は、皆が知っているようにCHIKARAだが、向こうの世界ではお前たちの友達だ。そしてコウトクには申し訳…」

リョウが語っているとき、ヤスが叫んだ。
「ウオー、神様、神様。」

CHIKARが空から降りてきた。
CHIKARAはリョウのほうを見て、小さくうなづいて、口を開いた。
「やあ、みんな、神様じゃ。みんなとは向こうじゃ楽しくやっとるぞ。そしてケイタ、お前がオークからもらった伝説の釣り針は盗ませてもらったぞ。お前の部屋にある釣り針は偽物じゃ。本物はたった今、この湖に沈んでいったよ。」

ケイタが怒りを露にした。
「神様でも、盗みはダメでしょう。
あれ、だご大切にしてたのに。意味分からんし。
おい返せよ。は、沈んで行った。は、意味分からんし。」

リョウが言った。
「ケイタ、神様は、お前が悪魔になるのを救ってくれたんだぞ。」

僕はまだ疑問が解けない。頭がぐるぐると回転し始める。
「ケイタはオークから釣り針を手に入れた。多分、僕のように落ち込んでいた心の隙を狙って、オークがケイタに渡したのだろう。
その釣り針はCHIKARAの手に渡った。
そして何らかの形でまたオークの手に戻った。
釣り針は向こうの世界でオークから僕の手に移る。
僕は生命の泉を通して、こっちの世界とつながった。釣り針もその時、こっちの世界に戻ったきた。
そして龍神様がこの湖にそれを投げ入れた。
そもそも、生命の泉とは?オークの真意は?」

考えていると、突然、湖が光始めた。

CHIKARAはリョウのほうを見て言った。
「そろそろ、始まりそうだ。」

続く…。