碓井広義ブログ

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今年放送のテレビドラマ  強い印象残した4作品

2023年12月05日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評

 

 

<Media NOW!>

今年放送のテレビドラマ 

強い印象残した4作品

 

12月に入った。今年放送されたドラマを振り返り、強く印象に残った作品を挙げたい。

1本目は「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ系、1~3月放送)。市役所勤務の近藤麻美(安藤サクラ)は突然の交通事故で死亡する。

気づくと奇妙な空間にいて、案内人の男(バカリズム)から「来世ではオオアリクイ」だと告げられる。抵抗した麻美は「今世をやり直す」ことを選択した。

人生に修正を施すため、善行に励む麻美。しかも、このやり直しが何度も続くのだ。脚本はバカリズムのオリジナル。ユーモラスでリアルなセリフが心地よかった。

次は「波よ聞いてくれ」(テレビ朝日系、4~6月)だ。金髪ヤンキー系女子のミナレ(小芝風花)は、地元ラジオ局の麻藤(北村一輝)にスカウトされ、深夜番組のラジオパーソナリティーになる。

地震で大停電が発生するが、「おまえがいつものように、『一人じゃない、大丈夫』って声を届けることに意味がある」と麻藤。ミナレは闇に沈んだ街に向かって朝までしゃべり続ける。

何よりミナレのキャラクターが際立っていた。彼女のおかげで状況が動くというより、状況自体をぶっ壊すヒロインを小芝が全力で演じた。

3本目は日曜劇場「VIVANT」(TBS系、7~9月)。長期モンゴルロケを含む壮大なスケール感。自衛隊の秘密部隊「別班」という設定も秀逸だった。

そして起伏に富んだストーリーがある。映画「ミッション:インポッシブル」などを思わせる、ジェットコースター型の冒険スパイアクションだ。

原作は、演出を務めた福澤克雄のオリジナル。「半沢直樹」や「下町ロケット」の八津弘幸ら複数の脚本家が参加した。主演の堺雅人など俳優陣の熱演もあり、テレビドラマの地平を広げる野心作となった。

最後は放送中の「コタツがない家」(日本テレビ系)だ。主人公はウエディング会社社長の深堀万里江(小池栄子)。仕事は完璧だが、家庭は問題山積だ。

夫の悠作(吉岡秀隆)は廃業寸前の漫画家。高校生の息子・順基(作間龍斗)はアイドルを目指して挫折。そこに熟年離婚した父、達男(小林薫)が転がり込んできた。

リビングでの笑える会話バトルがこのドラマの魅力だ。筋立てよりも人間描写でドラマをけん引する金子茂樹のオリジナル脚本。俳優たちの軽妙で細やかな演技。両者がガップリ四つに組み、ホームコメディーの快作となった。

来年も作り手の強い意志が感じられる作品を期待したい。

(毎日新聞夕刊  2023年12月2日)


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