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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

【気まぐれ写真館】 Bリーグ観戦(とどろきアリーナ)

2021年01月14日 | 気まぐれ写真館

崎ブレイブサンダースvs.千葉ジェッツふなばし

ブレイブサンダースのマスコットキャラクター「ロウル」

ブレイブサンダースの勝利!

MVPの14 辻 直人選手

 

 

 


時空を超えた三角関係「知ってるワイフ」

2021年01月13日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

大倉忠義主演「知ってるワイフ」

時空を超えた三角関係どこまで描く

 

もしも過去に戻って人生のやり直しが出来たら。そんな妄想をドラマ化したのが「知ってるワイフ」(フジテレビ系)だ。

剣崎元春(大倉忠義)は銀行員。結婚5年目の妻、澪(広瀬アリス)は2児の母だ。出会った時、澪は可愛い女子高生だった。しかし今は不満ばかりを口にする悪妻だ。本当は、妻の話を聞き流し、家事や育児を手伝わない夫も悪いのだが。

元春にとっての「運命の日」は大学時代の2010年4月9日だ。好きだった社長令嬢の江川沙也佳(瀧本美織)から演奏会に誘われたが、途中で澪の財布を拾ったために遅刻。それで沙也佳は遠ざかり、元春は澪とつき合うことになった。

そんな元春が、謎の男(生瀬勝久)から10年前の500円硬貨をもらったことで、過去へとタイムスリップしてしまう。行き先はもちろん、あの日だ。澪との関わりを避け、沙也佳と無事に会うことが出来れば、自分の運命は変わるはずだった……。

確かに人生は「選択」の連続だ。その結果が「今の自分」だとも言える。結婚も大きな選択のひとつだろう。これから元春が体験するのは、あり得たかもしれない、もうひとつの人生だ。

見ものは、大倉・広瀬・瀧本による「時空を超えた三角関係」である。中でも女子高生、OL、母親と演じ分ける広瀬に注目だ。元妻の新たな魅力に翻弄されるのは、のんきな元夫だけではない。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2-021.01.13)


言葉の備忘録214 ある些細な・・・

2021年01月12日 | 言葉の備忘録

 

 

 

「ある些細な出来事、

   おそらく恐怖とはまったく無関係の何かが、

   いわば焦点のような働きをすることによって、

   意識下にあった恐怖が

   意識されるようになったのかもしれない」

 

 

 アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』

(「ミステリの女王」が亡くなったのは1976年1月12日)

 

 

 

 

 

 

 

 

 


正月ドラマの静かな秀作「人生最高の贈りもの」

2021年01月12日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評

 

 

正月ドラマの静かな秀作

「人生最高の贈りもの」

 

正月からいいドラマを見た。4日に放送された「人生最高の贈りもの」(テレビ東京系)だ。

信州に嫁いでいる田渕ゆり子(石原さとみ)が突然、東京の実家にやってくる。翻訳家で一人暮しの父、笹井亮介(寺尾聰)は驚く。帰省の理由を訊ねるが、「何でもない」と娘。

実は、ゆり子はがんで余命わずかという状態だったのだ。そう聞いた途端、「なんだ、よくある難病物か」と言う人も、「お涙頂戴は結構」とそっぽを向く人も少なくないと思う。

しかし、このドラマはそういう作品ではなかった。ヒロインの辛い闘病生活も、家族の献身的な看病も、ましてや悲しい最期を見せたりしない。

また特別な出来事も起きない。あるのは父と娘の静かな、そして束の間の「日常生活」ばかりだ。父はいつも通りに仕事をし、妻を亡くしてから習った料理の腕をふるい、2人で向い合って食べる。ここでは料理や食事が「日常の象徴」として描かれていく。

途中、不安になった亮介は、ゆり子の夫で教え子でもある高校教師、田渕繁行(向井理)を訪ねる。

そこで娘の病気について聞いた。ゆり子は繁行に「残った時間の半分を下さい。お父さんに思い出をプレゼントしたい」と訴えたというのだ。亮介は自分が知ったことをゆり子には伝えないと約束して帰京する。

娘は父が自分の病気と余命を知ったことに気づくが、何も言わない。父もまた娘の病状に触れたりしない。

その代わり2人は並んで台所に立ち、父は娘に翻訳の手伝いをさせる。時間を共有すること。一緒に何かをすること。そして互いを思い合うこと。それこそが「最高の贈りもの」なのだろう。石原と寺尾の抑えた演技が随所で光った。

思えば、人生は「当り前の日常」の積み重ねだ。昨年からのコロナ禍で、私たちはそれがいかに大切なものかを知った。終盤、信州に帰るゆり子に亮介が言う。「大丈夫だ、ゆり子なら出来るさ」と。その言葉は見ている私たちへの励ましにも聞こえた。

脚本は「ちゅらさん」や「ひよっこ」などの岡田恵和。ゆったりした時間の流れを生かした丁寧な演出は大ベテランの石橋冠だ。見終わった後に余韻の残る、滋味あふれる人間ドラマだった。

(しんぶん赤旗「波動」2021.01.11)


【気まぐれ写真館】 気温5℃の夕景

2021年01月11日 | 気まぐれ写真館

2021.01.10


言葉の備忘録213 いい天気・・・

2021年01月10日 | 言葉の備忘録

 

 

 

いい天気だ。

だけど

出かけないで

仕事を片づけよう。

 

 

植草甚一『植草甚一コラージュ日記 東京1976』

 

 

 

 

 


【 解読『おちょやん』】杉咲花が渾身の「女優宣言」、女給から女優への第一歩

2021年01月09日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

【 解読『おちょやん』】

杉咲花が渾身の「女優宣言」、

女給から女優への第一歩

 
NHK連続テレビ小説『おちょやん』。大阪を出た千代(杉咲花)は、京都に降り立ちます。新たな場所で、新たな出会いを体験します。まず飛び込んだのは「カフェー」の世界。女給から女優へと転身していくヒロインの第5週(1月4日~8日)でした。
 
 
昨年末の「第4週」のラストが12月25日。1月4日からの「第5週」まで少し間があったので、思い出してみると・・・
 
千代(杉咲花)が長年奉公してきた京都の芝居茶屋「岡安」。その女将であるシズ(篠原涼子)の助けを借りて、千代は自由になりました。
 
大阪駅から汽車に乗り、降りたところが京都です。とはいえ、なぜ京都だったのか。
 
このドラマでは、故郷の南河内にあった「竹林」の思い出と、走る車内から見た竹林の風景を重ねて説明していました。
 
「そうだ、京都へ行こう」
 
千代のモデルである浪花千栄子もまた、京都とは縁もゆかりもありません。ただ、奉公していた大阪の「仕出し料理屋」では毎年、店員の慰安会を京都で行っていました。
 
いつも「留守組」だった千栄子は、店員たちが自慢げに語るのを聞かされていたそうです。もちろん悔しさもあったでしょう。
 
浪花千栄子の自伝では、大阪を出た後、京都での慰安会のことを思い出したのだと書いています。その時のひらめきを、「そうだ、京都へ行こう」という一文で表しています。
 
JR東海のキャンペーン「そうだ京都、行こう。」がスタートしたのは1993年のことでした。京都の観光地の美しい映像と、長塚京三さんの渋いナレーションによるテレビCMが評判となりました。
 
千栄子が「そうだ、京都へ行こう」と書いた、自伝『水のように』が出版されたのは1965年です。「そうだ京都、行こう。」のはるか以前のことでした。もしかしたら、後のクリエイターたちに何らかのヒントを与えたのかもしれません。
 
当時、このJR東海のキャンペーンを手掛けたクリエイティブ・ディレクターは、電通の佐々木宏さん。キャッチコピーはコピーライターの太田恵美さんの作です。
 
ちなみに佐々木さんですが、東京オリンピック・パラリンピックが延期されたことに伴って解散した野村萬斎さんのチームに代って、新たな「開閉会式企画・演出チーム」の総合統括に任命されました。順調に「そうだ五輪、行こう。」となればいいのですが。
 
新たな「出会い」
 
千代は京都駅前の「口入れ屋」、つまり仕事の斡旋(あっせん)所を訪ねます。見つけたのは、カフェー「キネマ」の女給でした。
 
当時の「カフェー」は、今どきの「カフェ」などとは異なります。特殊喫茶とか、社交喫茶などと呼ばれる、一種の風俗営業の店でした。女給もいわゆるウエイトレスではなく、現在のバーやクラブのホステスさんのような仕事です。
 
千代が勤めることになった「キネマ」もそうですが、カフェーは給料制ではなく、客から受け取るチップが女給の収入のすべてでした。
 
カフェー「キネマ」の特色は、店名通り、活動写真と呼ばれていた映画の世界をモチーフとしていること。所属する女給は、女優もしくは女優志望の若い女性たちで、店長の宮元(西村和彦)も自分のことを「監督」と呼ばせています。
 
新たな場所には、新たな出会いがあります。この宮元だけでなく、一番人気の女給で映画出演もしている洋子(阿部純子)や、富山出身の気のいい真理(吉川愛)などが登場。同世代である彼女たちの存在は、千代を大いに刺激します。
 
渾身の「女優宣言」
 
このカフェー「キネマ」で、千代はいきなり映画の主演女優としてスカウトされました。しかし、それは詐欺師が映画の出資者をだますためであり、あっけなく夢は破れます。
 
しかも、洋子と真理が撮影所の試験に合格したことで、千代の中で何かが弾けます。
 
6日の第23話は、この週の大きな「見せ場」となりました。突然、店のみんなに向って思いをぶつけたのです。
 
「洋子さん、真理ちゃん、堪忍だす。なんや、うち、心からお祝いできへんねん。2人が頑張って、やっとつかんだ合格やのに、それわかってんのに、おめでとうより先に、うらやましいが来てしまう。悔しいが来てしまいますねん」
 
本音を語る千代。自分をだました詐欺師ではなく、自分に腹が立つと言います。続けて・・・
 
「小さい頃、一人で道頓堀に奉公に出て、辛うて、さみしくて、どないしよう思うて。そんな時、うちの前にはいつもお芝居があったんです。うちは、お芝居が大好きや!」
 
ここからカメラは、とてもゆっくり、千代の顔へとZOOMしていきます。
 
「うちが元気もろたみたいに、今度はうちが誰かの力になりたい。また思い上ってと笑われるかもわからへんけど、うちは今までずっと、どこかでそないに思うてきたんやと思います」
 
夢中で話す千代のアップ。
 
「せやさかい、うちは役者になりたい。女優になりたい。いや、なります!」
 
渾身の「女優宣言」でした。
 
そして杉咲さん、堂々の朝ドラヒロインらしい顔つきです。この約3分間の長ゼリフは、コロナ禍における杉咲さんの覚悟であり、自身の「朝ドラ主演女優宣言」にも聞こえました。
 
「女給」から「女優」へ
 
今週あった、もう一つの出会い。それが女優の山村千鳥(若村麻由美)でした。東京で映画女優として活躍し、結婚・離婚も経験した後、役者を目指す女性たちを集めた「山村千鳥一座」を率いるベテラン女優です。
 
千代は座員募集のチラシを見て応募し、なんと合格してしまう。実は雑用係の欠員があり、応募者は千代一人だったのです。仕事はかなりハードですが、これまでの経験から千代は負けません。
 
ただ、客入りの悪い一座の窮状を救うべく、座員の薮内清子(映美くらら)が提案してきた新しい出し物に対して、千鳥が取り合おうともしない姿勢に、つい反発してしまいます。クビを言い渡されました。
 
落ち込んでいる千代のところに、清子が訪ねてきます。そして、素顔の千鳥について話すのでした。可笑しかったのは、「清子さんが自分の一座を作ったらいい」と言う千代に、それは無理だと答えた清子の言葉です。
 
「わたし、山村千鳥が好きやねん」
 
この「好きやねん」が絶品です。宝塚出身のくららさん、いい味、出してました。
 
千代は、千鳥の家に戻り、詫びを入れます。はじめは拒否する千鳥でしたが、幸運の印、四葉のクローバーのおかげもあって、千代は再入門を許されました。
 
「あなたは、ずっと雑用係。それでもいいわね」と千鳥。
 
「ようあらしまへん。けど、それが今のうちの力だすな」と千代。
 
それでも、大きな前進です。女給から女優へ。その第一歩を記したのですから。
 
ほうきを手に千鳥の家の前に立つ千代は、「今日もええ天気や。よっしゃ!」と気合十分。次週から、「山村千鳥一座」での女優修行が始まります。
 
 

言葉の備忘録212 たとえ・・・

2021年01月07日 | 言葉の備忘録

 

 

 

たとえ

いつの時代を描こうと

小説作品は

常に現代を表現している。

 

 

筒井康隆『不良老人の文学論』

 

 

 

 

 


“大人のお年玉”のようなうれしい一本「ライジング若冲」

2021年01月06日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

NHK正月時代劇

「ライジング若冲〜天才 かく覚醒せり〜」

“大人のお年玉”のようなうれしい一本

 

正月2日、NHKで「ライジング若冲(じゃくちゅう)〜天才 かく覚醒せり〜」が放送された。

若冲とは江戸時代の天才絵師、伊藤若冲のこと。平成時代に入って注目を集めたので、極彩色で描かれた鶏や水墨画「象と鯨図」などを目にした人も多いはずだ。とはいえ、よもやドラマで若冲に会えるとは思わなかった。

京都の青物問屋に生まれながら、希代の絵師となった若冲(中村七之助)。その理解者で名プロデューサーの役目を果たした相国寺の僧侶、大典顕常(永山瑛太)。物語は2人を軸に展開する。

最大の見せ場は若冲が作品を生み出す姿であり、そのプロセスだ。鳥や虫や花などをひたすら見つめ、写生していく。また家の中では鶏を放し飼いにして、10日間も観察を続ける。求めるのは姿かたちではなく、「躍動する魂の力」だ。やがて、若冲は「神気が見える!」の境地へと到達する。

そしてもう一つの見どころが若冲と大典の、友情を超えた愛情ともいうべき深い絆だ。2人が向き合う場面に漂う濃密な「艶」は、中村と永山が見せてくれた、役者としての真骨頂と言える。

作・演出は「スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディー〜」で、いくつもの賞を受けた源孝志。再現性の高いレプリカを駆使して、「創造すること」への敬意を物語化していた。まるで「大人のお年玉」のようなうれしい一本に感謝だ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.01.06)


言葉の備忘録211 私などと・・・

2021年01月05日 | 言葉の備忘録

 

 

 

 

私などというものはない。

あっても、

せいぜい二十パーセントぐらい。

のこりの八十パーセントは

私がそだった時代の文化が

つくってくれたものなのだ。

 

 

津野海太郎『百歳までの読書術』

 

 

 

 

 


言葉の備忘録210 人生は・・・

2021年01月04日 | 言葉の備忘録

 

 

 

人生は明るくないと生きていけない。

でも面白くなければ生きる意味がない。

 

 

島地勝彦『甘い生活』

 

 

 

 


「嵐」の見事な軟着陸 ありがとう!&おつかれさま!

2021年01月03日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

「嵐」の見事な軟着陸 

ありがとう!そして、おつかれさま!

 
活動休止の発表から約2年、ファンとの大事な時間を過ごしてきた「嵐」。それは「嵐ロス」のケアを前倒しで行いながらの、見事な「ソフトランディング(軟着陸)」でした。
 
昨年12月31日、NHKの『紅白歌合戦』で歌う「嵐」を見ながら、2019年1月に行われた、活動休止の発表会見を思い出していました。
 
アイドルが芸能マスコミだけを気にしていれば良かった頃とは異なり、今はSNSなどの発達で、良くも悪くも「一億総ジャーナリストの時代」です。誤った情報も思わぬ形で拡散してしまう時代だからこそ、自分たちの真意を直接伝えようとした会見でした。
 
休止予定の2020年末といえば、年長の大野智さんは40歳。全員がアラフォーとなり、アイドルとして、人として、その先をどう生きるか、ある種のライフプランを考える時期でもあります。
 
会見では、5人で話し合いを重ねたことを強調し、約2年後のグループ活動の休止を、時に笑顔を交えながら、穏やかに伝えていました。そこには、「運動体としての嵐」を可能な限り自分たちでコントロールしたいという、強い意思が見て取れました。
 
大野さんのコメントによれば、活動休止の相談をメンバーと始めたのは2017年6月だったそうです。16年に起きたSMAP解散を巡る騒動を、同じジャニーズ事務所の後輩として見つめることで、「着地の仕方」の大切さを痛感したのではないでしょうか。
 
残念ながら、SMAPの解散を「美しい形」と呼ぶことは難しく、彼らは活動25周年コンサートも、特別番組も実現できませんでした。
 
「嵐」は、2020年末までの約2年をかけて、予定されていた東京オリンピック・パラリンピック関連の活動を全うし、さらに全国規模のコンサートツアーを行って、ファンにもきちんと別れを告げることを計画していました。
 
実際には、新型コロナウイルスの感染拡大によってオリンピックは延期され、コンサートも控えることになってしまったのは、ご存知の通りです。
 
しかし、記者会見で櫻井翔さんが「時間をかけて感謝の気持ちを伝えたい」と語っていたように、「嵐」は2年にわたってファンとの大事な時間を過ごしたのです。
 
そのためには、ある程度の距離を置いてきたインターネットも駆使して、ファンとのつながりを守りました。発生するはずの「嵐ロス」のケアを前倒しで行ってきたことも含め、とても丁寧な「ソフトランディング(軟着陸)」でした。
 
あらためて「嵐」について考えてみると、5人の魅力的なキャラクターに加え、自分たちを客観視するクレバーさと優しさ、スターでありながら身近な存在でもある絶妙な距離感が人気を支えていたと言えそうです。
 
「嵐」としての活動休止は、確かにファンにとって寂しいことでしょう。しかし、各メンバーが自由に才能を発揮するための果敢な決断であり、そこに悲壮感はありません。むしろ「それぞれの旅立ち」という前向きなメッセージが伝わり、1人1人に対する「新たな期待」が生まれました。
 
さらに、今回「嵐」が示した「着地の形」は、さまざまなグループや芸能人が今後、活動休止や解散などの局面に立った際、参考にすべき「ロールモデル」の一つになるはずです。
 
21年にわたって、たくさんの人たちを元気にする活動を続けてきた「嵐」のメンバーに、ありがとう! そして、おつかれさま!
 

『恋つづ』一挙放送で再認識! 上白石萌音「最強の地方出身女子」伝説

2021年01月02日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

『恋つづ』一挙放送で再認識! 

上白石萌音「最強の地方出身女子」伝説

 

昨年12月29日の『「恋はつづくよどこまでも」ディレクターズカット版全話一挙放送SP』(TBS系)。再認識したのは、女優・上白石萌音「最強の地方出身女子」伝説でした。

 

新年、おめでとうございます!

とはいえ、めでたさも中くらいな感じで、昨年より少しでもよい年になるよう祈るばかりです。

さて、歳末セールの大盤振る舞いみたいな「年末編成」のおかげで、好評だった連続ドラマをまとめて再見することができました。

12月29日の『「恋はつづくよどこまでも」ディレクターズカット版全話一挙放送SP』(TBS系)も、そんな「歳末企画」の一つでした。

コロナ禍での「癒し」となったヒロイン

ヒロインの佐倉七瀬(上白石)は修学旅行で鹿児島から上京し、偶然出会った医師の天堂浬(てんどうかいり 佐藤健)に一目ぼれ。彼の近くに行こうと看護師を目指し、天堂と同じ病院で働き始めます。看護師として一人前になること、天堂に振り向いてもらうこと、そのためにはどんな努力も惜しまない。

やがて彼女の天性の明るさと笑顔は患者たちの支えとなっていきます。七瀬はかたくなだった天堂の気持ちも動かしますが、一番揺さぶられたのは見る側の感情です。仕事も恋も初心者で、失敗しては落ち込み、泣いて、また顔を上げる。ひたすら一途でけなげなヒロインに多くの人が癒やされました。

振り返れば、『恋はつづくよどこまでも』が放送されたのは昨年の1月クール。でも、何だか随分前のような気がします。一挙放送を見ながら、新型コロナウイルスの影響下に過ごした2020年が、いつもとは違う1年だったことを、あらためて感じました。

そして、もう一つ再認識したのが、上白石萌音さんの「逸材感」でした。いそうで、いない。いなさそうで、ちゃんといる。他の女優が演じていたら、あそこまで共感できなかったかもしれないと思わせる、独特の存在感がありました。

女優・上白石萌音の「最強の地方出身女子」伝説

女優の上白石萌音さんに、最初に注目したのは、いつだったでしょうか。多分、初主演の映画『舞妓はレディ』(14年、周防正行監督)だったと思います。地方出身の女の子が、京都に出てきて、「舞妓さん」になることを目指すというお話でした。

あか抜けない、田舎っぽい少女だった主人公の西郷春子が、だんだん洗練されていく姿が、往年の名作ミュージカル『マイ・フェア・レディ』でオードリー・ヘプバーンが演じたイライザと重なります。地方出身の春子に、上白石萌音という女優がドハマリしていました。

次が映画『ちはやふる』(16年、小泉徳宏監督)で、広瀬すずさん演じるヒロイン、綾瀬千早の「かるた仲間」です。都立瑞沢高校の「かるた部」の部員、大江奏の役ですね。

都立なので、奏は地方出身ではなかったのですが、和服好きで、おっとり屋さんで、古典おたくというキャラクターは、渋谷とか六本木とかを闊歩するタイプの「東京女子」とは、見事に一線を画していました。

そして、萌音さんの知名度を一気に上げたのが、同じ16年公開の劇場アニメ『君の名は。』(新海誠監督)です。2次元のヒロイン・宮水三葉(みつは)に、声優として命を吹き込んだのは、萌音の演技力のなせる業でした。

三葉は、豊かな自然に囲まれた、岐阜県糸守町に暮らす女子高生で、古くからある神社の巫女。本当は東京に憧れているのですが、ままならない環境にあります。まさに「地方出身女子」そのものであり、そのやわらかい方言もどこか懐かしく、萌音と三葉は完全に一体化していました。

さらに、もう1本、連ドラ初主演となった『ホクサイと飯さえあれば』(17年、毎日放送)も、忘れてはならないでしょう。

主人公は上京したばかりの超内向女子、ブンちゃんこと山田文子(あやこ)だ。ホクサイという名の「ぬいぐるみ人形」と一緒に、北千住のアパートで暮していました。

無類の「ごはん好き」ですが、食事は「お家(うち)ごはん」のみ。自炊料理の食材を近所の商店街で手に入れ、自分で作るのが一番楽しいし、最も嬉しいという女子大生です。

しかも画面では、安くて、早くて、おいしい「ブンちゃん料理」を作るところは見せるのですが、食べているシーンは一切描かれないという、ちょっと変わった「DIYグルメドラマ」でした。

このブンが、これまた、何ともいい味の「地方出身女子」で、一般的にはコミュ障と言われそうな強い人見知りです。しかし、自分の好きことには一生懸命で、一途で、健気でもあり、どこか『恋つづ』の七瀬につながっていました。

普通っぽいけど普通じゃない逸材

『恋つづ』の終盤。七瀬に横恋慕した患者の上条(清原翔)が天堂を訴えたため、ずっと天堂が面倒を見てきた少女の手術に立ち会うことが出来なくなってしまいました。

七瀬は訴えを取り下げる「交換条件」として、天堂から離れることを決意し、鹿児島(上白石姉妹の故郷)の小さな診療所で働き始めます。

そして、やはりというか、待ってましたというか(笑)、天堂が現れ、七瀬を背後から抱きしめます。七瀬を応援してきた視聴者も納得する、この恋物語の大詰めでした。

「こうなって欲しい」という見る側の願いに、テレることなく応えていくことも、正統派恋愛ドラマでは必須だったりします。萌音さんは、ベタな展開であっても、ちょっと気恥ずかしいセリフであっても、堂々と、清々しく演じ切ることで、私たちを物語世界に引き込んでくれました。

というわけで、萌音さんの軌跡をたどってきたのですが、その演技の幅を示すエピソードをもう一つ。

昨年3月、文化庁が主催する「芸術選奨」の2019年度受賞者が発表になりました。その「放送部門」の選考審査員を務めさせていただいたのですが、文部科学大臣賞は、ドラマ『スローな武士にしてくれ』(NHK)、『令和元年版 怪談牡丹燈籠』(同)などの脚本・演出を手掛けた、源孝志さんに贈られました。

この『怪談牡丹燈籠』で、萌音さんは、亡霊でありながら好きな男につきまとう「お露」を演じて、絶品だったのです。

一緒になることは出来ない運命だからこそ、萌音さんが見せてくれた女としての執念が哀しく、美しく、そして怖かった。源さんの受賞に、彼女が大きく貢献したと言っても過言ではありません。

昨年が『恋つづ』なら、2021年の萌音さんは1月12日(火)からの『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)がスタートとなります。

番組情報によれば、「主人公・奈未(上白石)が、片思い中の幼なじみを追いかけ上京し、大手出版社の備品管理部の面接を受けるも、ファッション雑誌編集部に配属されて・・・」という設定の物語です。

この「幼なじみを追いかけ上京」というあたりに、『恋つづ』に至る「最強の地方出身女子」を踏襲する構えが見て取れます。普通っぽいけど普通じゃない逸材、上白石萌音という女優の魅力を、うまく生かし切ってくれることを期待しています。


【気まぐれ写真館】 2021年元旦 初日の出

2021年01月01日 | 気まぐれ写真館

 

明けまして、おめでとうございます!