小杉行政書士事務所 小杉 幹のブログ

自然を愛し、単独で山を歩き廻ることを好み、たまにはロードや近くの山を走る、50代オヤジのブログです。

この世で一番強い者、それは・・・

2006年06月27日 | 仕事の話

この世で一番強い者、それは・・・

「金の無い債務者」

これは一番強い! 本当に。どうしようもなく・・・

債権者と債務者。当然、債権者の方が強そうですよね。会社が倒産して、債権者集会で債権者に吊るし上げられる債務者

執拗な借金の取立てに怯え、どうにもならなくなって自ら命を絶ってしまう債務者

どうみても債権者が強者債務者が弱者ですよね?

でも本当に強いのは、何の財産も無い上に開き直った債務者です。

仕事柄、債権回収にはよく関わります。といっても私が取り立てに廻るのではありません。そんなことをすれば、弁護士法違反で捕まってしまいます。書面を作成する方法によって関わるのです。例をあげれば、損害賠償請求書慰謝料請求書貸金返済請求書敷金返還請求書などなど。これらは全て、債権者が債務者に対して債務の履行を請求する書面です。

これらの書面を、まあ通常であれば内容証明郵便で債務者に送付します。そこで債務者が履行してくれれば何の問題もおきません。書面の送付だけで解決しました。よかったですね。

問題は、債務者が知らん顔をしている場合です。内容証明郵便自体には強制力はありませんから(この点を勘違いしている方は多いです。何か強制力のある公文書だと思っている方もいます。)、次は法的手段をとることになります。訴訟を起こすか、調停を申し立てるかあるいは支払督促を行うか、いずれにしろ法的な強制力を持つためには(要するに強制執行、差し押さえができるようになること。)、債務名義といって確定あるいは仮執行宣言付の判決や支払督促、和解調書や調停調書、強制執行認諾条項のある公正証書などが必要となります。これらの債務名義に基づいて、強制執行ができることになります。債務者の動産や不動産、現預金や給与を差し押さえて、そこから弁済を受けることができます。

では、もし債務者に差し押さえる財産が無かったら・・・

せいぜい給与の一部を差し押さえる程度しかできない結果となります。

100万円位までならこの方法でも何とかなるかもしれませんが、それ以上になるとほとんど利息程度(民法で定める民事法定利率は年5パーセント)、しか回収できないことになります。

ではこのような場合、どうすればよいでしょうか・・・

日本は法治国家であり、法を無視して取り立て行為を行うことは許されません。いわゆる自力救済は禁止されています。暴力を振るったり監禁したりすれば刑法で罰せられます。いくら債権回収のためだといっても許される行為ではありません。合法的に取り立てようとすれば、これにて終了となってしまいます。

私も業務上、相談を受けたり前述したような書面を作成する上で、内容証明の送付から始まって訴訟や支払督促など法的手段の説明、強制執行から回収までの流れを、ひととおり説明します。そこで相談者からこんな質問を受けます。

「強制執行を行うとして、相手が無職で何の財産もなかったらどうなるのですか?」

「ウーン・・・ 問題はそこなんですよ。そこまでやっても取れない場合、合法的にという前提ではこれ以上のことはちょっと難しいです・・・」

「冗談じゃないですよ! 何で債権者の私が泣き寝入りしなければいけないんですか。(あるいは、何で殴られた私の方が泣き寝入りしなければいけないんですか。などなど) そういえば先ほど合法的にと言いましたが、合法的にという前提でなければ、何かいい方法はありますか?」

「・・・それは私の口からは言えません。」

ということで、結論としては先ほど書いたように、「無いところからは取れない。」ということになってしまいます。

債務者の側からすると、もちろん支払ができるのであれば支払うべきなんですが、払いたくても払えない、お金にできる財産も無いという状態であれば、払いようが無いのですから開き直るしかない。そうなると、「どうぞ。差し押さえでも何でもして下さい。」とか、「それ以上請求すると、自己破産しますよ。」なんて。こうなると債務者は法律で保護されていることになる。債権者にとって債務名義なんて絵に書いた餅で役に立ちません。泣き寝入り。

結局、突き詰めれば最後に法律が保護しているのは債務者。これが現実です。

「金のことはどうでもいいから、ぶん殴ってやりたい!」なんて言う債権者もいますが、それを本当にやってしまったら、金は取れずに本人は犯罪者となってしまいます。

債権者側のやるせない気持ちは本当によくわかりますが・・・

「何の財産も無い上に開き直った債務者」には、勝てません!

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行政書士 小杉総合企画事務所
代 表・行政書士 小 杉  幹

埼玉県狭山市青柳1549-8

作者のホームページはこちらから

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