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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「俺の家の話」 さくらが言った “介護にまさかはない”

2021年03月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評
 
 
 

TBS系「俺の家の話」

さくらが言った

“介護にまさかはない”


長瀬智也主演「俺の家の話」(TBS系)のキーワードは、「プロレス」「介護」「能」の3つだ。

一見バラバラだが、脚本のクドカンこと宮藤官九郎の手にかかると、これまで見たことのない「ホームドラマ」になる。

観山寿三郎(西田敏行)は能の二十七世観山流宗家で人間国宝。2年前に脳梗塞で倒れ、車いすの生活となった。

長男の寿一(長瀬)はプロレスラーだったが、引退して実家に戻った。介護ヘルパーの志田さくら(戸田恵梨香)と共に寿三郎の世話をするためだ。ただし経済事情もあって、介護の合間に覆面レスラー「スーパー世阿弥マシン」としてリングに立っている。

このドラマが凄いのは、何とも秀逸な「介護ドラマ」になっていることだ。クドカンは、本人や家族の思いはもちろん、「要介護」「要支援」といった規定から介護行為の実際までを、見る側を笑わせながら「普通のこと」として物語化していく。

ずっと自宅で介護を受けてきた寿三郎だが、認知症が進んだこともあり、グループホームに入った。複数の他人と暮らす生活は寿三郎にどんな影響を及ぼすのか。観山家の面々だけでなく、見る側にとっても興味深い展開だ。

以前、さくらが言っていた。「介護にまさかはない」と。明日、自分や家族が直面するかもしれない問題の貴重なケーススタディーとして、最終回まで目が離せない。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.03.17)