碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「女性弁護士ドラマ」対決の明日はどっちだ!?

2019年01月14日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


中身で勝負!
「女性弁護士ドラマ」対決の明日はどっちだ!?

1月クールのドラマが続々と始まりました。ざっとラインナップを眺めると、いくつかの塊がありますね。弁護士ドラマ、刑事ドラマ、それから女性の仕事ドラマといったものです。

弁護士ドラマのうち、『イノセンス~冤罪弁護士~』(日本テレビ系)はこれからですが、『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ系)と『グッドワイフ』(TBS系)がスタートしました。

「女性弁護士」の活躍を描く2本に注目してみます。


法廷が主戦場ではない、
竹内結子主演『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』


まずは、『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』。竹内結子さんが演じる氷見江は、所属する弁護士事務所の危機管理部のリーダーで、「スキャンダルやトラブルの裏側を主戦場に活躍する異色の弁護士」だそうです。

「舞台は法廷ではない」というのは、確かに弁護士ドラマとしては異色かもしれません。そしてフレコミは、「危機にある女性を救う」です。救う対象を女性に限定しているわけで、これもちょっと変わっていますね。それに物語の幅を狭めるリスクもあります。

では、実際に何をするんだろうと思い、第1話を見てみました。氷見が扱っていたのは、女性アイドルグループが抱えたトラブルでした。

冠番組で歌っている最中に、メンバーの1人である杏里(馬場ふみか)が歌うことも踊ることも止めてしまう。それに怒った桃子(中村ゆりか)が杏里を突き飛ばしました。

それを見た人たちによってネットが炎上。テレビ局側は事態を収めるために、彼女たちの謝罪会見を開くことにします。この会見を無事に実施するために、氷見たちが働きます。

とはいえ、やったことはアイドルたちが抱えていた「葛藤」を探り出し、それを解消する場としての会見にした、ということでしょうか。

一応、お話としては成立していました。しかし、これがどんなドラマなのかという概要や方向性を視聴者に判断してもらう、大事な「初回」としては、このストーリーは何とも小粒というか、身を乗り出して成り行きを見つめるほどの内容ではありません。

それに、大人気の4人組アイドルという設定でしたが、画面の中の彼女たちは拍子抜けするくらいチープな感じで、とても「国民的アイドル」には見えませんでした。

何より困ったのは、キャリア弁護士(氷川あさみ)も、若手エリート弁護士(中川大志)も、そして「驚異的な洞察力を持つ」というヒロイン(竹内)さえも、どこが敏腕なのか、あまり伝わってこなかったことです。残念。

「うーん、スキャンダル専門弁護士の仕事って、こんなものなんですか?」というのが、初回の感想です。このままじゃ、 QUEENといっても、「コンプラの女王」か「火消しの女王」ですもんね。

とりあえず、第2話からの“奇跡の巻き返し”に期待しましょう。


法廷が見せ場となる、
常盤貴子主演『グッドワイフ』


次が、常盤貴子さんの『グッドワイフ』です。常盤さんは、『 Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』 から、19年ぶりの「日曜劇場」主演だそうです。そしてヒロインの蓮見杏子は、16年ぶりに現役復帰する女性弁護士です。

なぜ復帰するかといえば、東京地検特捜部長だった夫の蓮見壮一郎(唐沢寿明)が、汚職の容疑で逮捕されたからなんですね。

杏子は、かつての同期である多田(小泉孝太郎)のおかげで、彼が共同代表を務める法律事務所の仮雇用となり、弁護士業を再開します。

第1話の案件での相手は、ネット配信の番組でキャスターを務める日下部(武田鉄矢)でした。彼は、幼い娘が行方不明になった事件に関して、母親が犯人だと決めつけます。

それに影響を受けた世間の風評に追い詰められ、母親は自殺。父親が日下部を名誉棄損で訴えると、日下部も同じ名誉棄損で告訴してきます。

先の『QUEEN』と違って、このドラマには「法廷」が登場します。それも見せ場です。やはり法廷シーンは、弁護士ドラマをより弁護士ドラマらしくするものですね。「さあ、ここからが山場ですよ」と見る側の期待感も高まります。

杏子たちは、正義を振りかざす日下部の「情報源」が、単なるファンからの投稿であることを暴いていきます。

復帰の初戦ということで、最初はおずおずしていた杏子ですが、徐々に調子を取り戻し、途中からは堂々の弁護ぶりを見せていました。その変化していく様子も含め、緩急をつけた常盤さんの演技が光ります。

しかも法廷の杏子が、「日曜劇場」の主演という立場に復帰した常盤さん自身と重なり、ダブルの復活劇という効果がありました。

杏子が扱っていく事件と法廷。そして夫・壮一郎をめぐる謎。今後も、この両者が並行したり、クロスしたりしながら、ドラマは進んでいくのでしょう。

東京地検での取り調べ責任者は、壮一郎の失脚で特捜部長に繰り上がった脇坂(吉田鋼太郎)。直接の担当者は壮一郎の部下だった佐々木(滝藤賢一)。いいキャスティングです。この夫の窮地のほうも、かなり楽しめる展開が待っていそうです。

この記事についてブログを書く
« 異色の「大河」を楽しむ | トップ | 実習授業「視聴覚教育」収録中 »
最新の画像もっと見る

「ヤフー!ニュース」連載中のコラム」カテゴリの最新記事