日刊ゲンダイに連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。
今回は、フジテレビの連ドラ「高校入試」を取り上げました。
「普通の20代女性」を演じる
長澤まさみの良さ
長澤まさみの良さ
ある地方の名門高校。入試前日の教室だ。黒板に大きな模造紙が貼り出されている。そこには、「入試をぶっつぶす!」の巨大な筆文字。教師たちはびっくりする。そして視聴者も驚いた。
長澤まさみ主演のドラマ「高校入試」(フジテレビ 土曜23時10分~)はそんなふうに始まった。
その後、入試当日もトラブルは続く。受験生の携帯電話による中断。答案用紙の行方不明。別の答案用紙の発見などだ。しかも一種の密室であるはずの「学校内部」の混乱ぶりが次々とネットの掲示板に書き込まれていく。
脚本は小説「告白」などで知られる作家・湊かなえ。ストーリー・テリングの技はさすがである。
物語の時間軸は入試前日と当日の2日間。舞台のほとんどが学校の中という限定された設定にも関わらず、きっちり連ドラとして成立させている。あと数回を残すのみになっても、入試妨害の犯人はもちろん、その目的も着地点も見当がつかない。
また特に際立っているのがネット掲示板の持つ“負のチカラ”と、その不気味さだ。ケータイやスマホという日常的ツールが、個人や組織を追い詰める凶器となることを存分に見せてくれている。
最後に主演の長澤。これまでのドラマのようなヘンに際立つキャラクターではなく、「普通の20代女性」を演じている点がいい。今後への大事なステップになるはずだ。
(日刊ゲンダイ 2012.11.27)