内的自己対話-川の畔のささめごと

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物理化学的なものと生命的なものとの間 ― ジルベール・シモンドンを読む(74)

2016-05-18 13:36:58 | 哲学

 ILFI第一部「物質的個体化」で挙げられている物理化学的現象の諸例をよく理解するには、それ相当の物理化学の知識が必要とされる。残念ながら、私にはそのような知識が欠けている。したがって、それらの部分については、ただ一通り直訳することさえ難しい。ところが、それらの部分がよく理解できなければ、シモンドンの個体化論の広がりと奥行きを十分には捉えることできないだろうと思う。
 そのような私自身の理解力の限界を認めた上で、第一部の最後の四つの段落を読んで、物理レベルの個体化と生命レベルの個体化とをシモンドンがどのようにリンクさせようとしているのか、その理解に努めよう。

Il est habituel de voir dans les processus vitaux une complexité plus grande que dans les processus non vitaux, physico-chimiques. Pourtant, pour être fidèle, même dans les conjectures les plus hypothétiques, à l’intention qui anime cette recherche, nous supposerions que l’individuation vitale ne vient pas après l’individuation physico-chimique, mais pendant cette individuation, avant son achèvement, en la suspendant au moment où elle n’a pas atteint son équilibre stable, et en la rendant capable de s’étendre et de se propager avant l’itération de la structure parfaite capable seulement de se répéter, ce qui conserverait dans l’individu vivant quelque chose de la tension préindividuelle, de la communication active, sous forme de résonance interne, entre les ordres extrêmes de grandeur (p. 152).

 習慣的には、非生命的な物理化学的過程によりも生命過程により大きな複雑さを認める。しかし、最も仮説的な推量においても、個体化理論を動機づけている意図に忠実であるためには、次のように想定することになるであろう。
 生命的個体化は、物理化学的個体化の「後」にやってくるのではない。物理化学的個体化過程において、その過程が完遂される前に、個体化が安定的な均衡状態に到達していないときに、生命的個体化はそれを中断しにやってくる。そして、物理化学的個体化がだだ繰り返されうるだけの完全な構造の反復になる前に、それが延長・拡張されることを可能にする。このことが前個体化的緊張に属する何か、積極的コミュニケーションに属する何かを生きている個体の中に保存する。その保存は、大きさの秩序の極大・極小間の内的共鳴という形を取る。