2月15日
この日は我が社FMわっかないの50W送信機入れ替えの日
FMわっかないでは1月17日、全国のコミニュティー放送局で初めて
空中線電力=出力20Wから50Wへの変更を許可されました
コミニュティー放送局は法律で最大出力を20Wまでと決められており
地震による臨時災害放送局で増力を認められた以外では例外がなく全国初の認可となりました
この本免許状の交付のため、約1カ月前からこの日を目途に計画を立ててきたわけです
ところが何日か前から2月15日は暴風雪の予報でした
子供は風の子、風の街わっかないでは多少の風雪にはへこたれません
計画は着々と進んでいくわけです
そして当日・・・
やはり発達した低気圧の影響で暴風雪の予報
朝からフェリーは欠航し、抜海天塩線も通行止め
しかし、どうしてもこの日にやらなければいけない事情もあり決行
朝8時に稚内公園環状線行のゲートに集合しました
当然、冬期間は通行止めの道路なので上へ行く手段はスノーモービルのみ
スノーモービルに重い機材を乗せて、4人を1人ずつピストン輸送で百年記念塔まで運ぶ
8時半には輸送完了し準備に取り掛かり、機材を全てセッティングし
万全の態勢で10時から試験電波発射、11時から本運用開始という段取りでした
ところがスノーモービルの第一陣が出発して間もなくスタックしてしまい
下で待機していた3人がそこまで救援に行くことに
そこは吹き溜まりで2m以上の積雪があり、1mもの深さで埋まってしまっていたのです
男4人で何とか掘り起し、ドライバーは別ルートを捜しに行きましたが
そこでも走行不能になってしまい断念
想定外の雪山登山になってしまいました
とにかく早く行って昨秋に運んである機材を入れ替えて起動しなければいけないということで
鍵を持っている館長とNECの技術者2人が先発
残された僕と電波管理者の2人は、モービルに乗せて運ぶはずだった機材を手持ちで後発
僕は背中に8kgほどのリュックを背負い、片手に20kg近いハードケースを持って登りました
ところが機材の重さも加わり、深い雪に足を取られ中々進めません
その内、腕と肩が捥げそうになるほどの負担がかかりはじめ
数歩歩いては停止という事を繰り返しました
電波管理者の方と電柱一本を目途に交代で持とうということでしたが
そのわずか数mの電柱の間隔が何と遠いことか
そうこうしている間にエコ足湯がある「稚内公園新エネルギーサテライト」付近に到着
そこからが正に地獄でした
林など風を遮るものが何もないのと、山からの吹きおろしの向かい風に加え
風力発電の巨大風車が「ゴーン、ゴーン」と低い唸りをあげているのが何とも不気味でした
通常は道路があるはずの場所はガードレールがかろうじて見えるくらい
それを目印にまたハードケースを交代で持ちながら登りました
重い機材を持つ肩と腕はとうに限界を越えていて
猛吹雪の中でうっすらと見える百年記念塔は一向に近づきません
日頃の運動不足を呪いましたが、そういう問題でもないレベルかも知れません
何とか百年記念塔が見上げるあたりに着いたとき
道路のガードレールは全く見えなくなり
どこが道路でどこが坂なのかの境目もわからなくなりました
何ポイントがアタックしては、腰まで埋まる深雪に阻まれるという事を繰り返し
まさに紆余曲折しながら登っていきました
一番ハードな箇所をようやくクリアした先にようやく百年記念塔の入り口が見えました
先発隊はシャッターが凍って開けることが出来ず30分くらい手間取ったそうです
そんな過酷な状況でようやく中に入れたものの
長期間閉館している館内は外と変わらず寒いわけですが
風雪がないだけで天国に感じられました
ただ、かなりフル装備をして行ったので寒いという感覚はなく
身体からは風呂上りのように湯気が立ち上っていました
とにかく腕と肩、足腰がボロボロ
泣きたくなるほど心も折れていたのでグッタリだったことだけは確かです
気づけば出発から一時間半が経っていました
それゆえに時間は待ってくれません
この時点で一時間ほど作業が遅れているので、急ピッチで動かなければいけません
氷のように冷たくなった機材を体温で温め、カチカチになったコードを手でさすり
かじかんで思うように動かない指でセッティングをする
業者の方も本当に大変だったと思います
こうした想定外の過酷な状況にもかかわらず、何とか午前10時までに機材入れ替えは完了
すぐに試験電波発射となりましたが、計器類の機械が温まりきらずいたため
各種テストの中で正常な値を示すまでに多少時間がかかったせいで認可も遅れ
本放送の開始が10分遅れの11時10分からとなりました
でも、中止や寒さによる機材トラブルも考えられる中で
この程度の遅れで済んだのは良かったと言うほかないでしょう
僕は11時半過ぎにメインスタジオと中継をつなぎ、ここまでの経緯をリポートし
以降、1時間程度、その他確認作業をして12時過ぎに下山開始となりました
その間にも交通機関マヒ等の情報が次々と入っていたのと
下りとはいえまた同じ機材を持って猛吹雪の中を歩く事を考えると
出発前から心が折れていましたが、行くより仕方ありません
今度は4人いたので負担も4分の1になったことが幸いでした
すると下で待機のスタッフ2人が途中までソリを持って上がってきてくれてました
タロとジロかと思いました(笑)
これは有り難い!
機材をソリに載せてロープで縛り付けて固定し
横転しないように3人で3方向からロープを持って歩いたのですが
それよりも自分がソリに乗って一気に下界に降りたい衝動にかられましたけどね(笑)
かくして12時45分頃、無事生還したわけです
こんな大変な悪天候の中でのミッションはまさにインポッシブルでしたが
無事、終わってみれば笑い話にして、忘れ得ぬ思い出となることでしょう
まぁ、もう二度と御免ではありますけれど・・・
ちなみに稚内地方気象台によるとこの日午前5時に宗谷管内には暴風雪、波浪警報を発令
最大瞬間風速は宗谷岬では20mを越え、声問でも17mを越えました
この猛吹雪の影響で、国道40号、238号、道道も稚内天塩線など16路線が通行止め
通行止め区間では車150台が立ち往生し、事故も相次ぎました
当然、フェリーも飛行機も欠航
JRも中川町の天塩中川駅では札幌発稚内行きの特急サロベツが立ち往生
市内路線バスも都市間バスもタクシーも運休
小中学校では臨時休校と繰り上げ集団下校
市内各スーパーなども繰り上げ閉店
一般企業ですら繰り上げ退社を決める会社が多くありました
そして、一夜明けてみると今回の風雪被害の大きさがさらに明らかに
稚内署によると16日午前にかけて稚内署管内では人身事故2件、交通事故25件発生
礼文町では町内全戸の半数にあたる1320戸が停電
稚内市内では小規模な雪崩が発生し
僕らが登っていた裏山の一部が崩れた中央地区でも、1世帯2人がホテルに避難したそうです
都市間バスも札幌便15日午前7時40分発が幌延町内に一泊
天塩中川で立ち往生していた特急サロベツは、16日未明に幌延駅に到着したものの
その先の運行を断念し列車内で夜を明かしたそうです
札幌出発から20時間も列車内に缶詰状態になったというわけです
稚内市と豊富町では吹雪で帰宅困難となった小学生や教員らが保育所等で宿泊するなど
終わってみれば、今年一番の暴風雪どころか、過去10年振り返っても記憶がないほどの被害でした
稚内公園環状線ゲート前
ここは冬期間通行止めになっています
そこで登場するのがスノーモービル
重い機材を乗せて第一陣が出発
颯爽と雪を跳ね上げてGO
「これなら折り返しすぐ来そうだね」という事で登りはじめました
天然の雪像です(この時はまだ余裕がありました)
連絡を受けて行ってみるとまさかのスタック
1m近く埋まってしまいました
ここから先は吹雪が強くなったので写真は撮れていません
こちら海抜240mの展望台ですが、真っ白で何も見えません
機材の入れ替えがはじまりました
こちらでは出力をチェック中です
無事、送信機の入れ替え完了
しっかりと50W出ています
次は他の通信電波などへの妨害がないかのチェックです
こんな風にしてお天気カメラや漁業無線に影響がないかを調べていきます
FMわっぴ~の電波も正常のようです
FMわっぴ~の送信機ラックです
こちらが新しい送信機
こちらは音声コーディック
さて外は相変わらず猛吹雪です
これが僕のフル装備姿です(笑)
入り口はあまりの強風で雪は積もらないのです
見失わないように等間隔で縦に隊列を組んで歩きます
写真で見えるより視界不良です
道なき道を雪で足を取られながらの下山
下から救援に登ってきたソリが到着しました