内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

思考とは、歴史的現実の中での自己正当化過程である ― ジルベール・シモンドンを読む(64)

2016-05-08 03:58:51 | 哲学

 シモンドンの個体化論は、何かすでに出来上がっている考え方を現象に当てはめてその現象を説明するとか、その現象をその考え方の例証とするとかいうのとはまったく違った思考が展開されている現場そのものである。
 複数の異なった領域あるいは次元に属している具体的な例をいかに整合的かつ根本的に掌握するかという思考作業を通じて、その思考そのものが形を成していく。この意味で、思考作用とは、思考とその対象との間の外的関係と思考の構成諸要素間の内的関係という二重の関係の類比的形成過程とその安定化にほかならない。

[...] mais nous croyons précisément que toute pensée, dans la mesure précisément où elle est réelle, est une relation, c’est-à-dire comporte un aspect historique dans sa genèse. Une pensée réelle est auto-justificative mais non justifiée avant d’être structurée : elle comporte une individuation et est individuée, possédant son propre degré de stabilité. Pour qu’une pensée existe, il ne faut pas seulement une condition logique mais aussi un postulat relationnel qui lui permet d’accomplir sa genèse (p. 84).

 思考はそれ自身の内にその個性的な生成の歴史的過程を内包しており、思考が正当化されるのは、何らかの外的な根拠によってではなく、単なる論理的な内的整合性によってでもなく、現実の中でそれ自身が構造化され安定性を獲得することそのことによってである。この意味で、現実的な思考は、現実の歴史の中でそれ自身を構造化させて安定性を獲得することによる「自己正当化」(« autojustification »)の現実的過程そのものにほかならない。