アトリエに保存していた新聞を、時間が空いたので広げた。昨年の暮れに日経新聞『美の美』の中の一枚の絵に惹きつけられて、取っ
ておいたものだ。読み始めると、この展覧会が、京都文化博物館で開催されていると分かった。それが何と翌日が最終日だった。大分
迷った。最終日だから、混んでいるに違いない。人の背中ばかり見ても仕方ないとか。京都までの時間を制作にあてたほうがいいかも
などと。でも、意を決して京都に見に行った。よかった。とても素晴らしい展覧会だった。浅井忠に洋画を学び、日本画に転じ、独自
の生き方を貫いた画家の、約140点もの作品が展示された展覧会だった。昨年、新聞の図版で惹きつけられた『朝明の霞』を実際に観
ることができてとてもしあわせだった。画面が動いている。格調の高いゆらぎだ。帰りがけにもう一度、その絵の前に立った。こんな
ふうにぎりぎりに展覧会を観ることができたのは初めての経験だった。観る必要があったのだ、とつくづく感じた。
この作品は、長い間、所在がわからなくなっていたが、ドラマチックな成り行きで、この大規模な回顧展に出品がかなったというもの
だ。世俗にまみれない生き方を貫いた画家の作品が、一人歩きをしたのかもしれない。
絵を描く者の生き方を深く教えられた展覧会だった。捨てられない絵を描こう....と、こころに誓った。
フォト 2016