鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

戦争の実体験 集合教育その2

2013年09月19日 00時00分01秒 | 紹介

 演習だけが訓練ではなかった。歩兵だけあって、演習場への往復はいつも「駆け足」の連続であった。平坦な道ならともかく、軽機関銃を担いで坂を登る辛さは一通りではない。
 営門の急坂、一名「あごだし坂」は格別だった。いつも皆から遅れて最後尾になり、上等兵から怒鳴られ放しだった。演習も平坦な青草の練兵場なら楽だが、足腰を鍛えるために海岸の砂浜での演習ほどきついものはない。ここで匍匐でもさせられては、銃口を砂に突っ込み、大目玉を食らうことは必定。突撃といわれても、足が思うように動いてくれない。特に、冬は砂浜に吹雪が横なぐりに来て、一寸先も見えなくなる。

演習から帰れば、早速銃の手入れ、軍靴の手入れ、掃除、飯上げ、釜納め等々初年兵並みの仕事が待っている。日曜日でも外出はないし、まして面会に来る人もいない。酒保に行ってもろくなものは売っていない。侘びしく、高峯美枝子の「湖畔の宿」の拡声器から聞こえてくる歌を耳にしながら、ぼんやりと過ごすしかない。班に帰れば先任と呼ばれる。

 先任とは、先に職務に就いた人のことをいう。自分の場合は9中隊での成績が良かったからのことで、皆と同時に一等兵になったから、特に先任と呼ばれる筋はないと思っていた。それなのに、9中隊から来た同期の幹部候補生がドジをするといつも「先任来い」である。

 その同期生と並んでビンタを受けるだけである。何かというと先任・先任といわれ、単に先任という、叩かれ役に過ぎない。割に合わないことだ。そういうときに、先輩のS上等兵に頼み、三回に一回位は大目に見て貰うことが出来た。先任ということで、師団の秋季大演習に一般兵とともに参加させられ、野営の時、立哨させられ、巡察将校も守則を知らないといって、油を絞られたり、時には屍衛兵に立たされる等、同期生の知らない経験をした。
 集合教育は三月末で終わり、四月一日上等兵・甲種幹部候補生に任命され、豊橋第二予備士官学校に入校することとなった。(このシリーズ最終回です)