以下、表紙袖の紹介文より引用
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教育費・医療費・介護費・障害者福祉がタダになり、将来の不安におびえて子供を減らし、欲しいものをあきらめ、人並みの暮らしをなんとか維持しようと必死にならなくてもいいーそんな社会を実現する衝撃の方法「ベーシックサービス」について、提言者である財政学者が自身の過去や体験とともに、財源、しくみ、ベーシックインカムとのちがい、実現への道筋をひもといていく。2021年刊行の『どうせ社会は変えられないなんてだれが言った?』を大幅に加筆して新書化。
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3%から始まった消費税は現在10%まで上がった。
この消費税率のさらなる引き上げを望む国民はたぶん少ないと思う。
急速に高齢化が進む日本社会で今後増大する一方の社会保障費をどうまかなっていくのか。
このような状況でもしも消費税率を今の1.5倍にすれば国民負担分の社会保障費を無償化できるとなったら、アナタはどう判断しますか。
この本の著者である井手英策慶応大学教授は、消費税を16%にすれば社会保障費を無償化でき、20%まで上げれば財政も健全化できると説く。
これと似た政策にベーシックインカムというものがある。
最低限の社会保障を現金給付するという政策。
現在行われている医療、介護、教育などの社会保障制度を最低限まで縮小してしまう代わりに、全国民に対し最低限の社会保障に相当する部分を現金で給付するというもの。
国民全員に生活保護を行う制度と言い換えてもいいかもしれない。
誰に対しても一律のセーフティネットとなるため、貧困対策に効果があると言われており、また少子化対策、社会保障制度の簡略化、余暇の充実などの利点があるとも言われている。
しかしながらベーシックインカムはコストがかかる。
仮に全国民一律に月10万円を支給するとすればそれだけで年間140兆円になる。
月5万円なら年間70兆円だが、それではセーフティネットたり得るのかという疑問も湧く。
ベーシックサービスは基礎的な最低限の社会保障サービスのことで、それを著者は現金給付ではなく現物給付で行うことを提言する。
ベーシックインカムは現金給付なので、それほど生活に困っていない人でも受給する。
ところがベーシックサービスは現物給付なので、必要でない人は受給しない。
介護保険の自己負担がゼロになっても、必要ない人は使わない。
幼稚園が無償化されても、小学生以上の国民にとっては必要ないので受給しない。
著者は、消費税率を16%にすればベーシックサービスは無償化でき、20%まで引き上げれば財政も健全化できると試算する。
消費税を上げるというと即座に反対する人は多いが、その代わり教育費も医療費も介護費も無償になるとなれば案外賛成する人も多いのではないか。
若いうちはあまり関係ないかもしれないが、子供が成長すれば教育費は増加する。
私立大学に通うと4年間で400万円から1000万円ほどの教育費がかかる。
高齢者となれば医療費も年々増えてくる。
いよいよ在宅生活が難しくなってくると施設入所となるが、有料老人ホームに入所すれば月額20~30万円ほどかかる。
子供の教育費を負担する頃はまだ働き盛りの年代だが、施設に入所する頃には働くことができない。
十分な年金と預貯金があればまだいいが、それもなければ施設にも入れない。
それでも高齢者となるまでに働き続けることができればまだしも、30代から50代あたりで病気や事故で働けなくなってしまったらどうなるのか。
住宅ローンや子供の学費は払えなくなり一気に貧困の奈落に落ちてしまう。
そんな状況でも、もしもベーシックサービスが無償化されていれば助かることができる。
著者は働き盛りの頃に一度病気で死にかけたという。
そのときに考えたことは、ここで死んでしまえば生命保険で住宅ローンの負担はなくなり子供の学費も払えるが、もしも働くことができない状態で生き残ってしまったらどうなるのか。
住宅ローンは払えない、子供の学費も払えない、自分の医療費も払えない。
幸い命は助かり働くこともできるようになったのでその心配は杞憂に終わったが、その経験からベーシックサービスという概念を提言していくことになったという。
著者は以前、民進党代表の前原誠司議員に請われてこの政策を進めるためのブレーンとなったが、政権奪取という目的のために目指す政策の方向性が全く異なる小池百合子率いる希望の党との合流騒動により袂を分かつことになった。
このような「大きな政府」という概念はいままでは野党の専売特許だったが、今までは「小さな政府」を目指していたはずの保守自民党も、第二次安倍政権あたりからかなりこちらの方向へ舵を切ったように思える。
いま社会保障のために消費税増税をいう政党はない。
野党はこぞって消費税減税を主張する。
こんなときこそ、国民のため社会のためにあえて増税の必要性を訴え、そしてベーシックサービス無償化を掲げる政党が必要なのではないか。