内的自己対話-川の畔のささめごと

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物質と生命という二項対立図式を超えて ― ジルベール・シモンドンを読む(84)

2016-05-31 05:41:26 | 哲学

 昨日の記事で読んだ箇所だけを見ると、そこに示されている学説は一種の唯物論だとも誤解されかねないところもあるが、もちろんシモンドンはそれをはっきりと否定する。なぜなら、その学説は、物理的現実から高度な生物的諸形態に至るまでの連鎖を想定しているのであって、そこでは物質と生命との間の固定的な〈類-種〉関係はまったく排除されているからである。
 とはいうものの、物理から生物までカヴァーする一般存在生成論を目指す個体化論が完全で充足的なものであるためには、それは唯物論とは違うというだけでは不十分であることも明らかである。なぜなら、私たちの一般的思考には、〈類-種-個〉という論理的階層に存在全体を斉一的に秩序づけようとする傾向があることは事実であり、この傾向がなぜ、どのような意味で帰納的に生まれて来るのか説明できなくてはならないからである。
 現実的思考の中である条件下に実行される〈類-種-個〉という存在論的階層の区別は、生命を物質に還元する唯物論的図式や物質か生命かという二項対立図式を超えたより広大な現実の中に位置づけられなければならない。このより広大な現実においてはじめて、諸種間の連続性と非連続性とをともに説明しうるからである。この非連続性の方は、物理学において現れる量子的性格と関係づけられうるとシモンドンは見ている。