ブログ 古代からの暗号

「万葉集」秋の七草に隠された日本のルーツを辿る

謎解き詠花鳥和歌 残菊と白鳥 25 悪態(悪口)祭り

2016-01-11 11:45:18 | 日本文化・文学・歴史
新年おめでとうございます。



青空が清々しくて温かなお正月でしたが、最近の世界的政情不安の中で心の奥
底には予測のつかない天災や人災がいつ起こるやも知れぬという不安を感じて
いるせいか、昔みた『猿の惑星』という映画のラストシーン(猿の女性考古学
者が瓦礫の中に発見したのは無惨に横たわる自由の女神像の一部でした。つま
り未来の地球の姿と気づかされるのです。)を思い浮かべてしまいました。

そのように気分が落ち込んでいる時に元気をもらったのはNHKBS放送『山中伸弥
教授が語るIPS細胞の今』。肝臓や心臓や目の難病、パーキンソン病などの治療
、薬の開発への道がIPS細胞を応用して開けつつある事を具体的な映像を使い山
中教授が紹介する番組でした。多数の研究者または研究グループがそれぞれ斬新
な発想を用いて開発したもの、心筋シート、パーキンソン病の原因というドーパ
ミン注入のシステム、肝臓の正常な細胞を立体的にしかも微小に作成する発想、
軟骨が作れない難病を救えそうな薬開発など、2~3年以内に臨床応用したいと
の意欲に満ちた研究ばかりで世界中の患者に光明が与えられそうです。見逃した
方は再放送があったらぜひご覧ください。

また正月に行われる行事を伝える映像の中に足利の「大岩毘沙門天(日本三毘沙
門天)の悪態(悪口・あくたい)祭り」がありました。現在は常日頃のうっ憤を
大声で怒鳴って晴らす年頭行事で「学校の宿題多すぎるよ~」と叫ぶ小学生の男
の子の姿に思わず笑ってしまいました。

最近はあまり言わなくなりましたが、昔は喧嘩や気に入らない相手に文句を言い
たてる事を「悪態をつく」と言っていた事を思い出しました。この映像を見て
気づいたのですが「悪態祭り」と思われるものを私は知らずに紹介していました。

秦氏の氏寺という京都の広隆寺の「牛まつり」です。牛の背に乗って現われる摩
多羅神が祖師堂の前で祭文を読みあげると参拝者が悪口雑言を浴びせかける場面
は悪態まつりそのものでしょう。

また出雲の「亀大夫神事」の中にも見られます。
島根県の出雲大社では10月15日新嘗祭を行うにあたって国造が火燧臼、火燧杵を
熊野神社から借り受ける時に長さ1メートルもある長方形の餅を持参するがそれ
を受け取る熊野神社の亀大夫という社人がこの餅の出来栄えについて必ず口やか
ましくいろいろ文句を言い立てるという。(亀大夫神事)
これも一種の悪態祭りだと出雲大社の82代国造・千家尊統氏が著書で述べていま
す。

他にもないか検索しますと日本の各地にありました。

*島根県安来市清水寺 「清水の喧嘩祭」と称され節分の夜参詣人同士が悪口を
            言い合い、勝てばその年豊作になるという。
*京都・祇園の八坂神社 「白朮祭(おけらさい)」後述
*茨城県笠間市岩間・愛宕神社 「悪態祭」
*愛知県北設楽郡の花祭り・長野県下伊那郡の遠山の霜月祭(どちらも国の重要
             無形文化財)
             花神楽などの演者に対して見物人から悪口が飛ばさ
             れる。
*栃木県足利の大岩毘沙門天 「悪態祭」前述
*静岡県由比町・豊積神社と浅間神社
             豊積神社の祭礼の時に浅間神社の祠官が参ると豊積
             側では御膳を出すが、浅間側は料理がまずい口に合
             わないと悪口に及び豊積の神主がおわびをいっても
             聞き入れてもらえず逃げ出して祭りが終わるという。
             (亀大夫神事と同工異曲らしい)

現在は日中に行われる所もありますが、本来は年越しの夜や節分の夜の行事であ
りました。
井原西鶴の『世間胸算用』巻四「闇夜の悪口」に江戸時代の悪態祭りの様子が記
されていますので、その部分を現代語(尾崎一雄訳)で記します。

 闇の夜の悪口
  (前文略)
  都の祇園の社で大年の夜、削懸(けずりかけ)の神事というがあって、諸人
 これに詣でる。神前の燈を暗くして互いに人顔の見えぬとき、参詣の老若男女
 左右に立ち分かれ、様々な悪口の言いあいをし、ずいぶんと腹かかえることで
 ある。
  おのれはな、三ヵ日のうちに餅が喉につまって、鳥部野へ葬礼するわい。
  おのれはまた人売りの証人をしてな、同罪に粟田口へ馬に乗って行くわいや
  い。おのれが女房はな、元日に気がくるって子どもを井戸へなげこむぞ。
  おのれはな、火の車で連れにきて、地獄の鬼の香の物になりおるわい。
  おのれがおやじは町の番太をしたやつだ。おのれの嬶(かか)は、寺の大黒
  のはてだ。おのれの弟は、詐欺師の挟箱持ちだ。おのれの叔母は、子おろし
  屋をしおるわい。おのれが姉は、ゆもじ(腰巻)なしで味噌買いにいって道
  でころぶわい。
 なにしろやかましく、なんのかの取りまぜて言うことはつきない。
  (後文略)

この祇園社の削懸神事を現在は「白朮祭(おけらさい)」と呼んでいます。

一般に悪態祭りはその年の吉凶を占う年占と考えられていますが、
 「亀大夫神事」は出雲大社国造対熊野大社の亀太夫、
 広隆寺の「牛祭り」は摩多羅神対民衆、
 笠間の「悪態祭」は愛宕神社の天狗対民衆(笠間は日本三大稲荷である笠間稲
 荷神社のある出雲系の地域と思われます。)
 祇園社は新羅や高句麗の渡来系対削懸けの民俗がある古志の蝦夷系
など、旧住民(古くから居住していた祖先神)と新来の住民(渡来系や他の土地
から移住してきた者の祖先神)の軋轢の記憶から生じた祭りの形態のように思わ
れます。新旧の列島住民は殺し合うより、共存の道を選びときどきガス抜きに悪
態をついていたのかもしれませんね。
このような風習は中近東から中央アジアによくある風習のようです。

掲載の富士山の写真は、元日に自宅から4~5分歩いた所から見える富士の姿と
南側の三島市街から駿河湾方面を写したものです。午後になると駿河湾が光って
青春時代に読んだ『光る海』を思いだします。梅の花も咲き始めました。
今年は認知症にならないようにカメラ持参で散歩しようと思います。いろいろ絶
景をお見せ出来たらうれしいです。今年もブログを訪問して下さいますように!
                              草野 俊子                                        

             





















コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 謎解き詠花鳥和歌 残菊と白... | トップ | 謎解き詠花鳥和歌 残菊と白... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

日本文化・文学・歴史」カテゴリの最新記事