渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

マイク・シーゲル対ホセ・パリカ 1986年

2022年08月16日 | open

MIKE SIGEL's historic $40,000 9-ball..3 final matches

優勝賞金4万ドルがかかった
395人の選手が参加した1986年
のアメリカの大会。
(当時の日本円で674万円。
1986年の大卒初任給144,500円。
2022年の大卒初任給219,920円。
比例レート比較では現在価格で
1,025万円の優勝賞金相当)

この年1986年にアメリカと日本
で公開された映画『ハスラー2』
の最終のアトランタでの大会も、
この実際にあったメジャーカジノ
トーナメントがモデルだろう。
1千万円の優勝賞金は少なくは
ない。
この映像にある大会の司会者の声
と独特の語調は古いアメリカン
プール
ファンは覚えているのでは
なか
ろうか。
映画『ハスラー2』での最終舞台
アトランタシティのカジノで場内
紹介放送がホテルの案内TVから
流れているシーンがあったが、
あのアナウンスはフィル・ストーン
本人かと思われる。
アトランティックシティでの
アメリカのカジノギャンブルは
1976年に合法化するための国民
投票が承認された。正式に客に
開放された米国内最初の施設は、
1978 年 5 月 26 日に営業を開始し
たリゾートインターナショナル
だった。複合リゾートホテル&
エリアとして巨万の資本が投入
されている。
『ハスラー2』の最終決戦舞台が
その場所、アトランティックシティ
だった。「全米の新時代の夢」が
体現された土地だった。
アメリカでも、かつて1960年代

にはプールホールにも「ノー ギャン
ブリング アラウド」の看板が掲げ
られていた。玉屋での賭け玉は法
律違反だった。今でも合法許可を
得た場所以外でのバクチはアメリカ
でさえ御法度だ。
アメリカの場合、主として博打そ

のものが罪悪であるという感覚よ
りも、利得による納税義務違反が
大きな違法性を構成するケースが
多い。日本の競馬も同様だが。
日本でも競馬での馬券購入による

高額所得は所得課税の対象になる。
適法に納税している日本人はほぼ

いないが。完全非課税なのは宝くじ
による収入だけだ。
特定規定金額以上の所得には全て

課税され納税義務が発生する。

映画『ハスラー2』は本物のUSオー
プン・ナイン
ボールクラシックの
大会中に撮影
されていた。全米オー
プンの会場
に青い目のポール・ニ
ューマンが
いて、テクニカル・ア
ドバイザー
のマイク・シーゲルと打
ち合わせし
ていたので、それを発見
した参加
者や観客で場内がざわつい
たと
アメリカンプールの歴史記録に
ある。
また、映画『ハスラー2』は音楽
も秀逸で、エリック・クラプトン
までサントラ製作に参加していた。

この1986年の映像では、特設台の

バックに「パラダイス アイランド
リゾート アンド カジノ」の看板
が見える。リゾート地への資本投入
による集客と大規模な金員の動き。

これを創り出せないとプロスポーツ
は成立しない。スポーツをやって
暮らしていけるだけでなく、才能
とチャンスがあれば、そのスポーツ
技能で財をも成せるドリームチケッ
トがアメリカには存在する。
日本のプロシステムのように、ビリ

ヤードの登録プロから会費を年間
3桁万円搾り取るような前時代的な
カルト宗教団体やファシスト右派
たちの政治
団体や反社暴力団のよう
な上納金方式では、プロ
選手育成も
活躍もプロスポーツ興行的な成功も
日本では望める訳がない。
プロ試験合格者であり、トーナメント

選手だった優秀な人たちの多くが
プロ登録をそのうちやめる。
上納金が搾取的金額で、生活ができ
なくなる
のでプロなどやめるのだ。
そんな国に、そのプロ種目が隆盛を
みる筈もない。
日本国内でビリヤードのプロになる
という事は、生活苦を背負いこむ事
とイコールに近い。

この会場はニュージャージー州の
アトランティックシティだ。

この1986年の試合は、帝王「キャ
プテン・フック」こと
マイク・
シーゲルが絶頂期の頃の
試合だ。
そしてマイクはキューをよく切ら
せて良い玉撞きを見せている。
特にスタートラックの第1ラック。
パリカのブレイク
ノーインからの
シーゲルの裏マス
ワリが意図的だ。
ダブルレールや押し引き
(前に
手玉を出してから引いて
来させる
キュー切れショット)を見せ

会場を盛り上げる。最初から

エンターテイメント性の高い玉
撞きをあえて観客に見せている。
現代に多いただ安全に玉入れだけ
をする選手
とは完全に異なるスタ
イル。

スポーツスターが観衆を魅了する
プレーがこうしたスタイルだ。
これがプロ。
パリカも2ラック目はシーゲルが
玉を外してから、スーパーショット
を交えて取り切り返しを見せて会場
を沸かせている。
プロ対プロの名試合。
プロスポーツはこうでないといけ
ない。
観客もそのスーパープレーに感動す
るからTV中継や録画放送を注視し、
そして会場にも駆けつける。
メジャーリーグやアメフトやサッ
カーのように、スタジアムでの観戦
に近い興奮の渦がプロビリヤードの
試合でも巻き起こる。会場の員数は
スタジアムよりも小規模だが、そこ
に流れるプロスポーツの空気は同じ
だ。観客あってこその世界。
選手と観客が、ファインプレーの
現実に一つにハートが溶け合う。
それがプロスポーツである。
裏社会のバクチ勝負ではないので、
観客がいてこそのプロスポーツだ。
そして、プロは観客という人の存在
を抜きにして、換言すれば観客が
感動するプレーを抜きにしてプロ
の仕事は成立しない。
ただ、ポコポコと安全なショット
のみを繰り返して、長考して、
地味なショットを続けるだけで
「勝ち」を狙うのはプロのプレー
ではない。観客=人不在であり、
自分の利益だけ考えているからだ。
お客さん、観客、ファンあっての
プロであり、プロスポーツだ。
プロスポーツは名の知れぬ小島で
の決闘ではない。

シーゲルのキューは1ラック目の1番
撞いた時の音が非常に良音だ。
それは天井からの映像に収まっている。
キュンと透き通る高音。
これが良質なメイプルと本象牙先角
が奏でる音だ。

エフレン・レイエスは頭角を現し
始めてはいたが、まだ全米を震撼
させる程ではなかった。
全米トップはマイク・シーゲルか
ニック・バーナーか、という時代。
私が本格的にポケット・ビリヤード
を始めた年がこの1986年だった。

サイドオープンスタンスからキュー
切れ良く撞くのがマイクのスタイル。
キュー切れが良いのだが、今でいう
スタンショットぎみの撞き出しも
多い。トン突き転がし玉はやらない。



この記事についてブログを書く
« とらふくだし仕込み とらふ... | トップ | バカ »