川崎ブレイブサンダースvs.千葉ジェッツふなばし
ブレイブサンダースのマスコットキャラクター「ロウル」
ブレイブサンダースの勝利!
MVPの14 辻 直人選手
川崎ブレイブサンダースvs.千葉ジェッツふなばし
ブレイブサンダースのマスコットキャラクター「ロウル」
ブレイブサンダースの勝利!
MVPの14 辻 直人選手
大倉忠義主演「知ってるワイフ」
時空を超えた三角関係どこまで描く
もしも過去に戻って人生のやり直しが出来たら。そんな妄想をドラマ化したのが「知ってるワイフ」(フジテレビ系)だ。
剣崎元春(大倉忠義)は銀行員。結婚5年目の妻、澪(広瀬アリス)は2児の母だ。出会った時、澪は可愛い女子高生だった。しかし今は不満ばかりを口にする悪妻だ。本当は、妻の話を聞き流し、家事や育児を手伝わない夫も悪いのだが。
元春にとっての「運命の日」は大学時代の2010年4月9日だ。好きだった社長令嬢の江川沙也佳(瀧本美織)から演奏会に誘われたが、途中で澪の財布を拾ったために遅刻。それで沙也佳は遠ざかり、元春は澪とつき合うことになった。
そんな元春が、謎の男(生瀬勝久)から10年前の500円硬貨をもらったことで、過去へとタイムスリップしてしまう。行き先はもちろん、あの日だ。澪との関わりを避け、沙也佳と無事に会うことが出来れば、自分の運命は変わるはずだった……。
確かに人生は「選択」の連続だ。その結果が「今の自分」だとも言える。結婚も大きな選択のひとつだろう。これから元春が体験するのは、あり得たかもしれない、もうひとつの人生だ。
見ものは、大倉・広瀬・瀧本による「時空を超えた三角関係」である。中でも女子高生、OL、母親と演じ分ける広瀬に注目だ。元妻の新たな魅力に翻弄されるのは、のんきな元夫だけではない。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2-021.01.13)
「ある些細な出来事、
おそらく恐怖とはまったく無関係の何かが、
いわば焦点のような働きをすることによって、
意識下にあった恐怖が
意識されるようになったのかもしれない」
アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』
(「ミステリの女王」が亡くなったのは1976年1月12日)
正月ドラマの静かな秀作
「人生最高の贈りもの」
正月からいいドラマを見た。4日に放送された「人生最高の贈りもの」(テレビ東京系)だ。
信州に嫁いでいる田渕ゆり子(石原さとみ)が突然、東京の実家にやってくる。翻訳家で一人暮しの父、笹井亮介(寺尾聰)は驚く。帰省の理由を訊ねるが、「何でもない」と娘。
実は、ゆり子はがんで余命わずかという状態だったのだ。そう聞いた途端、「なんだ、よくある難病物か」と言う人も、「お涙頂戴は結構」とそっぽを向く人も少なくないと思う。
しかし、このドラマはそういう作品ではなかった。ヒロインの辛い闘病生活も、家族の献身的な看病も、ましてや悲しい最期を見せたりしない。
また特別な出来事も起きない。あるのは父と娘の静かな、そして束の間の「日常生活」ばかりだ。父はいつも通りに仕事をし、妻を亡くしてから習った料理の腕をふるい、2人で向い合って食べる。ここでは料理や食事が「日常の象徴」として描かれていく。
途中、不安になった亮介は、ゆり子の夫で教え子でもある高校教師、田渕繁行(向井理)を訪ねる。
そこで娘の病気について聞いた。ゆり子は繁行に「残った時間の半分を下さい。お父さんに思い出をプレゼントしたい」と訴えたというのだ。亮介は自分が知ったことをゆり子には伝えないと約束して帰京する。
娘は父が自分の病気と余命を知ったことに気づくが、何も言わない。父もまた娘の病状に触れたりしない。
その代わり2人は並んで台所に立ち、父は娘に翻訳の手伝いをさせる。時間を共有すること。一緒に何かをすること。そして互いを思い合うこと。それこそが「最高の贈りもの」なのだろう。石原と寺尾の抑えた演技が随所で光った。
思えば、人生は「当り前の日常」の積み重ねだ。昨年からのコロナ禍で、私たちはそれがいかに大切なものかを知った。終盤、信州に帰るゆり子に亮介が言う。「大丈夫だ、ゆり子なら出来るさ」と。その言葉は見ている私たちへの励ましにも聞こえた。
脚本は「ちゅらさん」や「ひよっこ」などの岡田恵和。ゆったりした時間の流れを生かした丁寧な演出は大ベテランの石橋冠だ。見終わった後に余韻の残る、滋味あふれる人間ドラマだった。
(しんぶん赤旗「波動」2021.01.11)
【 解読『おちょやん』】
杉咲花が渾身の「女優宣言」、
女給から女優への第一歩
NHK正月時代劇
「ライジング若冲〜天才 かく覚醒せり〜」
“大人のお年玉”のようなうれしい一本
正月2日、NHKで「ライジング若冲(じゃくちゅう)〜天才 かく覚醒せり〜」が放送された。
若冲とは江戸時代の天才絵師、伊藤若冲のこと。平成時代に入って注目を集めたので、極彩色で描かれた鶏や水墨画「象と鯨図」などを目にした人も多いはずだ。とはいえ、よもやドラマで若冲に会えるとは思わなかった。
京都の青物問屋に生まれながら、希代の絵師となった若冲(中村七之助)。その理解者で名プロデューサーの役目を果たした相国寺の僧侶、大典顕常(永山瑛太)。物語は2人を軸に展開する。
最大の見せ場は若冲が作品を生み出す姿であり、そのプロセスだ。鳥や虫や花などをひたすら見つめ、写生していく。また家の中では鶏を放し飼いにして、10日間も観察を続ける。求めるのは姿かたちではなく、「躍動する魂の力」だ。やがて、若冲は「神気が見える!」の境地へと到達する。
そしてもう一つの見どころが若冲と大典の、友情を超えた愛情ともいうべき深い絆だ。2人が向き合う場面に漂う濃密な「艶」は、中村と永山が見せてくれた、役者としての真骨頂と言える。
作・演出は「スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディー〜」で、いくつもの賞を受けた源孝志。再現性の高いレプリカを駆使して、「創造すること」への敬意を物語化していた。まるで「大人のお年玉」のようなうれしい一本に感謝だ。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.01.06)
私などというものはない。
あっても、
せいぜい二十パーセントぐらい。
のこりの八十パーセントは
私がそだった時代の文化が
つくってくれたものなのだ。
津野海太郎『百歳までの読書術』
「嵐」の見事な軟着陸
ありがとう!そして、おつかれさま!
昨年12月29日の『「恋はつづくよどこまでも」ディレクターズカット版全話一挙放送SP』(TBS系)。再認識したのは、女優・上白石萌音「最強の地方出身女子」伝説でした。
新年、おめでとうございます!
とはいえ、めでたさも中くらいな感じで、昨年より少しでもよい年になるよう祈るばかりです。
さて、歳末セールの大盤振る舞いみたいな「年末編成」のおかげで、好評だった連続ドラマをまとめて再見することができました。
12月29日の『「恋はつづくよどこまでも」ディレクターズカット版全話一挙放送SP』(TBS系)も、そんな「歳末企画」の一つでした。
コロナ禍での「癒し」となったヒロイン
ヒロインの佐倉七瀬(上白石)は修学旅行で鹿児島から上京し、偶然出会った医師の天堂浬(てんどうかいり 佐藤健)に一目ぼれ。彼の近くに行こうと看護師を目指し、天堂と同じ病院で働き始めます。看護師として一人前になること、天堂に振り向いてもらうこと、そのためにはどんな努力も惜しまない。
やがて彼女の天性の明るさと笑顔は患者たちの支えとなっていきます。七瀬はかたくなだった天堂の気持ちも動かしますが、一番揺さぶられたのは見る側の感情です。仕事も恋も初心者で、失敗しては落ち込み、泣いて、また顔を上げる。ひたすら一途でけなげなヒロインに多くの人が癒やされました。
振り返れば、『恋はつづくよどこまでも』が放送されたのは昨年の1月クール。でも、何だか随分前のような気がします。一挙放送を見ながら、新型コロナウイルスの影響下に過ごした2020年が、いつもとは違う1年だったことを、あらためて感じました。
そして、もう一つ再認識したのが、上白石萌音さんの「逸材感」でした。いそうで、いない。いなさそうで、ちゃんといる。他の女優が演じていたら、あそこまで共感できなかったかもしれないと思わせる、独特の存在感がありました。
女優・上白石萌音の「最強の地方出身女子」伝説
女優の上白石萌音さんに、最初に注目したのは、いつだったでしょうか。多分、初主演の映画『舞妓はレディ』(14年、周防正行監督)だったと思います。地方出身の女の子が、京都に出てきて、「舞妓さん」になることを目指すというお話でした。
あか抜けない、田舎っぽい少女だった主人公の西郷春子が、だんだん洗練されていく姿が、往年の名作ミュージカル『マイ・フェア・レディ』でオードリー・ヘプバーンが演じたイライザと重なります。地方出身の春子に、上白石萌音という女優がドハマリしていました。
次が映画『ちはやふる』(16年、小泉徳宏監督)で、広瀬すずさん演じるヒロイン、綾瀬千早の「かるた仲間」です。都立瑞沢高校の「かるた部」の部員、大江奏の役ですね。
都立なので、奏は地方出身ではなかったのですが、和服好きで、おっとり屋さんで、古典おたくというキャラクターは、渋谷とか六本木とかを闊歩するタイプの「東京女子」とは、見事に一線を画していました。
そして、萌音さんの知名度を一気に上げたのが、同じ16年公開の劇場アニメ『君の名は。』(新海誠監督)です。2次元のヒロイン・宮水三葉(みつは)に、声優として命を吹き込んだのは、萌音の演技力のなせる業でした。
三葉は、豊かな自然に囲まれた、岐阜県糸守町に暮らす女子高生で、古くからある神社の巫女。本当は東京に憧れているのですが、ままならない環境にあります。まさに「地方出身女子」そのものであり、そのやわらかい方言もどこか懐かしく、萌音と三葉は完全に一体化していました。
さらに、もう1本、連ドラ初主演となった『ホクサイと飯さえあれば』(17年、毎日放送)も、忘れてはならないでしょう。
主人公は上京したばかりの超内向女子、ブンちゃんこと山田文子(あやこ)だ。ホクサイという名の「ぬいぐるみ人形」と一緒に、北千住のアパートで暮していました。
無類の「ごはん好き」ですが、食事は「お家(うち)ごはん」のみ。自炊料理の食材を近所の商店街で手に入れ、自分で作るのが一番楽しいし、最も嬉しいという女子大生です。
しかも画面では、安くて、早くて、おいしい「ブンちゃん料理」を作るところは見せるのですが、食べているシーンは一切描かれないという、ちょっと変わった「DIYグルメドラマ」でした。
このブンが、これまた、何ともいい味の「地方出身女子」で、一般的にはコミュ障と言われそうな強い人見知りです。しかし、自分の好きことには一生懸命で、一途で、健気でもあり、どこか『恋つづ』の七瀬につながっていました。
普通っぽいけど普通じゃない逸材
『恋つづ』の終盤。七瀬に横恋慕した患者の上条(清原翔)が天堂を訴えたため、ずっと天堂が面倒を見てきた少女の手術に立ち会うことが出来なくなってしまいました。
七瀬は訴えを取り下げる「交換条件」として、天堂から離れることを決意し、鹿児島(上白石姉妹の故郷)の小さな診療所で働き始めます。
そして、やはりというか、待ってましたというか(笑)、天堂が現れ、七瀬を背後から抱きしめます。七瀬を応援してきた視聴者も納得する、この恋物語の大詰めでした。
「こうなって欲しい」という見る側の願いに、テレることなく応えていくことも、正統派恋愛ドラマでは必須だったりします。萌音さんは、ベタな展開であっても、ちょっと気恥ずかしいセリフであっても、堂々と、清々しく演じ切ることで、私たちを物語世界に引き込んでくれました。
というわけで、萌音さんの軌跡をたどってきたのですが、その演技の幅を示すエピソードをもう一つ。
昨年3月、文化庁が主催する「芸術選奨」の2019年度受賞者が発表になりました。その「放送部門」の選考審査員を務めさせていただいたのですが、文部科学大臣賞は、ドラマ『スローな武士にしてくれ』(NHK)、『令和元年版 怪談牡丹燈籠』(同)などの脚本・演出を手掛けた、源孝志さんに贈られました。
この『怪談牡丹燈籠』で、萌音さんは、亡霊でありながら好きな男につきまとう「お露」を演じて、絶品だったのです。
一緒になることは出来ない運命だからこそ、萌音さんが見せてくれた女としての執念が哀しく、美しく、そして怖かった。源さんの受賞に、彼女が大きく貢献したと言っても過言ではありません。
昨年が『恋つづ』なら、2021年の萌音さんは1月12日(火)からの『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)がスタートとなります。
番組情報によれば、「主人公・奈未(上白石)が、片思い中の幼なじみを追いかけ上京し、大手出版社の備品管理部の面接を受けるも、ファッション雑誌編集部に配属されて・・・」という設定の物語です。
この「幼なじみを追いかけ上京」というあたりに、『恋つづ』に至る「最強の地方出身女子」を踏襲する構えが見て取れます。普通っぽいけど普通じゃない逸材、上白石萌音という女優の魅力を、うまく生かし切ってくれることを期待しています。