Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

モリヌークス問題

2013-10-04 01:11:56 | 文学
ロシア文学とモリヌークス問題(簡単に言うと、生来目の見えない人が成人して突然目が見えるようになったとき、球と立方体とを識別できるか、という思考実験のこと)とを関連させている人っているかなあと検索してみたら、いらっしゃいましたね。さすが。しかもマレーヴィチらの絵と関連させている。やっぱりそうだよね。視覚と触覚の関係は、そもそもモリヌークス問題に内在しているし、バークリ以来の伝統的な議論。あるいは、ランボーらのいわゆる共感覚の問題としても捉えられる。

ただ、多くの論者が指摘するように、バークリの「触覚」というのはしばしば「身体感覚」と同義であって、その意味では視覚と触覚との共感覚の問題としてモリヌークス問題を捉えるよりも、むしろメルロ=ポンティ的な文脈に移す、すなわち身体の中に目を位置づける方が適切である気もしますね。それは観察者の身体性を回復することであり、その人の視覚の個性や歴史を取り戻すことでもあります。そうすると、抽象的な、脱人間的な視覚を前提にしていると見落としてしまう事柄が、まざまざと見えてきたりするのです。

広くモダニズム芸術を扱う人で、モリヌークス問題に関心がない人がいたとしたら、そりゃあ「もぐり」だと言って憚らないぼくですが、しかしぼくの場合、モリヌークス問題には関心あるけどモダニズム芸術にはそんな興味がなかったりする。