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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

春のCMで、「旅する女性」が見せてくれる風景とは!?

2018年03月20日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


春のCMで、
「旅する女性」が見せてくれる風景とは!?

春は旅立ちの季節。CMにも印象的な「旅する女性」たちが登場しています。宮崎あおいさん、そして駒井蓮さん。それぞれが見せてくれる風景とは!?

「謎の旅人」宮崎あおいさん

現在の「職場」は、4校の大学を含め、8つ目となります。自慢じゃないけど(笑)、プチ転職王かもしれません。

その経験から言うと、転職に必要なのは「意志」と「縁」です。意志は本人次第ですが、縁は自分だけではどうにもならないところがあります。だから転職サイトも大いに活用すればいいと思います。

マイナビ転職の新作CMに登場したのは、宮崎あおいさん。転職で迷っている人の前に、ふっと現れる「謎の旅人」という設定だそうです。

確かに転職の決断は悩ましい。留まることで事態が好転するかもしれないし、移った先に望ましい未来が待っているとは限らないですから。しかも他人に、ましてや同じ職場の人間に相談することも難しい。誰もが一人で考えあぐねたりします。

そんなとき、宮崎さんが肩を抱いて、「いいと思う」と応援してくれたら。新しい生き方を選ぶ勇気、一歩前へ進む力もわいてくるというものです。その先には、これまでと違う風景が広がっているかもしれません。

このCMのバックに流れるのは往年の名曲「オンリー・ユー」。君だけが僕の中に変化を起こすことができると歌っています。

「下町の旅人」駒井蓮さん

過去において、最もヘッドホンのお世話になったのは大学1年の時です。格安の下宿(家賃は7800円)でしたが、壁が、なんとべニア板! 隣の部屋の先輩が新聞をめくる音まで聞こえてきました。

ラジカセで音楽を聴く際も、ヘッドホンを使うしかありません。だから個人的には、今でもヘッドホンはどこか室内のイメージが強いのです。

街の中や大学のキャンパスで、ヘッドホンを装着して歩いている若者をよく見かけます。こちらもiPodは使っていますが、もっぱらケーブル型のイヤホンです。

いい音で聴いているであろう彼らが、ちょっとうらやましい。ただヘッドホンはなかなか敷居が高い。どこか抵抗感があるんですよね。

パナソニックのヘッドホンHTX80Bのプロモーション動画。17歳の駒井蓮さんが、のんびり、ゆったり、下町の路地を歩いています。手には何も持たず、きれいなキャメルベージュのヘッドホンだけの「ちいさな旅」。風景と音楽を独り占めする、贅沢な時間です。

こういう散歩ができたらいいなあ。たかがヘッドホン、されどヘッドホン。桜が満開になったら、導入も考えてみたいと思います。

石原さとみ主演「アンナチュラル」 新感覚サスペンスの醍醐味

2018年03月20日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評


石原さとみ主演「アンナチュラル」
新感覚サスペンスの醍醐味

今期のドラマもゴールが迫ってきた。途中で息切れした作品も少なくないが、石原さとみ主演「アンナチュラル」(TBS系)はその逆だ。最終回を迎えるのが惜しいほど充実度が高まっている。

物語の舞台は民間組織の「不自然死究明研究所(UDIラボ)」。警察や自治体が持ち込む、死因のわからない遺体を解剖し、「不自然な死(アンナチュラル・デス)」の正体を探っていく。メスを握るのは法医解剖医の三澄ミコト(石原)や中堂系(井浦新)だ。

まず「不自然な死」というテーマとUDIラボという設定が新機軸だ。架空の組織だが妙なリアリティがある。また沢口靖子が活躍する科捜研は警察組織の一部だが、こちらはあくまでも民間。ミコトたちに捜査権はない。検査や調査を徹底的に行っていく。

これまでに集団自殺に見せかけた事件の真相や、雑居ビルの火災で亡くなった人物の本当の死因を究明してきたが、物語は常に重層的で簡単には先が読めない。

中でも出色だったのが第7話(2月23日放送)だ。顔を隠した高校生Sがネットで「殺人実況生中継」と称するライブ配信を行う。そこには彼が殺したという同級生Yの遺体も映っていて、ミコトに「死因はなんだ?」と問いかけるのだ。しかもミコトが誤った場合、人質Xの命も奪うと言う。背後にあったのはいじめ問題だが、当事者たちの切実な心情を、トリックを含む巧緻なストーリーで描いていた。

「不自然な死」は当初、非日常的、非現実的なものに見える。しかしミコトたちの取り組みによって、それが日常や現実と密接な関係にあることが分かってくるのだ。物語に高度な医学的専門性が織り込まれているが、説明不足で理解できなかったり、逆に説明過多で鬱陶しくなったりもしない。

この新感覚サスペンスともいうべきドラマを支えているのが野木亜紀子の脚本だ。一昨年の「重版出来!」(TBS系)や「逃げるは恥だが役に立つ」(同)とは全く異なる世界を対象としながら、綿密なリサーチと取材をベースに「科捜研の女」ならぬ「UDIラボの女」をしっかりと造形している。特にミステリー性とヒューマンのバランスが絶妙で、快調なテンポなのに急ぎ過ぎない語り口にも好感がもてた。

ミコトたちが仕事の合間に、おやつなどを食べながら雑談するシーンがよく出てくる。まるで女子カーリングのモグモグタイムだ。こうした話の筋を一瞬忘れる時間が、実はドラマをよりドラマチックなものにしている。できればシリーズ化をと願わずにいられない、今期最大の収穫だ。

(毎日新聞「週刊テレビ評」2018.03.16)