碓井広義ブログ

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木梨憲武&奈緒「春になったら」 ドラマは時々、 現実との不思議な符合をみせることがある

2024年01月25日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

木梨憲武&奈緒「春になったら」

ドラマは時々、

現実との不思議な符合をみせることがある

 

月10ドラマ「春になったら」(カンテレ・フジテレビ系)は、父と娘の物語だ。椎名雅彦(木梨憲武)は62歳の実演販売士。一人娘で助産師の瞳(奈緒=写真)と2人暮らしだ。

今年の元日、互いに伝えたいことがあると言い出した。「3カ月後に結婚します!」と宣言する瞳。雅彦は「3カ月後に死んじゃいます!」と告白する。

当初、瞳は雅彦の冗談だと思っていたが、そうではなかった。ステージ4の膵臓がんで余命3カ月とわかったのだ。

雅彦のほうは、瞳の相手である川上一馬(濱田岳)が売れないお笑い芸人で、しかもバツイチの子持ちと知って猛反対。2人の怒涛の3カ月が始まった。

ドラマは時々、現実との不思議な符合をみせることがある。昨年末に「ステージ4の膵臓がん」を公表した、経済アナリスト・森永卓郎氏(66)の顔が浮かんだ。

森永氏は「最後まで闘う」と言って入院し、治療に専念している。一方、雅彦は治療を拒み、「やりたいことをやって死ぬ」と覚悟を決めている。

どちらが正しい、間違っているという話ではない。個々の人生観や死生観にかかわる選択であり決断だ。雅彦は「死ぬ前にやりたいことリスト」を作って動き出す。

脚本は福田靖(朝ドラ「まんぷく」など)のオリジナル。達者な演技の奈緒はもちろん、“俳優・木梨”の頑固おやじもいい味を出している。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2024.01.24)

 

 


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