ブログ 古代からの暗号

「万葉集」秋の七草に隠された日本のルーツを辿る

字母歌に仕組まれた暗号 「いろは」7

2009-12-06 09:49:40 | 日本文化・文学・歴史
字母歌の「いろは歌」がいつ誰によって作られたのか明解な答えはない。
一説では、真言宗の開祖である弘法大師空海(774年~835年)の作と広く流布され
ており、鎌倉末期に成立した『釈日本紀』(卜部兼方)にも「いろは歌」の作者は
空海という説が載っている。しかし「いろは歌」は平安中期におこり、鎌倉時代に
かけて流行した七五調四句の今様形式であることから、その成立を弘法大師の頃ま
で遡るのは無理であろうという見方が現在の定説となっている。

しかし、「いろは歌」を<暗号歌>という視点で捉えると、空海と「いろは歌」と
が結びつく接点の存在に気がついた。
このブログのテーマである「古代からの暗号」の源は、万葉集の山上憶良詠<秋の
七草>であるが、この暗号を後の世に伝えるために、また様々な暗号の仕掛けが編
み出されたことを述べてきたが、テーマは常に真実の歴史を伝えたいという意思であった。

暗号成立の時期は始めが山上憶良(660年~733年)であるが、支援者である大伴家
持(718年~785年)より前に伏見稲荷縁起(708年~715年)が成立している訳で、
「倭国」から「日本」(何世紀かにわたる天つ神側の征服終了)へと国名変更した
際の、国つ神の末裔たちの内に秘めた怒りが<伏見稲荷縁起>そして<伏見稲荷神
符>を残す動機となったと思われる。そして怒りの矛先が山城の秦氏であった。

家持が亡くなった頃、空海はまだ11歳なので二人の接点は考えられないが、家持の
次の世代の暗号伝承者を空海が果たしている形跡がある。
伏見稲荷大社の本来の縁起譚は『山城国風土記』逸文の「秦氏の祖先が富に奢り、
餅を的として矢を射たところ、餅は白鳥に化して飛び去り、山の峰に留まった。
この社を稲荷と呼ぶ謂れである。ところがその子孫は、前の行為の非を悔い、その
社の木を根こじて家に植え斎き祀った。今でも、その木を植えて、枯れるとその家
に福がなく、これが根づくと福があるという。「木を抜き植えた」という話は、稲
荷社のその後に「験(しるし)の杉」と呼ばれる習俗が生じ、人々は稲荷社の杉を
根こじて持ち帰り、家に植えて福を願った」という内容であるが、餅や白鳥や杉な
どで比喩された奥義を後の世の人には理解出来なかったために、本来の稲荷神社の
祭祀は秦氏が倒した出雲の神の祟りを恐れて斎祀ったはずが、いつのまにか秦氏の
氏神とされ、白(新羅)を被く神を祀るお塚信仰の場に変わってしまった。

しかし伝承の世界では稲荷縁起の本来の祀るべき神は<出雲の大国主命>と認識さ
れていたと思われ、それが仏家である東寺系の僧によって稲荷の諸縁起が誕生する
 これらは秦氏の伝承とは全く相容れない内容なので、後世まで対立・抗争のもと
となったらしい。

東寺系の諸縁起とは、鎌倉中期または末期に成立したといわれる『稲荷記』や室町
時代後期ごろの成立といわれる『稲荷大明神縁起』、あるいは、こうした伝承を基
底とした『二十二社本縁』などにみえる説話である。

これらによれば、「空海=弘法大師が、前世、天竺において、釈迦の説法の会座で
稲荷明神と会い、共に東土に生まれ変わって仏法を広めようと約したが、後に大師
が紀州田辺の宿で異相の老翁に会い、その翁が前世で契った稲荷明神であることを
覚った。そこで鎮護国家のために建てた東寺の守護神となるように要請した。
その後、その翁が、稲を担い、椙(杉)の葉を提げて、二人の女人を具し、また二
童子を連れて東寺の南門を訪れた。空海は喜んで、中門の下でこれに戒を授け、明
神と語り、人々もこれに飯を供え、菓を献じた。」

古来、この空海と稲荷明神の出会いは「稲荷契約」と称され、『弘法大師行状記』
や『高野大師行状絵』にその場面が繰り返し描かれるようになる。
そして<稲を担った翁>として登場する稲荷明神の姿が、中世に描かれた「稲荷
曼荼羅」や「熊野曼荼羅」(岩崎小弥太本・聖護院本・根津美術館本など)によっ
て伝えられたことは前に述べた。稲荷神を出雲と結び付ける重要な証となったので
ある。

字母歌「いろは」「あめつち」「たゐに」のいずれにも<比喩絵>として<伏見稲
荷神符>を注目させる意図がかくされている。「いろは歌」の作者が弘法大師空海
とされたのは、伏見稲荷と空海とのつながりの深さが意識されていた為であろう。

















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