JT「鬼のゆく道」
心の豊かさ、探す旅
どこかの山の中。鬼(山田孝之さん)がおばあさん(大方斐紗子さん)と出会う。JTの企業CM「鬼のゆく道」だ。
おばあさんは、お地蔵様を洗っている。鬼が「おい、ヒト。何してる?」と問うと、「こうすると心が洗われるんだあ」と答えた。
「心?」と聞き返す鬼に、「心の豊かさ、大事」と言いながら饅頭(まんじゅう)をくれた。鬼はそれをひと口で食べ、「なあ、心の豊かさって何だ?」と尋ねる。
しかし、おばあさんは「なんだろうねえ」とほほ笑むばかりだ。ヒトの心が知りたくなった鬼は旅に出る。
民俗学者の小松和彦は著書『鬼と日本人』の中で、「鬼は、なによりもまず怖ろしいものの象徴」だとしている。
また、「鬼は邪悪な存在とみなせるが、人間の側に立って人間に福をもたらすような鬼も存在していた」という。
鬼は畏怖すべき対象であると同時に、人間の魂を反映した「異形の隣人」でもある。
だからこそ、これまでとは違う「心の豊かさ」を見つけ出せるかもしれない。鬼の旅は始まったばかりだ。
(日経MJ「CM裏表」2024.06.24)