ごっとさんのブログ

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ペットからうつる頭の水虫

2016-06-27 10:24:03 | 健康・医療
最近ペットから「水虫菌」がうつって、頭の毛が抜けるという症例が増えているという記事を読みました。

確かに犬や猫というのは、微生物の巣窟のようなものですので、水虫菌がいても不思議ではないのですが、あまり聞かない話でした。水虫というと足の指にできるものという感じがありますが、実際は手足の爪などかなり全身に感染するもののようです。

特に頭の水虫は昔からあり、「シラクモ」などという呼び名があったようですが、これはずいぶん昔の話で、衛生状態が良くなってからは消えてしまった病気だと思っていました。こういった疾病には抗真菌剤という薬で治療するのですが、現在はかなり薬が良くなってきたので、比較的早く治りそれほど心配するようなものではなくなっています。

しかしこの抗真菌剤というのは非常に難しい薬剤でした。ついでですので、少し微生物について書いてみます。微生物というのは大きく分けて、細菌(バクテリア)、酵母(イースト)、真菌(糸状菌、カビ)に分類されます。簡単に言えばこの順番で進化してきたわけです。

病原菌といわれるのはほとんどが細菌で、大腸菌や溶連菌、ブドウ球菌など非常に多数が存在しています。私はずっとこの細菌をやっつける薬を探していたのですが、細菌と酵母の間に大きな差がありました。細菌は原核生物という分類で、酵母、真菌は真核生物となり、いわばより人間に近付いているのです。

私がいろいろな抗菌剤をつくると、1次アッセイとして8種類ぐらいの病原菌を培養し、これを殺すかどうかを調べます。この中にキャンジダという酵母を入れていました。キャンジダは酵母でもいろいろな感染症の原因となる菌ですが、これを殺す物質を見つけようというわけではありません。

たとえ細菌の病原菌によく作用する薬剤であっても、このキャンジダまで殺してしまうと、動物実験の段階で副作用が出る可能性が高くなるのです。つまり病原菌だけを殺し、キャンジダには全く作用しない薬剤が好ましい性質といえるわけです。

さて今回の水虫菌は、真菌類いわゆるカビですので、酵母よりもっと高等動物に近くなっているといえます。ですから真菌類だけに作用し、高等動物には無害のものというのはかなり高い壁が存在していたのです。普通に考えると、カビとヒトは全く違った生物のような気がしますが、生命の根源的な部分は類似点が多いのです。

ペットからうつる「頭皮白癬」という頭の水虫の話からそれてしまいましたが、現在の抗真菌薬開発までには、本当に大変な苦労があったようです。その結果今使われている抗真菌薬は、ほとんど副作用のない優れたものになっています。

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