内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

《 information 》をどう訳すか ― ジルベール・シモンドンを読む(52)

2016-04-12 04:51:37 | 哲学

 今日から読む段落では、話題が « forme » から « information » へと移行します。
 まず、最初の五行を読んでみましょう。

La notion de forme doit être remplacée par celle d’information, qui suppose l’existence d’un système en état d’équilibre métastable pouvant s’individuer ; l’information, à la différence de la forme, n’est jamais un terme unique, mais la signification qui surgit d’une disparation. La notion ancienne de forme, telle que la livre le schéma hylémorphique, est trop indépendante de toute notion de système et de métastabilité.

形相概念は、« information » 概念に取って替わられなければならない。後者は、準安定的で個体化可能な均衡状態にあるシステムの存在を前提としている。« information » は、形相とは違って、唯一つの項ではけっしてなく、ある一つの乖離(離隔・散逸)から発生する意味である。質料形相論的図式が提示するような古代からの形相概念は、システムや準安定性という考え方一切からあまりにも切り離され、独立してしまっている。

 さて、この文脈での « information » をどう訳したらいいでしょうか。
 3月28日の記事から四日間に渡って読んだ段落に即してこの概念を検討したときには、今日一般的に使われる意味での「情報」概念をシモンドンの個体化論にそのまま適用すると大変な誤解に陥ってしまう危険に注意を促した上で、意図的に「情報」を訳語として採用しました。情報生成をその存在論的起源から根本的に考え直す一つの途を示すために敢えてそうしたのでした。
 しかし、ここはそうはいきません。なぜなら、そうしてしまうと、シモンドンの個体化論をそれこそ貧困化してしまいかねないからです。
 より適切な訳語を探すために、今日明日と、私自身の « information » 概念の理解を提示します。
 今日のところは、上掲の引用からだけでもわかる次の一点の確認にとどめます。
 « information » は、一つの信号あるいはメッセージという確定された単位のことではない。 それだけで独立に取り扱えるような確定的なものとして伝達・理解されうる内容のことでもない。シモンドンにおける « information » は、前個体化的存在において乖離・離隔・散逸によって発生した動的関係を形成する項同士の「間」に生まれる「事」に外ならない。