1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「博士の奇妙な成熟」(斎藤環)

2010-08-07 08:18:41 | 
 「博士の奇妙な成熟」(斎藤環)読みました。精神分析医で、思春期精神医学が専門の斎藤環の評論集です。「思春期問題」「ひきこもり」「おたく」「ニート」「新しいタイプのうつ病」・・・著者が臨床で直面する課題をとおして、現代社会の姿とその変容を考察していきます。
 この手の分野の本をあまり読んでこなかった僕には、とても難しい本でした。読み終わって、もう一度読み返さねばとおもった一冊。一番心に残った文章が、著者が内海健の「分裂病の消滅」の一節を引用した下の文章であるというのも、僕の消化不良を表しているのでしょうね。
 
「内海によれば、ポストモダン状況は分裂病を消滅させると同時に、メランコリー親和型性格者にとって決定的な一撃となった。それは『大きな物語』の失墜とともに『同一化すべき方向性』が失われためである。その後に残されたのは、『そのつどの強迫』であるという。しかし、そこには強迫を方向づける統制原理が欠けているため、『相手や状況にあわせつつ、コントロールしようとするあり方において、主体は振り回され、自分を見失い、そして短期間で疲弊してしまう』という」

それからもう一つ。
「うまくいく保証などないし、そもそもそこに答えはない。このとき私の確信の背後にあるのは、答えも保証もない場所で実践を促すものこそが倫理であるという、一種の反省的判断(カント)のみである。」

うーん、これもカントか。しばらくしてから、再読。