1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「ブレーブ・ストーリー」(宮部みゆき)

2010-04-20 22:42:38 | 
 グーグルで検索していたら、3年半前に、ブログにはじめて書いた読書感想文に、たまたまヒットしました。このブログ自体は、閉鎖しているのでもう読めないのだけれど、この記事だけは残っていました。あっという間の3年半。でも、とてもなつかしい気持ちになりました。というわけで、少し恥ずかしいけれど、二度目のアップです。

 宮部みゆきの「ブレーブ・ストーリー」を読みました。「火車」や「理由」を読んだときには、ノンストップで読破してしまったけれど、「ブレーブ・ストーリー」には、それほどのおもしろさもない。みずからの「負なるもの」との対決と統合というモチーフは、「ゲド戦記」の「影との対決」の二番煎じ。思想の深さは、「ゲド戦記」を書き上げたアーシュラ・K. ル・グウィンのほうがはるかに上だな、などと思いながら物語の最後の方まで読んできて、なぜかうるうるしている自分がいました。

 宮部みゆきは、自らの運命を変えようと幻界を旅してきた主人公の少年に、次のような台詞を語らせます。「幻界の旅は、運命の塔というゴールにたどり着くことに、意味があったのではなかったと。この旅そのものが、僕にとってかけがえのないものだったと。この旅が、僕に教えてくれたんです」。それからこんな台詞も。「失ったものを嘆いて自分を苦しめるよりも、今の自分たちを大事にすることができるよ。だって世界はまだ残っているんだからさ」

 50年以上生きてきて、いまだゴールも見えないけれど、いまこうして旅をしていること自体がかけがえのないものだと思うと、明日からもがんばれるし、「失ったものを嘆くよりも」、「今の自分たちを大事に」していきたいと、あらためて思いました。