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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

戦争の実体験 初年兵(3回シリーズその2)

2013年09月15日 00時00分01秒 | 紹介

 私も一度これに引っかかったことがある。襦袢・袴下のまま自分の銃を持って、不寝番の後についていくと班長室に入れられる。部屋には古年兵が一人待っている。「貴様!自分だけ寝て、菊の御紋章のついた大事な銃を休ませないのか!」と怒鳴られ、一発ビンタを喰らう。次に「捧げ銃」をさせられる。十分経っても二十分経っても「直れ」といわない。

 その内に銃が次第に重くなってきて腕が下がる。「もっとしっかり持たんか!」と怒鳴られ、気を取り直して「捧げ銃」をしていると、古年兵が銃に謝れという。「三八歩兵銃様、たとえ太陽が西から上がろうとも、犀川が逆さに流れようとも、これからは決して決して致しません。」という言葉を10回ぐらい言わされ、30分後にやっと開放された。

 その他にもリンチのやり方にはいろいろある。自転車といって、机と机の間に立って両手を机に突っ張り、身体を宙に浮かせて自転車をこぐ真似をさせたり、蝉といって、班の太い柱によじ登らせ「ミーンミンミンミンミー」と何度も蝉の鳴き声の真似をさせられる方法もある。ビンタにしても、手の平で殴るのと、「精神鍛錬棒」という銃の薬室掃除棒で殴るのもある。樫の太い棒で堅いから殴られると頭にたんこぶが出来る。ひどいのは、上靴という編み上げ靴の上の部分を切り取った革のスリッパで殴るのだ。底に鋲がついているから、殴られた後に点々と鋲の跡がつく。以上は人が殴るのだから殴る方の手も痛い。陰湿なやり方は対抗ビンタという方法である。兵隊同士お互いが向き合って、相手を殴るのである。弱いともっと強く殴れという。自分の手も痛まないし、古年兵にとっては楽な方法であるが、兵隊はたまったものではない。

 中には殴る口実がないと、「貴様の顔が気に入らない」といって殴ったり、取れてもいないボタンをむしり取って「ボタンが取れている」といって殴る。まるでヤクザが無理難題を吹きかけるのと同じである。一時連隊でこういう私的制裁禁止という動きがあり、週番士官からきついお達しがあったが、陰では結構横行し、初年兵は毎日泣かされたものである。(次回へ続きます)