アトリエから帰る。小道に葛の蔓が伸びてきている。歩くところがどんどん狭くなっている。空に薄く、細い三日月。野の百合が、夕刻の暮れが
かったなかでほのかに白を主張している。ほっとする、この時刻が、この空気感が。アトリエでは、たいして仕事は進まない。大きな感動が毎日
あるわけでもなく、繰り返しの作業のなかで、あっという間に夕刻を迎える。気分は、何か重いまま、仕事をしまうのだが、こんな自然に救われ
る思いだ。毎日を繰り返すことが、大切だ。タフに1日をやり過ごす、と小説の一節にあった。タフとはいえないけれど、日々の家事を最低限こ
なして、ゴミの当番もきっちり忘れずにして、親を病院に送る。救われているのかもしれない。雑事のあれこれが。逃げるのはダメだけど。