昨日読んだ段落だけを前後から切り離して読むと、システムにおける個体発生を実体概念の構成に先立つ出来事として、それに存在論的優位を置くことを結論としているようにも読める。しかし、そうしてしまうと、〈関係〉の有している生産性に富んだ性格をすっかり見損なってしまうことにもなるとシモンドンは私たちに注意を促す。関係の豊穣性を例証するために、ここでも結晶体が例として挙げられている。
Cependant, conclure de ces remarques à un primat ontologique de l’individu, ce serait perdre de vue tout le caractère de fécondité de la relation. L’individu physique qu’est le cristal est un être à structure périodique, qui résulte d’une genèse en laquelle se sont rencontrées dans une relation de compatibilité une condition structurale et une condition hylémorphique, contenant matière et énergie. Or, pour que l’énergie ait pu être asservie par une structure, il fallait qu’elle fût donnée sous forme potentielle, c’est-à-dire répandue dans un milieu primitivement non polarisé, se comportant comme un continu. La genèse de l’individu exige le discontinu du germe structural et le continu fonctionnel du milieu amorphe préalable (p. 97).
シモンドンが結晶体という物理的個体に見ているのは、ある生成過程の結果として生まれた周期的な構造をもった存在である。この生成過程において、構造的条件と質料形相的条件とが両立可能な関係に入る。この後者の条件の中に物質とエネルギーが含まれている。ところが、エネルギーがある構造によって統御されるためには、エネルギーが潜在的な形で与えられていなければならない。つまり、原初的には極性をもっていなかった環境に広がっていたエネルギーがある連続的なものとして働くようにならなければならない。個体の生成は、構造的な萌芽の非連続性と先在する不定形な環境の機能的な連続性とを要求する。
ここだけ読むと、昨日読んだ箇所で主張されていた「非連続が連続に先立つ」というテーゼと矛盾しているように見える。しかし、上掲の箇所を次のように理解すれば、前段落と整合的に読むことができるだろう。
個体の生成は、ある一定の構造の成立を意味し、その構造が一定の機能をもつためには、その構造が機能を実行するためのエネルギーを潜在的なものとして保持することができなくてはならない。他のものとは区別されうる構造を備えることが非連続性であるとすれば、この非連続的なものである構造が成立し、それが機能してはじめて、その構造によって統御されるエネルギーが連続的なものとして保持されうるようになる。この意味で、非連続性は連続性に先立つと言うことができる。
しかし、非連続か連続かというような二者択一がここでの問題ではないのはもちろんのこと、単に前者の後者に対する存在論的先行性と優位性が最終的な結論なのでもなく、両者間の関係こそ、個体の多様性と〈個体-環境〉関係の多次元性と可変性とをもたらす条件であるということがここでの最も重要なテーゼであろう。