碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【新刊書評2024】 『戦争映画を解読せよ!』ほか

2024年09月06日 | 書評した本たち

 

 

「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

永田喜嗣『戦争映画を解読せよ!~ナチス、大日本帝国、ヒロシマ・ナガサキ』

青弓社 3960円

戦争が「勇壮でかっこいい」と感じさせる作品がある。また、戦争の「残虐さ」を思い知らせる作品がある。戦争映画の相反する2つの機能だ。本書は戦争映画を経由して戦争そのものに肉薄する試みである。戦争映画が告発したナチス・ドイツ。抗日映画が示した大日本帝国への抵抗。さらに、日本の戦争映画においては日本人の「加害意識」の議論が不活発なままだったことも指摘されていく。

 

高橋安幸

『暗躍の球史~根本陸夫が動いた時代』

集英社 2200円

いくつもの球団のコーチや監督を歴任し、ライオンズやホークスの黄金時代を築いた根本陸夫は、日本プロ球界初のGM(ゼネラルマネージャー)といわれる。本書は関わりのあった選手から球団マネージャーまで11人の証言で構成された人物伝。チームを劇的に変えたい時は人を変える。雰囲気を極端に変えたいなら主力を変える。辣腕を振るう一方、親分肌で面倒見のいい「オヤジ」でもあった。

 

レヴィ・マクローリン:著

山形浩生:訳、中野毅:監修

『創価学会~現代日本の模倣国家』

講談社選書メチエ 2585円

著者は宗教学専攻のノースカロライナ州立大学教授だ。創価学会を、国民国家の制度や慣習を真似ることで、宗教団体としての力を得てきたと見る。国の行政単位と重なる区域わけでの全国展開。官僚組織と類似の本部職員組織。幼稚園から大学までの教育機関。新聞を発行し出版を行うマスメディアも持つ。そんな「模倣国家」が、リアルな「国家」の運営に与えている影響についても注視したい。

(週刊新潮 2024.09.05号)


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